minekの日記: 研究と現場
日記の更新が休みの間、滞るという状況が続いている。その間、日記に書きたいことがないわけではない。戦争ははじまってしまったし、考えることはいくらもあった。しかし、まあ、書くだけの気力がわかない、というのが正直なところである。つまり、何というか、学生の頃、一番勉強ができるのは授業中である、というあれと同じことである。環境というのは大切なものなのだ。
さて、oosquare-ml:03573のスレッドで興味深い討論がなされている。ソフトウェア工学は、果たして役に立っているのか、というものである。
結論から先に書いてしまえば、役に立っていない、というのが当事者の一致した見解であろう。
研究者は、「開発者が勉強しないからだ」といい、開発者は「役に立たないことはやりたくない」という。この手の話は、完全に水掛け論であり、鶏卵もいいところだ。研究者は、なぜ開発者が勉強しないのか、ということを真摯に研究すべきであろう。
では、なぜ、そうなるのか。
簡単な話で、理論は理論であり、現場に適用するためには現場にあった形で展開しなければならない。現場にあった形で展開するためには、理論を押さえた上で、現場の実情も理解している必要がある。この二つの要件を備えた人材がいないからだ。
つまり、研究者でもあり開発者でもある人材を育成できていないところに、ソフトウェア工学の限界があると言っていい。実際には別に工学などなくてもソフトウェアはできあがるから、開発者にとって理論はよけいなものである、と感じる。理論を理解し実践する労力の方が、省力化のメリットよりも大きく感じる。省けてしまった手間は、実感できないからよけいである。
研究者は、理論を杓子定規に振りかざすのではなく、現場に展開する中で最適な方法を模索しつつ、理論へのフィードバックをはかるべきだろう。研究室や机上での開発ではなく、実際のビジネスの開発では、より、予測不可能な要素が多いものだし、一方で、理論がそのまま展開できる場面も多くあるはずだ。また、開発者は、研究者のやりたいことに耳を傾けつつ、冒険をおそれず自らの保守性と対決すべきだ。現場の悲劇を100回嘆くよりも、そこから抜け出すためのひとつの実践を大切にしようではないか。
そして、よりよいソフトウェアが作れるようになるならば、それでよいではないか。たとえ、最終ユーザーの利益に直接つながらなくとも、ステイク・ホルダーの誰かの満足度が下がらず、また少しでも上がれば、しめたものである。
結局は、研究者と開発者のコミュニケーション不足に端を発している気がする、この問題ではある。メーリングリストに学者先生が顔を出すことが少ないような気がするのは、気のせいだろうか。
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