TarZの日記: ブラックホールが新たなタイプの超新星爆発を引き起こす?
太陽質量の数百~数千倍程度のブラックホール、いわゆる「中質量のブラックホール」が、すでに燃えカスとなっている白色矮星の超新星爆発を引き起こすかもしれない、という面白い研究結果がScienceDailyに掲載された。
ScienceDaily Supernova Surprise: Black Holes May Pull Apart, Reignite White Dwarf Stars
質量があまり大きくない恒星の場合、超新星爆発は起こさず、白色矮星として一生を終える。しかし、もし白色矮星が連星系として近くに恒星を持っているなら、そのガスをとりこむことで白色矮星の質量は増し、質量が太陽の1.4倍を超えるようであれば超新星爆発を起こす。
これは既によく知られていることで、爆発時の質量がほぼ一定で明るさが予測できるため、標準光源として遠くの銀河までの距離測定に利用されている。(Ia型超新星)
今回、コンピュータシミュレーションの結果として新たに可能性が示されたのは、中質量ブラックホールの近くに白色矮星が迷い込んだときにも超新星爆発が起きるのではないか、ということだ。
シミュレーションによると、中質量ブラックホールに白色矮星が近付くと、ブラックホールの潮汐力によって星全体が「絞られ」る。このときに局所的に圧力と温度が急激に上昇し、これが引き金になって爆発的な核反応が引き起こされる。この爆発によって白色矮星の半分は吹き飛び、残り半分はブラックホール周囲に降着円盤を作り、X線を放ちながらブラックホールに落ちていく。
このブラックホールは、大きすぎても小さすぎてもいけないようだ。例えば、銀河中心にあるような大質量ブラックホールでは、今回のシミュレーション通りにはならない。(おそらく、潮汐力が小さいから)
つまり、爆発を引き起こすような圧縮は、あくまで中質量ブラックホールに限って発生する。が、このようなブラックホールの数は非常に少ないと考えられているので、このタイプの超新星爆発が起きるとしても稀な現象になるようだ。(今回の研究の見積もりでは、標準的なIa型超新星の100回に対して1回未満)
このような稀な現象を観測するためには、多数の超新星爆発を捉えるような、次世代の観測装置が必要と考えられる。論文の著者は、2013年から稼働予定のLarge Synoptic Survey Telescope(LSST:全天サーベイ観測を予定している、非常に高い観測能力を持つ望遠鏡)に引っ掛かることを期待しているとのこと。
LSSTは、Googleもプロジェクトに参加するということで、/.Jでも過去にとりあげられている。
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