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政府

yasuokaの日記: 住民基本台帳法の三段階改正と住基ネットと日本年金機構

日記 by yasuoka

一昨日の私(安岡孝一)の日記に対し、住基ネットとの関係が良くわからない、との御質問を複数いただいた。確かに、住民基本台帳法の三段階改正と、住基ネットとの関係はわかりにくい。とりあえず、現行の住民基本台帳法で、第三十条の五及び第三十条の七第三項を見てみよう。

第三十条の五 市町村長は、住民票の記載、消除又は第七条第一号から第三号まで、第七号及び第十三号に掲げる事項(同条第七号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部についての記載の修正を行つた場合には、当該住民票の記載等に係る本人確認情報(住民票に記載されている同条第一号から第三号まで、第七号及び第十三号に掲げる事項(住民票の消除を行つた場合には、当該住民票に記載されていたこれらの事項)並びに住民票の記載等に関する事項で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を都道府県知事に通知するものとする。
 前項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。
 第一項の規定による通知を受けた都道府県知事は、総務省令で定めるところにより、当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し、これを当該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
第三十条の七
 都道府県知事は、別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下欄に掲げる事務の処理に関し、住民の居住関係の確認のための求めがあつたときに限り、政令で定めるところにより、保存期間に係る本人確認情報(第三十条の五第一項の規定による通知に係る本人確認情報であつて同条第三項の規定による保存期間が経過していないものをいう。以下同じ。)を提供するものとする。

第七条第一号は「氏名」、第二号は「出生の年月日」、第三号は「男女の別」、第七号は「住所」、第十三号は「住民票コード」で、現時点では、これら5種類が住基ネットを流れている。日本年金機構は「別表第一の上欄」に含まれているので、現時点では、5種類全てにアクセスできるわけだ。次に、番号法が施行されると、上記の条項は、第三十条の六及び第三十条の九に移る(cf. 番号整備法第十六条)。

第三十条の六 市町村長は、住民票の記載、消除又は第七条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(同条第七号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部についての記載の修正を行つた場合には、当該住民票の記載等に係る本人確認情報(住民票に記載されている同条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(住民票の消除を行つた場合には、当該住民票に記載されていたこれらの事項)並びに住民票の記載等に関する事項で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を都道府県知事に通知するものとする。
 前項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。
 第一項の規定による通知を受けた都道府県知事は、総務省令で定めるところにより、当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し、これを当該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
第三十条の九 機構は、別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあつたときは、政令で定めるところにより、第三十条の七第三項の規定により機構が保存する本人確認情報であつて同項の規定による保存期間が経過していないもの(以下「機構保存本人確認情報」という。)のうち個人番号以外のものを提供するものとする。

番号法が施行されると、住基ネットを流れるのは、「氏名」、「出生の年月日」、「男女の別」、「住所」、第八号の二「個人番号」、「住民票コード」の6種類に増えると同時に、住基ネットを統括するのは、法律的にも地方公共団体情報システム機構となる。各自治体は、「氏名」「出生の年月日」「男女の別」「住所」「個人番号」「住民票コード」の6種類全てにアクセスできるのだが、日本年金機構は「個人番号」を除く5種類にしかアクセスできない。つまり、この時点の日本年金機構にとって住基ネットへのアクセスは、番号法施行前と何ら変わるところがない。ところが、個人番号カード交付開始と同時に、これらの条項は、以下のように改正される(cf. 番号整備法第十九条)。

第三十条の六 市町村長は、住民票の記載、消除又は第七条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(同条第七号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部についての記載の修正を行つた場合には、当該住民票の記載等に係る本人確認情報(住民票に記載されている同条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(住民票の消除を行つた場合には、当該住民票に記載されていたこれらの事項)並びに住民票の記載等に関する事項で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を都道府県知事に通知するものとする。
 前項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。
 第一項の規定による通知を受けた都道府県知事は、総務省令で定めるところにより、当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し、これを当該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
第三十条の九 機構は、別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあつたときは、政令で定めるところにより、第三十条の七第三項の規定により機構が保存する本人確認情報であつて同項の規定による保存期間が経過していないもの(以下「機構保存本人確認情報」という。)のうち住民票コード以外のものを提供するものとする。ただし、個人番号については、当該別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人が番号利用法第九条第一項の規定により個人番号を利用することができる場合に限り、提供するものとする。

この時点では、住基ネットを流れるのは「氏名」「出生の年月日」「男女の別」「住所」「個人番号」「住民票コード」の6種類で変わらないが、日本年金機構がアクセスできるのは「氏名」「出生の年月日」「男女の別」「住所」「個人番号」の5種類になる。つまり、日本年金機構は「住民票コード」にアクセスできなくなる。ただし、日本年金機構は「経過措置」(cf. 番号整備法第二十条)として「住民票コード」を使った検索が例外的にできるので、この期間に手元の「住民票コード」をせっせと「個人番号」に変換しておいて、変換のすんだ「住民票コード」はどんどん捨てていくことになる。この後、情報提供ネットワークシステムが稼働すると、これらの条項に第三十条の九の二が追加される(cf. 番号整備法第二十一条)。

第三十条の六 市町村長は、住民票の記載、消除又は第七条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(同条第七号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部についての記載の修正を行つた場合には、当該住民票の記載等に係る本人確認情報(住民票に記載されている同条第一号から第三号まで、第七号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項(住民票の消除を行つた場合には、当該住民票に記載されていたこれらの事項)並びに住民票の記載等に関する事項で政令で定めるものをいう。以下同じ。)を都道府県知事に通知するものとする。
 前項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。
 第一項の規定による通知を受けた都道府県知事は、総務省令で定めるところにより、当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し、これを当該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
第三十条の九 機構は、別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあつたときは、政令で定めるところにより、第三十条の七第三項の規定により機構が保存する本人確認情報であつて同項の規定による保存期間が経過していないもの(以下「機構保存本人確認情報」という。)のうち住民票コード以外のものを提供するものとする。ただし、個人番号については、当該別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人が番号利用法第九条第一項の規定により個人番号を利用することができる場合に限り、提供するものとする。
第三十条の九の二 機構は、総務省から番号利用法第二十一条の規定による事務の処理に関し求めがあつたときは、政令で定めるところにより、当該求めに係る者の住民票に記載された住民票コードを提供するものとする。
 機構は、前項の規定により提供した住民票コードが記載された住民票について当該住民票コードの記載の修正が行われたことを知つたときは、総務省に対し、修正前及び修正後の住民票コードを提供するものとする。
 前二項に規定する場合において、機構は、機構保存本人確認情報を利用することができる。

情報提供ネットワークシステムが稼働した後の個人番号利用業務は、情報提供ネットワークシステムを経由するのが、もちろん正しいやり方である。情報提供ネットワークシステム稼働後「当分の間」(cf. 番号整備法第二十二条)とはいえ、「住民票コード」をせっせと「個人番号」に変換する仕掛けを残しているのも、基本的にはそのためだ。日本年金機構であっても、永久に「経過措置」が続くわけではない。

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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

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