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okkyの日記: ノートに使うメディアの話

日記 by okky

表の記事「ノートは手書き or デジタル ?

なんか、コメントの中に微妙にノートとメモをごちゃ混ぜにしている発言があるので、先にそこをはっきりさせよう。

メモと言うのは、情報が floating な代物である。そもそもは紙片に書いて、紙片単位で管理し、必要に応じて他人に渡し、最終的にはノートに貼り付けるかゴミ箱に捨てるかする。情報片を他の人に渡したり、情報片と他の情報片の相対位置をいろいろ編集するためにある。

ノート…手帳は小さなノートだと思って欲しい…というのは、情報を集約させるためのメディアである。メモが情報片を浮遊させるためのメディアなら、ノートは情報片を沈着させるためのメディア。最終的に、永続化させたい情報はノートに記述する。

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というわけなので、「ノートをとる」と言う行為は「その場で得た情報を永続化させたい」という意識の現われである、というのがまず大前提。

で、ここから「ノートをとるという行為を相手に見せる」というのは「あなたが伝えてくれた情報は永続化して記録したいと考えていますよ」という意思を相手に伝える事になる。

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で。
勉強の時のノートとか、自分が考えている時の内容を記録するためのノートとかは、相手に自分の意思を伝える事は考えなくてよい。この場合重要なのは、
1) まず Primary なノートを取っている間は、情報の漏れが少なくなるようにする
2) Secondary にノートを見るときは、情報に優先度をつけて不要な情報を除去していく
という2段階作業。

私は 1 の段階は、資料がすでにある場合はそちらに書き込む。で、そうじゃないときだけ、ノートに手書き。この場合、文章や文字で書くとは限らない。マインドマップのようにすっきりしたスタイルではないが、落書き的な感じで書いていくことが多々ある。図でイメージ化するとかもよくやる。なので、この段階は紙に筆記具。

2 の段階は情報を除去するので、意図的にPCとかに入れる。
たとえば、あなたが70%正答すればよいテストを受けるために受験勉強しているとしよう。私はこの2番目の段階を「80%までしか答を保存しない」形の Lossy圧縮 と捉えている(ぎりぎり70%だと、30%の部分を露骨に食らうと痛い目にあうので、80%ぐらいは再現するように圧縮する)。この場合、当然出題される可能性の高いものは採用し、そうじゃないものは不採用にする。で全体のデータ量が可能な限り小さくなるように圧縮して、その結果を憶える。
この段階では、メディアを変更した方がよい。1の段階がノートだったので 2の段階はPCとかを使う。1の段階として教科書がある場合は、2の段階がノートになる。

物を憶える時は、「記憶力がまだましだった頃と同じように」手を動かしたほうがまだ記憶力が励起されるのが理由だ。

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で、これらとは別に。「お客様の前で、お客様からの話をノートに記載する」場合。

この場合は絶対に紙のノートに筆記具。絶対ノートPCにはしない。どこかで何度か書いた気もするが。

対面の人がノートPCを開いて操作しているところを考えてみて欲しい。自分からは画面が見えない。自分がしゃべっている間中何かPCを操作している。視線もPCのモニターを向いている。
「こいつ…俺の話をちゃんと聞いてるのかな??」
不安になる。
なによりPCのモニターの背板が垂直に上がっている。なんかこう…相手と自分の間に壁を作られた感じ。デフォルトで拒否されている感じがする。

こういう「嫌な感じ」はノートPCがいくら薄くなってもぬぐえない。ノートPCがモニターを垂直に立てる構造になっている限り、回避できない。iPad を机の上において操作するなら話は別かもしれないが…。

なので、私は紙のノートに筆記具を使う。これなら相手との間に壁は出来ない。相手からも私が何を書いているのかある程度見える。お客様は安心し、言いたい事を言い、それ故にこちらの話にも耳を傾ける心の準備が出来る。相手に不快感を与えないのが絶対条件なのだ。

ノートには絶対ノートカバーをつける。会社のロゴが入っているカバーが望ましい。私の場合、入社して1年目に手に入れたものがあるので、それを使っている。表紙がボロボロで裸の紙のノートに汚い字で書いても、「後で読めるのかな」と思われてしまう。字を直すのは並大抵じゃないので、ノートカバーでごまかすのだ。

筆記具は相手によって変える。これは「マッキンゼーをつくった男  マービン・バウワー」に書いてあった、マービン・バウアーの真似。コンサルタントがスーツを着るのは、コンサルタントの相手企業のCEOとかがスーツを着ているからだそうだ。そうする事で「私はあなたの味方です」というメッセージを発信しているのだそうだ。
それと同じで、金融系の会社を相手にする場合はペリカンの黒とか、技術系の会社を相手にする場合はスケルトンや Multi8 とか、そういうのを選ぶようにしている。ようするに相手が判るような、相手が引かないような、できれば相手が食いついてくるようなものを使う。

もうここになると、「ノートのとりやすさ」ではなく、「演出」。場合によっては効果がないこともあるけれど、それでも一応打てる手は全部打っておく、という意味で。

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というわけで。「ノートをとる」と言う行為は、必ずしも「情報を記録する」だけが目的ではないのだよ、と言う話でした。

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一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け -- Malcolm Douglas McIlroy

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