tsuya 曰く、
コンピュータ将棋関連の暫定掲示板にて、世界コンピュータ将棋選手権における使用可能ライブラリ規程に関する議論が続いている。議論百出。結論を出すのは非常に難しいようだ。
これまで19回開催された世界コンピュータ将棋選手権では、思考部を自作することが出場の条件になっており、開発者はひとつのチームにしか加われないことになっている。これは例えば、同一のコンピュータ将棋ソフトウェアの複製が多数出場することによって一定の順位を占めてしまうような状況を防ぐために設定されているルールである。ある意味で当然のルールともいえるが、一方でオープンな技術の普及を妨げ、いわゆる「車輪の再発明」を招く側面もないとはいえなかった。
このルールをよりオープンなものにするために数年前から導入されているのが、ライブラリルールである。つまり、「使用可能ライブラリ」として登録されているものなら思考部でも共有できるようにしたのだ。このルール改正は参加者の増加や新技術の導入を促し、一定の成果を挙げた。
ところが今年になって、2006年の第16回選手権を制したBonanzaがライブラリとして登録され、物議を醸すことになった。こんな強いソフトが誰でも使えるものになってよいのか…。
多くの論点については掲示板にて語られているので、各位にはご一読をお願いしたい。筆者にとって興味があるのは、オープンであることの価値を共有するスラッシュドットのコミュニティにおいて、この議論がどのように評価されるのかということだ。コンピュータ将棋開発者のコミュニティがその外部のコミュニティとも価値観を共有できれば、より有意義な議論への発展が期待できる。
掲示板では対立する意見も多く交わされているが、フレームは1件も起きていない。コンピュータ将棋開発者のコミュニティのモラルの高さは驚異的だ。なお、この件についてはコンピュータ将棋協会(CSA)でも意見を募集している。
参考: コンピュータ将棋協会blog