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13431641 journal
バグ

yasuokaの日記: 「天」と「天」、「亜」と「亞」、「「齋」と「斎」の字形差

日記 by yasuoka

『日本・中国・台湾・香港・韓国の常用漢字と漢字コード』の読者から、倪永茂の「中日両国の漢字と漢字コード」(宇都宮大学国際学部研究論集, 第44号(2017年9月), pp.49-57)を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたのだが、ノッケから

字形とは字体を目に見える形で書かれたものである。「天」と「天」、「亜」と「亞」、「「齋」と「斎」はそれぞれ同一字種のペアであるが、字形は互いに異なる。

などと書かれており、私(安岡孝一)の目が悪いのか、「天」と「天」の字形の違いが見分けられなかった。あるいは、JIS C 6226-1978について書かれた以下の部分。

漢字を2つの水準に分け、コード化する漢字の総数を94×94=8836字中の約7000字と想定した。なお、94とはアスキーコードと漢字との同時使用を可能にするために、当時考えていた技術的上限値である。

「技術的上限値」って何の話? ISO R 646-1967の7ビットコードにおける「印刷文字」の文字数が、94文字だったっていう話じゃないの?

JIS78の規格本文では、文字の特徴として、「文字概念」、「名称(または読み)」、「用途(または用法)」、「字形」、「符号」という5項目をあげ、コード化対象は「文字概念」だと明確にしている。「文字概念」は本文でいる字種のことである。

その5項目が挙げられているのは、JIS C 6226-1978の規格本文ではなく、あくまで備考だ。また、JIS C 6226-1978は「図形文字の集合とその符号」を規定しているのであって、図形文字の「何」に着目して符号化をおこなっているかについては、規格本文では明確化していない。ちゃんと規格票を読みなさい。あるいは、中国のGB 7589-87とGB 7590-87について書かれた以下の部分。

1987年にさらに2つの補助漢字コード表が作られ、2万字を越える簡体字がコード化された。簡体字コードに対応する繁体字コード表も用意され、しかも文字コードを切り替えるだけで簡体字と繁体字と相互変換できるように、マッピングを同一にした。

えっと、GB/T 13131-91とGB/T 13132-91は、結局、コード表が完成しないまま、いまだ実施に至ってないはずだけど。その「相互変換」とやらは、本当に実装されたの?

ユニコードでは文字符号化方式も標準化したため、従来日本で見られたシフトJISとEUC-JPとの間の混乱は回避された。

そりゃ、シフトJISやEUC-JPは、Unicodeの文字符号化方式じゃないから、回避されるのは当たり前だろう。でも今度は、UTF-16とUTF-8の混乱が起こっていて、しかもUTF-16が2種類あるらしいのだけど、そっちは無視していいの?

印刷された文字を見て、文字コードの標準化作業をやってきたわけであるが、一旦文字コードができあがると、実体としての文字から独立・分離して生きていく。文字コードに対応されない文字は忘れられる運命になるだろうし、表示され印刷される文字は文字コードを実世界に投影したものになる。漢字のもつ、字音・字形・字義という三要素が文字コードによって失われ、漢字はただの記号という考えに陥ってしまうかもしれない。

何がいいたいのか、サッパリわからない。漢字の「字義」を文字コードに含めたいのなら、頑張ってCCCIIを使えばいいんじゃないの?

情報処理では正規表現というものがよく利用されるが、欧米で考案された理論で、漢字のことはほとんど考慮に入れられていない。しかし、漢字の配列、異体字の存在等を配慮した正規表現の拡張が望まれる。

その「漢字の配列」って何? それは一意に定まるものなの? 仮に一意に定まるとして、それは全順序になるものなの? 仮に全順序になるとすれば、そこにおいて「異体字の存在等」ってのは、どういう風に記述されるの? ISO 14651とか「Unicode Collation Algorithm」とかを、ちゃんと調べてみた?

情報のデジタル化によって文字のコード化が進み、インターネットやグローバル化によって漢字コードの統一化が図られてきた。しかし、3500年の歴史も有する漢字に対し、コード化は僅か二十年しか経っていない。

ちょっと待て。「僅か二十年」って、どういう意味? 1997年以前には、漢字のコード化はおこなわれてなかったの? JIS C 6226-1978って、1978年の制定なんだけど、それはどうなったの?

というか、文字コードに関する過去の論文を、倪永茂は全く参照しておらず、その点でそもそも話にならない。その結果、この論文には、IVSはおろか、UTF-8もGBKもCNS 11643もCCCIIもISO/IEC 2022もISO/IEC 646も登場しない。「僅か二十年」とか書く前に、少なくともその「僅か二十年」の文字コード研究くらい、きっちりサーベイしてから論文を書くべきだと思う。

13431105 journal
日本

yasuokaの日記: U+2CF67とU+2E170の人名用例

日記 by yasuoka

私(安岡孝一)の『Unicode 10.0に見る日本の国字』の表4に対し、U+2CF67(⿰亻久、MJ059310由来)の人名用例が、『ニッケイ新聞』第3642号(2012年11月7日)p.7の記事「百歳表彰聖市伝達式に本人14人」にあるようだ、との御連絡をいただいた。さっそく、国会図書館で当該記事を調べてみたところ、確かに以下の方が、在サンパウロ日本国総領事館で2012年11月5日に表彰されたようだったが、記事にU+2CF67そのものが書かれているわけではなかった。

新聞を読むことが何よりの楽しみだという藤田恭ヒサ(人偏に『久』、99、鹿児島)さんは、戦前戦後と2度に渡ってブラジルに移住した経歴を持つ。24年に家族とともに渡伯、30年代前半に、先に日本に戻った両親からの声を受け帰国した。大阪などで会社員として働くものの、「心はいつもブラジルにあった」という。

また、U+2E170(⿱竹耕、MJ060025由来)を名に含む「田代𮅰平」さんが、都城にいらっしゃるとの御連絡もいただいた。同一人物かどうかハッキリしないのだが、2017年5月1日『官報』号外第94号の「叙位・叙勲」で、p.18の2段目の29人目「田代𮅰平」さんが旭日章綬章を受けていて、『官報』PDFにU+2E170の文字画像が埋め込まれている。

となると、U+2CF67もU+2E170も、何とか戸籍統一文字に追加したいところなのだが、さて、どうしたらいいかな…。

13429040 journal
地球

yasuokaの日記: カタルーニャ分離独立におけるQWERTY配列 6

日記 by yasuoka

『キーボード配列 QWERTYの謎』の読者から、六辻彰二の「QWERTY理論からみたカタルーニャ分離独立問題」(BLOGOS、2017年10月10日)という記事を読んでみてほしい、との連絡をいただいた。読んでみたのだが、カタルーニャ分離独立がQWERTY配列とどう関係あるのか、私(安岡孝一)には全く理解できなかった。

経済学者ポール・デーヴィッドは1985年に著した論文で「QWERTY」という造語を世に送り出しました。QWERTYとはパソコンのキーボードの左上の配列です。

「qwerty」という「造語」は、私の知る限り、『The Broad Ax』1897年11月20日号p.3「Reed and His Typewriter」に出てくる。これが初出かどうかはハッキリしないが、少なくともPaul Allan Davidの「Clio and the Economics of QWERTY」(The American Economic Review, Vol.75, No.2, pp.332-337)より、90年近く前の話だ。Paul Allan Davidが「qwerty」という単語を造ったわけじゃない。

パソコンのキーボードの配列は、かつての英語圏のタイプライターのものを踏襲しています。1880年代、タッチ・タイピングというタイプ技法が開発され、この指導をしていた学校がたまたま採用したのが、レミントン社が販売していたQWERTYの配列のものでした。

いや、少なくともGeorge Alexander McBrideは、Caligraph No.2で「タッチ・タイピング」をおこなっていた(cf.『The Brooklyn Daily Eagle』1889年2月28日号p.2「They Used the Caligraph」)。その意味では、「タッチ・タイピング」はQWERTY配列に限定されていない。六辻彰二の言う「この指導をしていた学校」って、どこの学校の話? Walworth's Typewriting and Stenograph Instituteじゃないの?

それ以前、英語圏でも複数のキーの配列がありましたが、タッチ・タイピングがタイプ技法の主流を占めるにともない、QWERTYの配列が定着。市場での優位がQWERTYの定着を後押ししました。

いや、だから、「タッチ・タイピング」はQWERTY配列に限定されていない。9月27日の日記にも書いたが、QWERTY配列がタイプライター市場で優位を占めるに至ったのは、1893年3月設立のUnion Typewriter社(つまりはTypewriter Trust)による寡占が、最大の原因だったりする。「たまたま採用」でも何でもなく、生産者側の強い思惑が背後にあるのだが、六辻彰二は、Union Typewriter社の存在すら知らないのだろうか。

というか、カタルーニャのQWERTY配列は、アメリカのQWERTY配列とは微妙に違っていて、「L」の右側に「Ñ」がある。さらにその右側に「Ç」もあったりするが、「Ç」はスペイン語(というかカスティーリャ語)では使わないので、一筋縄ではいかない。そのあたりを無視して、アメリカのQWERTY理論とやらでカタルーニャをかたるのは、さすがに無理があるように私には思えるのだが。

13423992 journal
政府

yasuokaの日記: 総務省大臣官房個人番号企画室におけるマイナンバー情報連携

日記 by yasuoka

9月30日の日記の読者から、『税』最新号掲載の森中高史『総則的視点からみたマイナンバー情報連携』(pp.10-15)の「Q5」を読んでほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたのだが、やはりヒドイ。

Q5 情報連携の対象となる事務手続のうち、地方税関係情報の提供に際して本人同意が必要となる事務の概要と留意点について教えてください。

A5
 社会保障分野の手続では、対象者に課税証明書等の添付を求めており、対象者が税務部局から取得することになる。
 ただし、下記①又は②の場合には、守秘義務が解除されているとして、情報提供NWSを利用した他の行政機関の社会保障部局の照会に対して税務部局から所得情報等を提供して良いこととされている。
① 利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務が規定されている場合
② 利用事務が申請に基づく事務であり本人の同意により秘密性が解除される場合
 このため、本人が行政機関に対して報告を行う義務が所管法律で規定されてない事務については、照会対象者の同意取得が必要となることから、平成29年内閣府・総務省告示第1号において、情報提供NWSを使用して地方税関係情報の提供を行う場合に本人の同意を得なければならない事務が定められたが、当該事務について、地方税関係情報の照会を行う行政機関等においては、同意様式の改正等、情報連携のための体制整備の徹底を図ることが必要である。
 同意取得の体制整備が図られないままでは、添付書類の省略ができず、番号利用法の目的である国民の利便性の向上につながらないため、本格運用までの速やかな対応が求められる。

その「A5」の回答では、番号法第19条の一般的な考え方「本人同意の有無や法令に基づく場合かどうかは関係なく、番号法第19条各号に掲げる場合のみ提供できる」との間で矛盾が起こってしまう。「本人同意の有無と関係なく」「番号法第19条各号に掲げる場合のみ提供できる」はずの特定個人情報が、この告示では「本人の同意を得るものとする」という、ワケのわからないことになってしまっているのだ。その矛盾を問いただすべく、先日も質問を送りつけたはずなのだが、総務省大臣官房個人番号企画室参事官補佐の森中高史は、そこの矛盾を無視し続けるつもりなのだろうか。

また、地方税法第22条の「守秘義務」を「解除」するのに「照会対象者の同意取得が必要となる」なんてことは、地方税法にも地方税法施行規則にも書いていない。その点については、私(安岡孝一)の過去の日記でも、さんざん(これとかこれとかこれとかこれとかこれ)指摘してきた話だ。なぜ、いまだにそんなヨタ話に拘泥するのか、さっぱり理解できない。「同意取得」は十分条件かもしれないが、必要条件ではない。「同意取得で十分となる」は正しいかもしれないが、「同意取得が必要となる」は正しくない。しかも「同意取得」は、番号法とは矛盾する。したがって「同意取得の体制整備が図られないまま」なのは、番号法から見れば当然の結果だ。そんな簡単なことも理解できないのか。

繰り返すが、この「A5」の回答は、番号法とこの告示の間の矛盾を、説明できていない。こんな馬鹿げた回答を繰り返す暇があったら、さっさと「矛盾なく回答」を返すよう、内閣官房番号制度推進室や個人情報保護委員会と「調整」してほしい。

13421661 journal
日記

yasuokaの日記: 不条理な組織や戦略におけるQWERTY配列

日記 by yasuoka

9月27日の日記に関連して、菊澤研宗がQWERTY配列をどう考えているのか、書籍を4冊ほど読んでみた。まずは『組織の不条理』(ダイヤモンド社、2000年11月)p.95。

しかし、実際には、使用される単語の頻度や指の動きなどに関する人間工学的観点からすると、この配列は必ずしも効率的ではないといわれている。事実、このQWERTY配列は、あまり速くタイプを打つと、文字を打ちつけるアームが絡まるという問題があったので、逆に手の動きを遅くするために考案されたものであった。

次に『組織は合理的に失敗する』(日経ビジネス人文庫、2009年9月)p.102。

しかし、実際には、使用される単語の頻度や指の動きなどに関する人間工学的観点からすると、この配列は必ずしも効率的ではないといわれている。事実、このQWERTY配列は、旧式のタイプライターではあまり速くキーを打つと、文字を打ちつけるアームが絡まるという問題があったので、逆に指の動きを遅くするために考案されたものであった。

直後に『戦略の不条理』(光文社新書426、2009年10月)p.112。

当時はタイプライターの性能が悪く、早く打つと文字を打ちつけるアームが絡まるという問題がありました。そして、この問題を解消するために、指の動きができるだけ遅くなるように考案されたのが、「QWERTY配列」でした。

そして『組織の不条理』(中公文庫720、2017年3月)p.125。

しかし、実際には、使用される単語の頻度や指の動きなどに関する人間工学的観点からすると、この配列は必ずしも効率的ではないといわれている。事実、このQWERTY配列は、旧式のタイプライターではあまり速くキーを打つと、文字を打ちつけるアームが絡まるという問題があったので、逆に指の動きを遅くするために考案されたものであった。

17年たっても「アームが絡まるという問題」から離れられないらしい。何度でも書くが、「アーム」を有するフロントストライク式タイプライターが発明されたのは、1891年6月のことだ。これに対し、現在のQWERTY配列は、遅くとも1882年8月発売の「Remington Standard Type-Writer No.2」には採用されている。すなわち菊澤研宗の説を信じるなら、当時まだ存在していない「アーム」の問題を解消するためにQWERTY配列が作られた、ということになる。

菊澤研宗が、どうしてこんな馬鹿げた話に拘泥するのか、私(安岡孝一)にはサッパリ理解できない。不条理な組織や戦略をネタにする人間は、本人も不条理だということなのだろうか。

13421118 journal
政府

yasuokaの日記: Re: 『番号法第19条第7号の規定により地方税関係情報を照会する場合に本人の同意が必要となる事務を定める告示』に対する質問状

日記 by yasuoka

先日、『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第十九条第七号の規定により地方税関係情報を照会する場合に本人の同意が必要となる事務を定める告示』(平成29年5月29日内閣府・総務省告示第1号)に対して、内閣官房番号制度推進室に再度の質問状を送るとともに、私(安岡孝一)の日記でも公開した。

正直なところ、この回答では「矛盾」が説明できておりません。
(中略)
後期の講義は10月に始まりますので、もう少しだけ、時間があります。よろしく細部まで御検討の上、矛盾なく回答いただくよう、お願い申し上げます。

しかし、残念ながら、本日の時点で「矛盾なく回答」が返ってきていない。後期の講義日程を勝手に延ばすわけにもいかないので、どうすれば矛盾が無くなるのか、私なりに案を示してみようと思う。

端的に言えば『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第十九条第七号の規定により地方税関係情報を照会する場合に本人の同意が必要となる事務を定める告示』は、「本人の同意が必要」となる法的根拠を示せていない。総務省自治税務局は『地方税法総則逐条解説』を根拠にしたいようだが、それが根拠に成り得ないことについては、私自身が2015年4月13日の日記にも書いたとおりだ。また、昭和38年3月15日内閣法制局一発第6号回答も検討してみたが、やはり「本人の同意が必要」な根拠とは成り得ない。

そうなると、この告示の「本人の同意が必要」には、そもそも法的根拠が無い。番号法第19条の「一般的な考え方」とも矛盾しているのだから、普通に考えれば、この告示を廃止するしかない。でも、廃止となれば、総務省自治税務局のメンツは丸ツブレだろう。さて、どうするか。総務省自治税務局としては、どうやら、地方税法第22条における「秘密」の解除を明確化することで、違法性に問われないようにしたいらしい。一方、情報提供ネットワークにおいては、2017年9月13日の日記にも書いた通り、情報提供をおこなったら「必ず本人が知ることができる」のだから、それにより「秘密」が解除されるよう制度設計すべきだろう。

告示を廃止しないで何とかするとすれば、一案としては↑の内容を明確化すべく、告示のタイトル(件名)そのものを変えてしまう、というあたりが落としどころだと思う。すなわち『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第十九条第七号の規定により地方税関係情報を照会する場合に情報提供等記録開示により地方税法第二十二条の秘密を解除する事務を定める告示』にタイトルを改正し、最初の条文は、ざっくり以下のように改正する。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「法」という。)第十九条第七号の規定に基づき、次の各号に掲げる事務の区分に応じ、当該各号に定める情報を提供するときは、地方税法第二十二条にいう秘密は、本人(法第二条第六項に規定するものをいう。)への情報提供等記録開示(法附則第六条第三項にいう情報提供等記録開示システムによりおこなわれる開示をいう。)により解除されるものとみなす。

告示の各号は、告示の目的が変わっているわけではないので、現状のままで大丈夫のはずだ。告示のタイトルを改正できるのか、という疑問は湧くが、そもそもこの告示はパブリックコメント時点では別のタイトルだったので、手続をちゃんと踏めば改正できる。内容が変わってしまうのは問題ないのか、と言えば、告示本来の目的に沿って番号法との矛盾を解消するため、なのだから問題ないだろう。個人番号カードを取得していない「本人」はどうするのか、という問題については、情報提供ネットワーク側としては常に記録開示は可能となっており、それを「本人」が将来にわたって見るかどうかなので、情報提供時点での個人番号カード取得の有無は無視すべきだろう。

この告示を、廃止するのか改正するのか。あとは、内閣官房番号制度推進室が、どうやって腹をくくるか、なのだろうと思う。

13418233 journal
日記

yasuokaの日記: Re: 経済学者の考えるQWERTY配列の歴史

日記 by yasuoka

私(安岡孝一)の9月23日の日記の読者から、佐藤優の『「白兵戦」はなぜ起きた?ビジネスにも通じる「不条理の罠」の仕組み』(週刊現代, 第59巻, 第35号(2017年9月23・30日), pp.124-125)を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたところ、菊澤研宗に騙されたらしく、QWERTY配列に関するガセネタが書き連ねられていた。

周知のように、現在、一般に使用されているタイプライターやコンピュータのキーボードの上段の配列は、QWERTY……の配列となっている。この標準的なキーボードの配列が成立したのは一九世紀であり、われわれは歴史的にその配列に慣れているので、その配列があたかも効率的であるかのように思い込んでいる。/しかし、実際には、使用される単語の頻度や指の動きなどに関する人間工学的観点からすると、この配列は必ずしも効率的ではないといわれている。事実、このQWERTY配列は、旧式のタイプライターではあまり速くキーを打つと、文字を打ちつけるアームが絡まるという問題があったので、逆に指の動きを遅くするために考案されたものであった。

『キーボード配列 QWERTYの謎』(NTT出版、2008年3月)にも書いたが、「アーム」を有するフロントストライク式タイプライターが発明されたのは、1891年6月のことだ。これに対し、現在のQWERTY配列は、遅くとも1882年8月発売の「Remington Standard Type-Writer No.2」には採用されている。すなわち↑の説を信じるなら、当時まだ存在していない「アーム」の問題を解消するためにQWERTY配列が作られた、ということになる。そんな馬鹿な話があるわけがない。

しかし、やがてタイプライターが電動化され、アームが絡まるという問題が解消されると、より効率的な配列を備えたキーボードに取って代わられる可能性が生じた。しかし、歴史的には、それ以後もこの配列は変わることはなかった。こうして、必ずしも効率的ではないキーボードの配列が歴史的にまったく偶然に採用され、いつのまにかその配列はロック・インされ、デファクト・スタンダード、つまり事実上の業界標準あるいは世界標準となっていったのである

私の知る限り、最初の電動タイプライターは、1901年発売の「Blickensderfer Electric」だが、どうみてもQWERTY配列ではない。一方、QWERTY配列が「デファクト・スタンダード」になったのは、1893年3月設立のUnion Typewriter社(つまりはTypewriter Trust)による寡占が、最大の原因だったりする。「偶然」でも何でもなく、生産者側の強い思惑が背後にあるのだが、佐藤優は、Union Typewriter社の存在すら知らないのだろうか。

まあ、佐藤優にしろ、菊澤研宗にしろ、そもそもタイプライターの歴史に興味がなく、ちゃんとウラを取る気も無いのだろう。でも、そんなガセネタを「ビジネスパーソンの教養講座」とか題してバラ撒かれるのは、正直たまったものじゃないなあ。

13417447 journal
政府

yasuokaの日記: 1987年生まれの「舜」ちゃん

日記 by yasuoka

私(安岡孝一)の昨日の日記に対して、裁判所が「常用平易」だと認めなかったのに、人名用漢字に追加された例はあるのか、という趣旨の質問を複数いただいた。奈良家庭裁判所[昭和62年(家)第1235号]1987年11月19日審判が、代表例の一つだろう。

事件本人の名である「舜」の文字が戸籍法施行規則60条に定める常用漢字及び人名用漢字のいずれにも当たらないところ、同条は、戸籍法50条2項の常用平易な文字の範囲を限定したものであることは、法条の趣旨に照らして明らかであり、これを例示的に列挙したものと解することはできない。また、常用漢字及び人名用漢字が常用平易な文字を網羅しているかいないか議論の余地があるとしても、常用平易な文字として妥当な範囲を挙げたもので、不合理なものといえず、「舜」の文字が平易な文字に当たるとしても、常用されているものとはいえない。

すなわち、「舜」は平易な文字であるとしても、常用されているとはいえず、子の名づけには使えない、と奈良家庭裁判所は判断したわけである。即時抗告審の大阪高等裁判所[昭和62年(ラ)第614号]1988年1月29日決定も、この判断を引用し、両親の申立てを却下している(cf.『家庭裁判月報』第40巻第11号(1988年11月)pp.116-118)。

その一方で、1988年5月に法務省民事局がおこなった調査では、71の市区町村が、「舜」を含む出生届が問題となったと回答している。これを受けて、民事行政審議会は1990年1月16日、新たに人名用漢字に追加すべき漢字として、「舜」を含む118字を法務大臣に答申した(cf.『民事月報』第45巻第2号(1990年2月)pp.125-140)。すなわち民事行政審議会は、「舜」を「常用平易」だと認めたわけであり、その結果、「舜」は1990年4月1日施行の法務省令第5号で、晴れて人名用漢字となったわけである。

13416510 journal
日本

yasuokaの日記: 「渾」が人名用漢字に追加 68

日記 by yasuoka

今日付けの官報で戸籍法施行規則が改正され、「渾」1字が人名用漢字に追加された。これで、人名用漢字は863字となり、常用漢字2136字と合わせ2999字が、子の名づけに使える。東京高裁が、「渾」を常用平易な漢字として認めたもので、念願の3000字まであと1字となった。裁判所命令で追加された人名用漢字としては、以下に示すとおり「渾」が11例目となる。

  • 「悠」東京家裁[昭48(家)11469号]1973.11.30審判 1976.7.30施行
  • 「琉」那覇家裁[平9(家)1358号]1997.11.18審判 1997.12.3施行
  • 「曽」最高裁三小[平15(許)37号]2003.12.25決定 2004.2.23施行
  • 「獅」横浜家裁[平16(家)188号]2004.5.6審判 2004.6.7施行
  • 「駕」大阪家裁[平16(家)1593号]2004.6.10審判 2004.7.12施行
  • 「毘」名古屋家裁[平16(家)1118号]2004.6.18審判 2004.7.12施行
  • 「瀧」広島高裁[平16(ラ)81号]2004.6.23決定 2004.7.12施行
  • 「祷」大阪高裁[平19(ラ)252号]2008.3.18決定 2009.4.30施行
  • 「穹」大阪高裁[平19(ラ)486号]2008.3.18決定 2009.4.30施行
  • 「巫」名古屋高裁[平26(ラ)127号]2014.8.8決定 2015.1.7施行
  • 「渾」東京高裁[平29(ラ)312号]2017.5.16決定 2017.9.25施行
13415549 journal
日記

yasuokaの日記: 文化進化論におけるQWERTY配列の歴史

日記 by yasuoka

キーボード配列 QWERTYの謎』(NTT出版、2008年3月)の読者から、同じNTT出版のAlex Mesoudi『文化進化論』(NTT出版、2016年2月)を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたところ、QWERTY配列に関するガセネタが書かれていた(pp.61-62)。

文化にも、痕跡的な特徴として説明できるケースがある。それは、かつては環境に適応していたものが、環境が変わったせいで不適応になった事例である。よく知られているのが、キーボードのQWERTY配列だ。それは、キーを打ちにくくし、ゆっくり叩かせるための配列で、世に出た時点では重要な役目を果たしていた。というのも、初期のタイプライターは、キーボードを叩くスピードが速すぎると、アームが衝突していたからだ。現代のキーボードにそのような制約はないが、最適とは言えないQWERTY配列は残ったままだ[★35]。

[★35]は、Everett Mitchell Rogersの『イノベーションの普及』(翔泳社、2007年10月)を引いているようなので、こちらも読んでみたところ、微妙に内容の違うガセネタが書かれていた(pp.012-013)。

QWERTYキーボードは、タイピストがキーを叩くのを遅らせるために、クリストファー・ショールズが発明したものである。その当時、タイプライター上の活字バーはバスケットのようなもののなかに、ぶら下がった状態で収められており、上方に旋回して紙を叩いていた。紙を叩くと重力の働きで元の場所に戻るのである。二つの隣り合ったキーを続けて早く叩くと、絡まって動かなくなってしまう。キーが絡まるのを最小限度にするために、ショールズはキーボード上のキーを配置しなおした。つまり、頻繁に使われる文字を連続して叩くことが難しくなるように、文字の配列を「反設計」したのである。こうして、タイピストのキー操作を難しくして、タイピング速度を遅くすることにより、キーを極力絡ませないようにした。彼の設計はすべてのタイプライターに採用された。

全くのデタラメだ。QWERTY配列において「E」と「R」が隣り合っているという事実を、RogersとMesoudiは完全に無視している。また、Christopher Latham Sholesが設計したQWERTY配列は、現在のQWERTY配列とは異なっているという事実も、RogersとMesoudiは完全に無視している。このあたりを、私(安岡孝一)自身『On the Prehistory of QWERTY』(ZINBUN, No.42 (March 2011), pp.161-174)や『「ECONOトリビア」QWERTY記事顚末記』(情報処理学会研究報告, Vol.2015-CH-106 (2015年5月16日), No.2, pp.1-8)にも書いておいたのだけど、まあ、Rogersは鬼籍に入って久しいので、読んでもらうのは無理だなぁ…。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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