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kmraの日記: IA-64だめぽ

日記 by kmra

Intelのお荷物であるIA64の最新版、Tukwila(旧Tanglewood)がISSCCで発表された。しかし、こんなお荷物を期待しているのは、日本のサーバベンダだけではないだろうか?

トップのIBMはPowerプロセッサの性能を順調に伸ばし、SunはWeb向けにひたすらスループットが出るマルチコア・マルチスレッドを伸ばす。他のメーカーはXeonとOpteronでばっちりだ。メインフレーム置き換えで必要な信頼性はPower6で命令リトライができるようになってかなり上がった。
日立はPower系サーバを持っている。富士通はSparc自社チップを持っているので、あとはNECがやーめたすれば…

日本のサーバベンダだけが注目しているTukwilaはまたしても期待を裏切らないダメさだった。
・日程的にダメ(2006?年→2008.2)
・消費電力(170W)、周波数(2GHz)がだめ
・ダイサイズもダメ(700平方mm)
しかし、きっと演算器は潤沢で各種ベンチマークでは瞬間風速で1位を取ってしまうだろう。これが取れないと本当に存在価値が0なので何をやってでも必ず取る(時にはベンチマークを変えてでも)。その点は期待を裏切らないチップ/プロジェクトではある。

・日程的にダメ(2006?年→2008.2)
    Intelのオレゴンチーム、イスラエルチームは性能的にも日程的にもすばらしいチームであるが(最近肥大化気味であるけれど)、他はどうもうまくいっていない感じだ。優秀なアーキテクト、日程マネージメントができるチームはメインストリームであるIA32系に回るのだろうから当たり前かもしれない。
    Tukwila(旧Tanglewood)は当初2005-6年を予定していた(*1)が、ようやく2008年にISSCCでの発表となった。どのチームがTukwilaを開発していたか調べてみたら、計画変更がいろいろあり、複数のチームが複数のチップを担当していて、今回実現されたものがどれなのかよくわからない。
    今頃4core/2GHzのスペックで出たということは、計画より遅れたのは正しい推測と思われるが、どの目標に対してどれだけ遅れたのかは不明である。

・消費電力(170W)、周波数(2GHz)がだめ
    Tukwilaは前チップと同じ消費電力(Mckinley/Madisonの130W)を目指していた。しかしできてみれば4コアとはいえ170W。1コアあたり42.5WならIA-64としては上出来なのかもしれない。2コアなら85Wだったのだし。
    周波数も2GHzどまり。Montecito(1.6GHz/90nm)のコアの小改良なら、デバイスの向上とクリティカルパスつぶしで2.4GHz程度まで狙えるはずだが、消費電力が大きすぎてあげられなかったのかもしれない。
    Power6では同じ65nmだが製品で4.7GHz、ラボで6GHz越えを実現している。性能はVLIWの並列度で稼いでも、2-3倍のクロック差を埋めるのは難しい。同じ分野にありながら、Power6はライバルと呼ばせてもらえないぐらい差が付いてしまっている感がある。

・ダイサイズもダメ(700平方mm)
 サーバ用のハイエンドで400平方mmといわれていて、400平方mm近くのチップになるとタイピンはおろかキーホルダーにするにも大きすぎると笑われてしまうサイズだ。近年はハイエンドGPUが400平方mmを超え、すごいとおもっていたらなんといきなり700平方mmである。あまりにすごくて笑えない。
    700平方mmは世間的にはダメな数字であるが、すごいことが2つある。一つは700平方mmのチップを実現してしまうIntelのデバイス技術、もう一つはアーキテクトである。
 アーキテクトは目標を実現する時にどこかに無理を持っていく。但し、無理であるができる目処と確信をもって無理をする。今回、無理を持っていった先はチップサイズである。しかも、400平方mmではなく700平方mmである。これをできると踏んでプロジェクトを進めたのだから、アーキテクトはすごい人である。700平方mmで社内での審議まで通してしまったのだから。
    しかし、あまり尊敬はされないと思う。尊敬されるのは、やはりIntelの強さの源、デバイス屋さんである。

    これから、製品発表に向けてサーバベンダのチューニング職人・コンパイラ職人の方が、各種ベンチマークで瞬間1位を実現するために頑張るのだろう。ハイエンドチップは1位を取ることが仕事なので、ダメでしたは許されない。前作のItanium2でもなんとか瞬間1位を実現したが、コアがほぼ同じで周波数向上が2割しかないダメ子ちゃんではさすがに厳しい。ダメな子ほどかわいいというが、チューニング職人・コンパイラ職人は今回はどんな手で瞬間1位を実現するのだろう?
(ポイント30MBのオンチップL3キャッシュかな? これだけは間違いなくNo1なのだ)

(*1)リリース日は明らかにされなかったが、基調講演後の質疑応答において「Tanglewoodは2005年にリリースされるMontecitoの後継となる。つまり、2005年以降ということになる。(PCWatch http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0917/idf01.htm )

(*2)サンタクララチーム Pentium['93年]→Itanium(Merced)[2000年]
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000225/kaigai01.htm

Fort ColinsのチームがMadison, Mercedを開発
以前のTukwilaは旧DECのチームが開発
http://www.geocities.jp/andosprocinfo/wadai04/20041218.htm

(*3)5.5GHz~6.1GHzの動作周波数を達成できた。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号5.1)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0215/isscc04.htm

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「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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