akiraaniの日記: Googleブック訴訟、2009年に各国ともゴネ方を間違えたよね
Google Books訴訟、米控訴裁でフェアユースとの判断のタレこみを書くのにざっくり過去の経緯を洗っていて思ったこと。
結果論だけど、Google と全米作家組合・出版社協会との和解が各国著作権者をも巻き込むの騒動の時に、各国とも対応の方法間違えてたよな、という話です。
当時、国外の権利者が和解に対してとることができたアクションは以下の3種類でした
1.和解に参加して権利者登録し、広告収入などの分け前を得る
2.和解に参加して権利者登録し、公開を拒否する
3.和解から離脱して、個別にGoogleと交渉する
で、日本でも「オプトアウトとかふざけるな、断固和解から離脱!」という論調になってました。
特に印象深かったのが情報処理学会会長声明、Google ブック検索を強引な手法と批判のあたり。そもそも論を言えば、オプトアウトなのはGoogleのせいじゃなくてクラスアクションという制度がそうだからなんですが、とりあえずGoogle非難しとけ、てきな内容になってます。
当時、全世界的にそういう意見が大半だったようで、Googleヘイトもあって和解への参加自体を拒否、という報道しか見た覚えがないです。
つまり、3の選択肢を選んだわけですね。
今になって思えば、これが大きな勘違いだったなと思うわけです。
そもそも、なんで国外の作家がいきなり巻き込まれることになったのかというと、米国内で流通している米国外書籍も電子化の対象にされているからであって、和解に参加していなくても当事者であることには変わりないわけです。なので、一番面倒がない方法は2の和解に参加した上で公開を拒否する、だったわけです。
確かに、Googleによる電子化自体を止めたければ、確かに3の選択肢しかない。
が、これには大きな落とし穴が一つ。もともと、Googleはフェアユースと主張してこれらの電子化作業を進めていたわけで、訴訟の対象にならなければ電子化を除外する道理なんてないのです。そして、2008年の和解は、フェアユースかどうかを争う裁判の途中で成立したため、フェアユースかどうかというのは判断はまだ行われていない状態でした。
つまり、電子化自体をやめさせるためには和解から離脱しただけでは不十分で、米国内で訴訟してGoogleに対してフェアユースではないとして差し止め請求を行い、米国の裁判所で戦って勝つ必要があったということですね。どう考えてもこれハードル高いだろうと……。
結局、これらの騒動でもめている間に米国内でも横やりが入り、和解案は修正されることになります。ちなみに、この横やりを入れたのはOpen Book Allianceという団体なんですが、これの主なメンバーはマイクロソフト、Amazon、Yahooなど。要するに米国内でのGoogleの敵対勢力に便乗されてしまった形です。介入の理由も、フェアユースかどうかという問題ではなくて、和解条件としてGoogleが出資して作るとされていた出版レジストリが独占禁止法違反という問題が主眼。
これが和解案という藪をつついて出してしまった余計な蛇だったなぁ、と今となっては思うわけです。
Googleと出版社、ブック検索の和解案を修正へ(ITmedia))
その後、いろいろあって2013年に審議そのものが振り出しに戻り、再びフェアユースかどうかについて争われることになります。
Google Book Search裁判、控訴審が結論「クラスアクション訴訟として認定する前にまずフェアユース面での議論を」(ITmedia)
で、この裁判の結果、Google Book Searchはフェアユースである、という結論が米国司法内で出されてしまいそう、という状況になっているわけです。
もしこのままフェアユースという判断が確定してしまうと、Googleは和解すら必要なくなって米国内絶版本をただで利用する、ということになります。一旦裁定が下りてしまえば、第三者が新たに訴訟を起こしても、フェアユースという判断を覆すのはほぼ不可能でしょう。
つまり、電子化は勝手に行われ止める方法はなく、お金も払ってもらえないという状況になってしまうわけです。権利者にとっておおよそ考えうる最悪の結果といっていいんじゃないかと思います。
たられば論になりますが、2008年の和解を拒否らず参加し、公開を拒否するという選択肢(上でいうところの2)を関係各国がとっていれば、和解案自体が見直されることはなかったはずです。少なくとも、フェアユースかどうかという判断が改めて問われることもなかったでしょう。
ちなみに、当時の日記やねためもを読み返してみると、米国でGoogle相手に訴訟しなおさないといけないのは大変だから、2で我慢しておくべきなんじゃないのか、という感じのメモが残ってます。しかし、さすがに和解が丸ごと覆った挙句米国内でフェアユース認定されるなんて結末は想像もしてなかったですな。
そうすれば電子化自体は止められないとしても、公開を禁止することで実害は防げた。勝手に電子化されても文句すらいえないという状況よりは大分ましだったのではないかと……。
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