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Takahiro_Chouの日記: [書評]「吾輩は天皇なり――熊沢天皇事件」

日記 by Takahiro_Chou

最近、光市母子殺人事件関係のネタばっかり、やってるので、ちょっと、軽めの話を……と言う訳で、天皇陛下のお話である

で、このエントリのタイトルになっているのは、終戦直後位に話題になった、自称・南朝の子孫である「熊沢天皇」こと熊沢寛道に関する本である。

このネタに関しては、「入門書」的な内容だが、それでも、お腹一杯と言うアレな話が満載。
特に、戦前、熊沢家の傍系(と言うか、実は熊沢寛道と血は繋がってないのだが)の人間を天皇として担ぎだそうと言う動きが有った(しかも、軍の一部まで関わってる)、とか、熊沢家と竹内文書の意外な関係とかの話に付いては、以前別の本で読んだ事が有ったが、改めて読むと、クラクラする。
竹内文書のみならず、富士宮下文書まで出てくる偽史のオンパレード。
もし、フィクションで「戦前、軍部に竹内文書や富士宮下文書のようなトンデモ説を信じてる連中が居て…」なんて話が出てきたら、リアリティを感じられる人は少ないだろうが、それが現実だったのが凄い。
「戦後レジュームからの脱却」なんて事を言ってた安倍ちゃんが、ああなってくれて、ホント、良かったわ。下手に「脱却」した場合、行き着いた先がコレになる可能性も有った訳で。
ついでに、ここで聞いた下位春吉も名前だけ登場。当時は有名人だったんやね。

で、話が戦後に移ると、楽しゅうて、やがて、哀しき展開となる。
変な人かもしれないが、まぁ、温厚な部類に入る熊沢寛道の、妄想と言うより「業」としか言うべきモノに取り憑かれた事による、アレな生涯は、ある意味で涙を誘う。
昭和天皇を退位させようとした熊沢寛道こそが、戦前の天皇観に呪縛されていた、と言う矛盾。体制や、体制を象徴するモノを打倒しようとする人間が、実は、その体制を支えている思想の中でしかモノを考えられなかった、ってのは良く有る話だが、それでも、愚かしくも哀れな話だ。

熊沢寛道自身、熊沢一族が南朝の本当に子孫かどうかについて、ある学者に対して、
「あなたが充分研究なすった上で、これを否定せらるなら、私は満足です」
と言ってるような、心の広さみたいなものを持った人だったのだが、そう言えるだけの人でも、こんなアレな人生を歩んでしまう。
業だよな、コレは。そうとしか言い様が無い。
戦前・戦中の日本が持ってた「業」と、熊沢一族が持ってた「業」が合わさって生まれた、更にトンデモない「業」に翻弄された1人の人間の人生。でも、晩年は、それなりに幸せだったようなのが、救いといえば、救いか。

後、念の為、書いておくと、左っぽい人が書いた本はダメ、と云う人は、読むのが辛い箇所が、ちょっと有ります。

では、本書のデータ。
出版社/レーベル:学習研究社新書
初版:2007年9月14日
著者:藤巻一保

2007/09/24追記
書名間違ってたんで訂正(^^;;)。

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ナニゲにアレゲなのは、ナニゲなアレゲ -- アレゲ研究家

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