airheadの日記: memo: Fmaj7-G7-Em7-Am (2)
Fmaj7-G7-Em7-Am と聞いて、ある進行を思い浮かべた。
古くからよく知られているコード進行に C-Am-F-G(-C) というものがあり、そちらは「50s進行」などと呼ばれている。単純に C-Am-F-G を繰り返すものもあれば、 C-C-Am-Am-F-G-C-C と8小節ブルースのようになっているものもある。Ben E. Kingの『Stand By Me』やThe Policeの『Every Breath You Take』の進行、と言えばわかりやすいだろう。
「フィフティーズ」の名のとおり、軽く一周弾くだけでどことなくドゥーワップ風で、「王道進行」とは似ても似つかない。だが、登場するコードおよびその前後関係はかなり似ており、50s進行を半周期ずらすと二つの進行はほとんど重なってしまう。試しに「 F-G-C-Am で一区切り」と意識して弾いてみると、トライアドゆえに素朴ではあるが、王道進行と似た展開になっていることがわかるだろう。この半周期ずらしたものを、(どうにもダサいが)一時的に「裏50s進行」と呼ぼう。
Fmaj7 G7 Em7 Am7 王道(AmをAm7に)
F G C Am 裏50s
E 7(7) 1 3 5 5
D 5 5 7
C 5 5 1 3 3
B 3 3 5(7)
A 3 3 1 1
G 1 1 3 5 7(7)
F 1 1 7(7)
E 1 3 5 5
王道進行と較べると、裏50s進行のAmは余韻か添え物かのような印象だ。と言うよりも、Cの存在感が強すぎてそこだけ浮いてしまっている。50s進行においては、ドミナントモーションを匂わせるG-Cが最後部なり周期の区切りに位置していて、据わりが良かった。つまり「起(C) 承(Am) 転(F-G) 結(C)」のようになっていたわけだが、裏50s進行においては(長調の)「転 結(起) 承」となっている。結果として、Amが長調の調性感に負けてしまっているということか。
- ドミナントモーション
- G7 → Cの完全五度下降進行。構成音の[B, F](減五度 - 不協和・不安定)→ [C, E](長三度 -協和・安定)という半音づつの移動・協和音程への解決を推進力とする強い進行で、Cでの終止感、ひいては長調の調性感を生み出す。
一方の王道進行を後方から見てみよう。Em7-Am7だけを切り取れば、それほどの終止感はない。ドミナントモーションと同じく完全五度下降になってはいるが、構成音の[B, E](完全五度の転回 - 協和・安定)→ [C, E](長三度)では推進力にはならない。かといってEm7にF音を溶け込ませるのは難しい。
ここで構成音に [B, F] を持つG7を頭に加えて、G7-Em7-Am7 としてみよう。[B, F](減五度)→ [B, E](完全五度の転回)→ [C, E](長三度)と、ワンクッション置きながらもドミナントモーションの推進力となる解決が組み入れられることになる。
これら構成音の音程だけを見れば [B, F](減五度)→ [B, E](完全五度の転回)という前半だけで解決しているといえるが、F音が半音下降してEm7のルートのE音となることが、終止感に待ったをかける働きをしているように思える。前記事で「7thのF音を最低音にすること」と書いたが、そうすることでEm7に不安定感を残しAm7での解決に導くことができるだろう。[*]
ここに来てようやく、Am7ではなくAmとする理由に気づいた。解決前のG7-Em7に共通するB音とD音は、Am7にはない。となれば、G7-Em7-Am7に共通するG音(G7のroot、Em7の3rd、Am7の7th)をAm7から排除した方が効果的だろう。また、Am7はG音が入ることでコードCを内包してもいる。よって締めではG音を排してG7-Em7-Amとする。これで王道進行の後ろ3つがそろった。
Fmaj7 G7 Em7 Am
E 7 5
D 5 7
C 5 3
B 3 5
A 3 1
G 1 3 (7)
F 1 7
E 1 5
(続く)
[*] 当初、段落の最後で「そうすることでブレーキの効きが増すだろう」と書いていたが、この喩えは王道進行で起こることとはまるで逆で、次 (Em7) で止めるのが目的であるかのような書き方だ。安易な喩えを反省。
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