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okkyの日記: 都市伝説

日記 by okky

ある所に一人の少年と、一人の年老いた技術者がおったそうな。

少年は知識に貪欲で、センスもあった。彼はプログラマーとしても急速に成長していた。

技術者は冴えているのかいないのか判らない存在だった。殆どの場合、技術的革新には興味を示さない。特にプログラミングには全く手を出さなかった。しかし、彼の言葉の端々には、昔、優れた技術者であった事が見え隠れしていた。

「見てください。」ある日少年は言った。「Emacsにバグを発見しました。このバグをつけば、Emacsを使っている人が編集しているファイルだろうがなんだろうが、自在に見ることが出来ます。」

「ふむ。それで何をするつもりだ?」
「ライバル会社が持っている情報を盗み出しましょうか? メールを盗み出しましょうか。/etc/shadow だって持ってこれるかもしれない。ほかにも…」

「やめておけ」技術者はいまだかつて無いほどの厳しい声で言った。
「死ぬ事になる」

「何を言うんです。プログラムが人を殺せるわけが無い。それにこれなら…」
「やめておけ。それはお前を確実に殺す。」

あまりの真剣さに少年はいぶかった。「なぜです?」

「昔話をしてやろう。
  ある所に技術者がいた。彼はEmacsの弱点を見つけ出し、それを使って他人の情報を盗み見ようとした。
「しかし。そのコードを流布して30分後。その技術者のPCは突如止まった。
  見つけたぞと言うのが最後の表示だった。その後、電源が突如として火を噴いた。
「新しいPCをつなごうとしたが、彼の家からはどうしてもネットワークに繋がらなくなった。
  いや、それだけではない。銀行の口座。社会保障番号。クレジットカードは無効を訴える。あらゆるものからその人間の情報は消えだしたのだ。
  紙の手紙を書いても途中で戻ってくる。その技術者には紙の手紙も届かない。電話だってもちろん接続されない。
  最も厳しい意味で、彼は社会的に抹殺されたのだ。

「しばらくしてから、彼に一本の電話がかかってきた。
  『判ったかね。』
  『どういうことだ。』その技術者は尋ねた。
  『世界中で真にハッカーと呼べるだけの技量を持った人間の 60%は Emacs使いだ。そして 60%が vi 使いだ。どちらも使えぬ奴で、真のハッカーは一人も生き残っていない。皆、老衰した。
  『この2つのどちらかに手を出した瞬間、君は世界中のハッカーを相手に孤立無援の戦いをする必要があるのだ。そして、この社会は彼らハッカーが書いたプログラムによって支えられているのだ。彼らを怒らせたら何が起こるか…』
  それを最後に電話は切れた。
  何事も無かったかのように全てのサービスは復旧した。」

.

「…その技術者はその後どうなったのですか?」
「二度とプログラムを書く事はできなくなったよ。」

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Emacs Lisp を攻撃するウィルスがいない理由、viの正規表現を攻撃するクラッカーがいない理由として、私が聞いた中で最も秀逸な一作 でした。

なにしろ。本当にありそうですからね

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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ

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