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日記

yasuokaの日記: 韓国憲法裁判所による「戸籍法違憲」決定

日記 by yasuoka

今日付けの『韓国の人名用漢字は違憲か合憲か』(第2回)で、私(安岡孝一)は以下のように書いた。

ちなみに韓国の戸籍は、2007年12月31日をもって廃止されており、代わりに家族関係登録簿が用いられています。

さらっと一文で書いたのだが、この背後には、実は、韓国の憲法裁判所による違憲決定[事件番号2001헌가9~15・2004헌가5]がある。当該事件は、離婚した元夫の戸籍に残された子供の転籍や、戸籍における無戸主(男女平等)を、足かけ4年に渡って争ったものだが、これらの事件に対して、韓国の憲法裁判所は、戸籍における戸主制度そのものが違憲である、という判断を下した(2005年2月3日)。これにより、韓国の「戸籍法」は違憲となってしまったのだが、いきなり違憲になると大変なので、「戸籍法」が改正されるまでは憲法不合致である、という決定を下したのである。これに呼応して、韓国の国会は「民法」の改正を2005年3月2日に可決、その施行期日を2008年1月1日として、2008年1月1日までに「戸籍法」を改正することとした。

その後、韓国の国会では「戸籍法」の改正をめぐって、3つの法案が文字通り三つ巴の争いとなり、かなり泥沼化したが、結局、2007年4月27日に「家族関係の登録等に関する法律」を可決した。この法律は、各個人ごとに「家族関係登録簿」を編成し、それらの間の家族関係をいわば「双方向リンク」として相互に繋ぎあうものである。ある意味、コンピュータ時代の賜物と言える「家族関係の登録等に関する法律」は、2007年5月17日に官報告示され、2008年1月1日に施行、同時に「戸籍法」は廃止された。ただ、そこまで大きな変化だったにもかかわらず、人名用漢字に関しては変更されなかった、というのも面白い話である。

なお、このあたりの、韓国における「戸籍法」の廃止と、「家族関係の登録等に関する法律」の制定については、以下の論文が日本語で書かれていて詳しい。この日記の読者も、よければ参考にされたい。

  • 高翔龍: 韓国家族法の大改革, ジュリスト, No.1294 (2005年7月15日), pp.84-91.
  • 申榮鎬: 2005年韓国民法改正の主要内容, 戸籍時報, No.589 (2005年10月), pp.2-30.
  • 趙慶済: 2005年2月3日戸主制憲法不合致決定に関して, 立命館法学, 第302号 (2006年1月), pp.36-95.
  • 趙慶済: 韓国の新しい身分登録法, ジュリスト, No.1340 (2007年9月1日), pp.86-94.
  • 高翔龍: 韓国法における「家」制度, 大東ロージャーナル, 第5号 (2009年3月), pp.7-28.
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