masakunの日記: 「ダーウィン進化論には科学的根拠がある」とする、大きな誤解のもと
面白い記事を発見した。ネタ元はアメリカで進化論以外の理論も教えるべきという論争とアメリカ人の45%が聖書を一字一句信じている世論調査結果という、取り上げるのも恥ずかしいくらいどうでもいいレベルのニュースなのだが、この方はニュースを紹介したあとこんなことをお書きになっている。
ダーウィンの進化論は、科学だ。なぜなら、論理と証拠に基づく結論があるからだ。圧倒的多数の観察結果により誘導された論理的帰結であり、多くの科学者の追試を経て認められたものであるからだ。そして、ダーウィン以降も、進化論自体は幾多の修正を経て、現在の体系になっているのだ。
おおーここまで言い切れるとはご立派。
だけどね、
まずはWikipedia(進化 - 小進化と大進化)をみてくだされ。
「総合学説の元では、進化とは集団中の遺伝子頻度の変化」とされています。ですからトマトの品種改良や競走馬の育種などを例にあげられる小進化と、共通の始祖からサルやヒトが進化してできた大進化は、この定義からすれば同列に論じられているのですが、
実際に観察できるのは遺伝学でいうところの小進化だけなのです。先日もどっかの電波サイトの「分子レベルの進化がある」という下りを紹介しましたが、これも小進化の範疇にとどまります。
そして大進化を裏付けるはずだった、小さな進化の連続の変化を示す中間化石はいくら探しても見つかっていないのです。しかも都合の悪いことにカンブリア爆発のように、突如として数々の生物が出現しています。これについては分子遺伝学の研究から生命の多様化が始まったのはカンブリア紀より3億年前だったとされていますが、これまたこれを裏付ける化石の証拠はありません。
しかも地球生命誕生の初めはまったくの憶測の域を出ていません。頻繁にミラーの実験が引き合いに出されますが、生成された有機物がどのようにして原始大洋で組み合わさってヌクレオチドとなったのか、だれも実験に成功していないのです(これは水は複雑な高分子化合物への成長を阻むという特性の問題)。ですから最初の地球生命がどのように遺伝暗号システムを獲得したかすら分かっていないのが現実なのです。
しかも現生生物への進化のステップとしてRNAワールド説がさかんに叫ばれていますが、そのRNAは200ほどのヌクレオチドが特殊な配列で結び合わされたものと言われているのです。
【参考】DNAやRNAの構造についてさらに知りたい方は、「核酸の構造」ページが参考になります。
以上のとおり、遺伝学での進化の定義が誤解のもとかもしれないですが、小進化はともかく、ダーウィン進化論は「圧倒的多数の観察結果により誘導された論理的帰結であり、多くの科学者の追試を経て認められたもの」とは残念ながら言えない状態です。
10/30追記 masakunは「進化が熱力学の第二法則に違反しているからありえない」とか「天地創造は西暦前4000年頃だ」と主張していないのでそこんところよろしく頼む。まあ熱力学については、地球上の進化は開放系だからという仮定があることを認める必要があるけどね。開放系にしろ閉鎖系にしろ、地球生命誕生の歴史が空白であることには変わりがないんでね。
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