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kahoの日記: ウクライナの陰謀 2

日記 by kaho

私にとってウクライナというのはディナモ・キエフとシェフチェンコくらいの知識しかない.
日本人にはどうしてこれほど国際社会で騒がれるのかピンとこないウクライナの選挙なのだが,Nature Web Newsにこんな記事を見つけた.
いやだからといってウクライナの国政が身近になる訳ではないが,いろいろと激しい争いだと言うことは・・・

Natureのサイトに8月のユシチェンコ氏と現在の写真が載っているのだが,一見して違いが分かるほどというか,もはや同一人物と思えないほどに変化している.このようなざ瘡についてイギリスの医師が写真と症状に関する情報から診断したところ,これはダイオキシンによる塩素ざ瘡だろう,というのだ.
塩素ざ瘡というのは日本でも油症事件で問題になり,台湾でも起きたのだそうだが,PCBの被爆によって皮膚がに吹き出物ができることで,これまでに最悪の事件としては1976年イタリアのSevesoで大気中に漏れ出した20kgのダイオキシンが原因で大量被曝した例があるという.こういった事故以外にも職務上塩素系の化学薬品に多く被曝する場合にもみられ,その方が一般的らしい.

Sevesoの事故のご当地であるイタリアの医師は塩素ざ瘡が見られるほどのダイオキシンの摂取は非現実的だと指摘しているが,それに対してダイオキシン汚染の可能性を指摘したイギリスの医師はたった2ヶ月でのこの変化は異常であり,一度の食事でも十分起こると反論しているということだ.

ということでちょうどGoogle Newsにあった南アフリカのThe Star誌のサイトにあった毒薬説につかるウクライナの選挙をみたら,野党側が今回の選挙で絶対に負けたくないと思う気持ちも分かるようになってきた.

この記事を要約すると,ユシチェンコ氏が倒れたのは元KGBの長官との会食の後で,オーストリアで検査を受けたところ現場の医師は毒を盛られた可能性を否定できないとしたのに院長は否定し,しかも記録がオーストリアの裁判所によって没収されたという.
ウクライナにユシチェンコ氏が戻ったときにはメディア戦略により世論調査で20ポイントもリードされていた.また,ユシチェンコ氏が入院した理由も倒れた数日前の寿司やフルーツのせいだと国営放送に報じさせ,貪食漢のイメージをつけようとするという戦略に出たらしい.

私にはこの話の真偽について評価できないし,元KGBが毒を盛るならこんなあからさまなやり方をするだろうかという疑問もあるのだが(しかもダイオキシン?),野党側とすればここで負けることは共産主義時代の暗黒政治と同じに映るのだろう.

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 旧ソビエト時代の国家保安委員会には、対外作戦活動を統括する第十三管理本部が要人の暗殺など特殊作戦に従事していて、実のところかなりの人数がソビエト国外で暗殺されているという事例があります

    毒物や化学物質を使った特殊な暗殺用の武器を使った暗殺例も、かなりの数が把握されていて、一説に軍やKGBの生物兵器生産企業だったバイオプレパラト社が開発した暗殺用生物兵器すら使用していたという話すらあります

    ロシアのプーチン大統領自身がKGB出身で、冷戦期に西側に情報官として実際に作戦担当官であった経歴や、権力掌握の過程で側近にKGB出身者を重用するなどKGB寄りであることは良く知られていますが、この辺りがこういった憶測を呼ぶ原因になっているのではないでしょうか

    ちなみに、ウクライナ問題がこれほど取り上げられている理由は三つあります。一つは、ウクライナがいわゆる欧州大陸における戦略的重要拠点であることで、特に旧ソビエト時代にソビエト海軍の黒海艦隊の基地があったセヴァストポリやオデッサなどの軍港を抱えている点です。特に、黒海艦隊の帰属問題ではウクライナと紛争がありますし、旧ソビエトが分割されたことで、兵器生産企業がウクライナ側企業になったことがロシアにとって問題であるという点もあります

    #例えば、大手航空機メーカーのアントノフ社、宇宙関係だとプログレス輸送船のドッキング制御用コンピューターの生産メーカーなど

    第二に、ロシアによる露骨な選挙干渉です。元々、クチマ政権は西側よりでウクライナ国内で米軍と共同訓練を行ったりと、西側につきながらロシアとの関係を重視する方向にありましたが、911後の政治情勢の変化によってロシアとの関係を重視する傾向にありました。これは、ひとえに冷却化していた米露関係が、911後の対テロ外交によって関係が改善し、イスラム原理主義に対抗する共闘関係が成立したことにより、米国がウクライナ政策に対して中立の立場を取るようになったことです。クチマ大統領から親露派のヤヌコビッチ首相に対する禅譲は、こういうロシア側の政治的圧力によるものである、という味方が西側の反発を生んでいる点です。特に、独自の外交戦略で西側に接近している中央アジア系CIS国家には大きな打撃でしょう

    #中央アジア諸国は、穏健的イスラム教徒でチェルク族(古トルコ族)という関係から、トルコを介して西側に接近

    三番目は経済問題です。ウクライナは、ドニエプル川を挟んで東西で東側が親露、西側が親EUと言う関係にあります。特に、西側のルーマニアやポーランドとの国境地帯では、低関税化した経済特区が創設され、低賃金やロシア側への輸出を期待する西側企業の進出が相次いでいます。東ウクライナ側としては、EUとの接近を通して投資を呼び込み、将来的にはポーランドのようにEUに加盟して経済発展の恩恵を手に入れたいという勢力があります。一方で、国境を接し、経済的にもつながりの強いロシアとの関係を重視すべきであるという勢力も確実に存在し、これが特に東側に強いです

    ウクライナ経済がロシア経済に依存していることは確かで、経済構造もロシアに類似しています。特に、一部の財閥(オルガルヒ)が国の富の大半を支配したり、マフィアによる経済支配が強いところも似てます。汚職の一層と西側への接近をスローガンにしているユーシェンコの当選は、オルガルヒやウクライナ・マフィアとの関係の強いクチマ大統領にとっては、後々マズイ状況を生み出してしまうという警戒もあるのでしょう
    • いろいろ有益な情報をありがとうございます。von_yosukeyanさんの日記で反政府派がオレンジの旗を振る背景も興味深く拝読しました。
      ウクライナ語も話せない東側とEU加盟も視野に入れる旧東欧を見ている西側の対立は仄聞するところでもありますが、内線直前までいってしまうだけの背景があるのですね。

      経済構造は急激に変わるわけがなく、どちらが政権をとっても経済的には本質的に変化しないと思っているので「そんなに外国が騒いでも」と思っていたのですが(マフィアとの関わりもどちらの陣営も程度問題でしかないだろうし)、まだ黒海艦隊の帰属でもめていたのは知りませんでした。安全保障に関わるのであれば露骨と言われようともロシアが介入する必要があるのですね。
      ニュースの聞きかじり程度の知識では、黒海の軍港と艦隊はソビエト崩壊時に問題となって、結局とりあえずの解決をみたような気でいました。

      KGBによる暗殺というのは現代においてすらあり得ないことではないと私も思うのですが、今回のニュースとして使う毒薬としてダイオキシン(や類似した塩素系毒物)というのは管理が面倒だしあまりにもスマートでないというのが私の感想です。
      それこそ食中毒と同じような症状で死亡するようにさせたり寝室に生物兵器を仕込んだり、一緒に食事をするくらい近づけるなら放射性物質を打ち込んだりする手段をKGBならとれるのに、そんなに実績もなく(と思う)致死的でもないダイオキシンとはなあ、と。
      --
      kaho
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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人

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