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yasuokaの日記: クリエイティブ・エイジェンシーが考えるユーザーインターフェースの歴史
ネットサーフィンしていたところ、郷上亮の「今さら聞けないユーザーインターフェイス(UI)の基本」(freshtrax、2016年7月13日)という記事を、エキサイトニュースで見つけた。何でも
1. インターフェイスの歴史、2. 良いUIと悪いUIの違い、3. UIのこれから、という3つのセクションに分け、インターフェイスの本質をまとめた。
という記事らしいが、中でも「1. インターフェイスの歴史」のデキが特に悪い。たとえば「歴史を変えたユーザーインターフェイス達」のこれ。
黒電話の「ダイヤル」
驚きかもしれないが、この黒電話の「ダイヤル」もれっきとしたインターフェイスである。このダイヤルの発明によって“クランクハンドルを手で回す”なんていう今では考えられないような手間を省くことが出来、人間と電話機との窓口として大活躍した。
何が言いたいのかサッパリ理解できない。「ダイヤル」は相手の電話番号を回すためのもので、「クランクハンドル」は電話機の蓄電池に充電(ないしはベルを鳴らすために発電)するためのものだ。私(安岡孝一)の記憶する限り、1893年12月にLexingtonで導入されたCommon Battery Systemが「クランクハンドル」を無くした嚆矢だが、その時点ではもちろん「ダイヤル」ではなく、それまでと同じように交換手を呼び出していたはずだ。
iPodの「クリックホイール」
そのダイヤルを音楽プレイヤーに持ち込んだのがスティーブ・ジョブズである。iPodに搭載された「クリックホイール」も人間と音楽プレイヤーをより密接に繋げることに成功した歴史的なインターフェイスだと言えるだろう。
アメリカ贔屓なのは仕方ないのだろうが、UIとしての「クリックホイール」の話をするのなら、知的財産高等裁判所平成25年(ネ)第10086号くらいは目を通しておくべきだと思う。
「QWERTY配列」
当時のタイプライターには「隣同士のキーを高速で打つとジャムる」という致命的な弱点があった。そこで良く使われる単語をリストアップし、出来るだけ隣同士のキーを叩く必要が無いようにして結果生まれたのが「QWERTY配列」である。これも人間とタイプライターとの距離をより密接にしたと言えるだろう。
「当時」っていつ? 「良く使われる単語をリストアップ」したのは誰? 「出来るだけ隣同士のキーを叩く必要が無い」はずなのに、どうして英語で頻度が高い「TH」や「ER」は隣り合ってるの? 『On the Prehistory of QWERTY』(ZINBUN, No.42 (2011年3月), pp.161-174)でも指摘しておいたはずだけど、読んでないのかしら?
まあ、このbtraxっていうクリエイティブ・エイジェンシーでは、過去の歴史をちゃんと調べずに、「ユーザーインターフェースの歴史」とやらをデッチ上げるのが趣味なのだろう。ただ、不思議なのは、この「今さら聞けないユーザーインターフェイス(UI)の基本」という記事は、日本語版だけがあって英語版や中国語版は無い。日本人だけを騙そうとしてるのかしら?
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