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日記

yasuokaの日記: 公共経済学におけるQWERTY配列

日記 by yasuoka

小塩隆士の『公共経済学』(東洋経済新報社、2016年4月)を読んでいたところ、QWERTY配列に関するガセネタが書かれていた(pp.107-108)。

このネットワーク外部性の古典的な例としては,英文タイプライターのキー配列におけるQWERTY配列の普及が挙げられる.この配列は,打つ頻度の高い文字をわざと遠ざけて配置し,タイプライターのバーが絡みにくいように設計されている.しかし,この工夫は,タイプライターがパソコンとプリンタにほとんど置き換えられている現在では,タイピングのスピードを落とすだけの効果しかなく,かえって非効率である.そのため,QWERTY配列よりもタイピングに適したDvorak配列なども考案されてきたが,普及度という点ではQWERTY配列に遠く及ばない.

『「ECONOトリビア」QWERTY記事顚末記』(情報処理学会研究報告、2015年5月16日)でも指摘したが、QWERTY配列が「打つ頻度の高い文字をわざと遠ざけて配置し」ているというのは、全くのガセネタだ。実際、連続して打つ頻度の高い「th」も「er」も、QWERTY配列では、すぐそばに配置されている。また、「タイプライターのバーが絡みにくいように」というのも全くのガセネタで、Remington Standard Type-Writer No.2は、その機構上、バー(活字棒)が絡んだりすることなど、まず起こり得ない。

そもそも、QWERTY配列が他のキー配列を蹴散らして普及したのは、1893年3月のTypewriter Trust成立に負うところが大きい。その点については、『キーボード配列 QWERTYの謎』(NTT出版、2008年3月)でも明らかにしたし、『Research Policy』誌2013年7・8月号でも議論になった通りだ。にもかかわらず、いまだに「ネットワーク外部性の古典的な例」とやらにQWERTY配列をひっぱりだしてくる小塩隆士は、経済学者としてもあまりに勉強不足だと思う。

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