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TarZの日記: システムは現場で開発しているんじゃないわ。(下請けを集めた)会議室で開発しているのよ

日記 by TarZ

Matzにっき 日本のソフトウエア産業、衰退の真因:ITpro

 Matz氏は、ITProの記事から、『日本のソフトウエア産業衰退の原因は、派遣かき集め開発体制による(責任不在の)産業構造の劣化』という点に注目されているようだ。(誤読してたらゴメンナサイ)

 概ね賛成だけど、同じくソフトウェア開発の現場(Matz氏よりはだいぶ落ちるけど)にいる者として、レイヤも粒度も視点も別の面から付け加えたいことがある。
 そもそも、日本のソフトウェア産業の大手はプログラマを育てるつもりがないのではないか、という点だ。(ここで言うプログラマとは、パンチャ──死語だなこれは──のことではない)

 つまり、経営者層が、プログラマをマネージャへのステップとしか見ていない。そういうところばかりではないかもしれないが、当方の知人から知りえた範囲では、特に大手(F系とかN系とかH系とか…要は、以前メインフレーム抱えていたところ)ではそれが多数派ではないか、と思える節がある。
 「まあ待て。自分の知っている範囲がたまたまそういう傾向があるだけかもしれない」とも思い、"キャリアパス"などの用語でググってみたのだが、allaboutでもこんな記述がある。

キャリア形成からみたキャリアパスのあり方 キャリアパスを考える

 キャリアパスというときのキャリアは、主に職種であるとか、ポストであるとかいった意味合いが強い。IT業界でエンジニアとしてキャリアを歩むのであれば、

 プログラマ(あるいはテスター) 
  → システムエンジニア(システム設計技術者)
    → 技術リーダー(プロジェクトリーダー)
      → プロジェクトマネージャー(あるいはコンサルタント)
       → 事業マネージャー(プログラムマネージャー)

というキャリアパスが典型的である。これらはいずれも業務(プロジェクト)の中のロールである。

(強調部は引用者)

 自分の周囲が例外というわけではなく、これがわりと一般的な考え方ということなのだろう。(なお、ここの文脈で使われている用語「プログラマ」は、上で私が使った意味とは異なる。また、allaboutのこのコンテンツでは、上記キャリアパスを「従来の考え方では」という、やや距離を置いた観点から見ているようだ)

 確かにプログラムを全く知らないマネージャは困るから、「新人として配属されるとまずプログラマとして働くが、これはいつか卒業してマネージャになる」というキャリアパスは大いにありだと思う。
 しかし、本来この2つは、異なる技能が要求される全く別の職種だろう。そんなキャリアパスが典型というのは、メンバー比からいっても歪(いびつ)なのではないだろうか。歪なのに成り立つのはなぜかといえば、(ここでMatz氏の注目点に戻るが)外部から要員をかき集めるからだ。だってその方が安いから。

 ちなみにこの話は、ITProの記事の以下の部分を「裏面から」みているに過ぎない。裏表違うけど言っていることは同じ。

発注者は技術とノウハウを維持しているつもりでも、実際にソフトウエアを開発していないと、高い品質で効率よく作る能力は急速に衰え、見積もりを正当に評価する力もなくなる。

 まさしく、「システムは現場で開発しているんじゃないわ。(下請けを集めた)会議室で開発しているのよ」といった話であり、そりゃあ衰退もするだろう、と私は思うわけですよ。まあ、実際に衰退傾向かどうか私には判断できないのだが、そういう感じは確かにある。

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長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds

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