akiraaniの日記: 艦これ劇場版を見た感想、かーらーのー、MMD艦これの話
見たのはもう昨年の話なんですが、いろいろ思うところあったので……。
結論から言うと、出来は悪くないと思うけど、かなり無理してるなぁ、という感じ。
アニメーションとしてのクオリティやら演出の問題ではなくて、作品そのものの方向性とかの問題で無理を押し通したからしんどいことになってたと言う印象。
見た限り、原因としては以下の3つが相当影響しちゃってると思う
・作中で提督を描写しない
・吹雪を主人公に据える
・艦これワールドのメインストーリーを語る
もともと、艦これ自体が原作にストーリーと呼べるものが皆無でスピンオフは容易でも公式ストーリーを作るのが非常に難しいはず。さらに、アニメ化しようとするとキャストかぶりでメインではれるキャラの組み合わせに制限あるよね、と。
この状況で、唯一自由にキャラ付けができ、提督と艦娘との人間ドラマも期待できるはずの提督を作中に出さないというのは、脚本作りの段階でかなりの足かせになっていたのではないかと。
さらに、主人公を吹雪にしてしまったのも、ドラマ作りの上では結構つらいものがあったはず。
成長物語の主人公としては印象的なドラマエピソードは邪魔になってしまうので、キャラ個性が薄い吹雪が主人公なのがベストチョイスという選択もありかもしれないけど、駆逐艦である以上どんなにがんばって成長してもゲームの設定上一番盛り上がる戦艦と空母が主軸となるボスクラスとの決戦で出番がほぼなくなってしまうのが致命的に痛い。
そのあたり、劇場版ではある設定が追加されていたわけですが、やっぱり苦しいものは苦しいとしか……。吹雪を主人公に据えた時点で壮大なストーリーは実質不可能に近かったのではないかと。
くわえて、MI作戦やらの艦これワールドの全体にかかわるメインストーリーを追おうとしたのも、作品単体のクオリティを考える上で無駄にハードルを高くしてるように見える。
そもそもブラゲ版にはゲームクリア的な決着ポイントがなくて、いろんな作戦をモチーフにした季節イベントを時系列をがん無視して配置しているに過ぎないわけで、ストーリー性なんてものがもともとないわけです。Vita版の改では海域を順に攻略していって最後に深遠の本拠地をたたけばクリア、みたいな全体の流れと決着点が用意されているわけですが、売り上げ的な問題でなかったことにされてますし。
もろもろの事情を推察するに、こうなるのも分からんでもないけど、やっぱこの設定はしんどいよねとしみじみ思う。アニメ版艦これ単体としての完成度だけを追い求めるなら、駆逐軽巡までの軽量級、戦艦空母メインの重量級、みたいに艦種を絞ったメインキャラにするか、弱小鎮守府と言うことにして艦種は多くても登場メンバーを減らすべきだったと思う。あるいは、ストーリーを作るのはあきらめて一話完結でキャラエピソードの描写に徹するか。
ちなみに、個人的にアニメ版艦これで一番違和感があったのは「キャラクターデザインに統一性がある」と言うところ。一般的には統一性ないデザインのほうが違和感出るんでしょうが、MMD艦これ作品を大量に見ているからかデザイナーの違うキャラが同じ作品内で登場することにまったく違和感を覚えなくなってる、というかよく使われるMMDモデルの方になじみができちゃってる。
最も違和感の強かったのが致命的なことに主人公の吹雪。アニメーション的にはぱっと見の印象が地味なしばふデザインはよろしくないんだろうけど、あの芋っぽさ、モブっぽさこそが吹雪をはじめとした特型の大きな魅力でもあるわけで、吹雪き出すなら白雪深雪初雪くらいまではセットで出してイモっぽさを存分に振りまいて欲しかった。
好みじゃないはまあ個人的感想だから脇に置くにしても、艦これアーケードのモデルとか原作イラストのテイストを残したまま立体化に成功してるし、できないことはなかったはず。キャラデザが統一されてすぎているせいでTV版の水着回とか誰が誰やらわからんかったのはどうなんだろうなぁと……。
映像化に当たってしんどくなることが予想されるポイントは他にも結構あって、戦闘シーンが基本長距離しかないというのが絵にするとだいぶきつかったはず。
バトルシーンの醍醐味ってやっぱ丁々発止の攻撃防御の応酬にあるわけですが、距離のスケール上ポジション取りも表現しにくく、基本足を止めての撃ち合いだけとなってしまうというのは、人間の体を使ったアクションとしてはどうしても単調なものになってしまうのではないかと。
MMD艦これの作品群ではバトル描写をどうしているかというと、そもそも静止画中心でアクションしない、シュミレーションゲーム画面風に簡略化処理する、魚雷やら日本刀やら錨で殴りかかる、武器に頼らず素手や頭突きでぶっ飛ばす、左で打つ、砲塔が後ろ向いてブースターになったりvob装備して空をとぶ、仮面ライダーに変身する、遊戯王のカードバトルをする、ペルソナ召喚する、フードバトルする、味見する、サッカーする、目がヤサグレてて口が△になる、実戦空手と瑞雲を組み合わせた全く新しい格闘技を編み出すなどの様々な手法が使われてます。
ただ、これらの手法はいずれも二次創作だからできるやり方で、公式としての立場上、あるいはTVアニメとしてのメディアの性質上使えないわけですが。
動きのある戦闘シーンがある艦これアーケードでは砲撃/雷撃のポーズを艦娘ごとにいろいろバリエーションもたせる形でキャラの個性を出してますが、あれはゲーム的な表示で記号的に情報詰め込めるからこそ可能なやり方であって、場面場面に応じて動きを変える必要があるドラマ仕立ての映像作品でできる芸当ではない。
そんなわけで、TVアニメで艦娘の戦闘を描くこと自体が相当な無理ゲーだったのではないかと。
もう一つ、映像化で避けて通れない問題がスケーリングの問題じゃないかと思う。
実在する地名が登場する作戦の通りに海上移動するなら、モデルとなった帝国海軍の艦と同等かそれ以上の速度出ている計算になる。
全長100mを超える船体ならともかく、身長150cm程度の生身の体でその速度を出す表現は難しいではすまない。陸上戦闘でその速度感を出そうと思えば武空術やら十傑集走りのようなアクション性を犠牲にした表現にならざるを得ない。海の上であってもそこは変わらず、その速度で輪形陣とか真面目に描写すると海上スキーと言う非常にシュールな絵となって雑コラが量産される羽目になるのも致し方ないところ。
MMD艦これ作品ではスケールは完全にオミットされていることがほとんど。紙芝居系の作品では海上移動のスケーリングが問題になるような描写はそもそも必要ないし、実際の地名を登場させなければ距離スケールを意識させないことも難しくない。他、海上での移動は船舶や航空機に乗り、戦闘時だけ海に下りるといった表現をする作品もある。
個人的に絵になってすきなのは、臥龍の瞳シリーズで使われていた艦娘は出撃時には巨大化しているという設定。戦闘アクション、スケーリングの両方の問題を一挙に解決する妙案だと個人的には思う。まあ、臥龍の瞳シリーズの場合、作ってる人の演出力が半端ないので設定の妙、だけでは語れない部分もあるけど。
それから、キャラが多すぎると言う問題も。
艦娘の見せ場を少しでも増やすためには、艦娘以外の描写は極限まで削る必要があって、民間人やら提督の出番を削るというのはある意味止むを得ない処置なんだろうけど、それで公式正道的なストーリーをすすめるのはやっぱ無理がある。他の艦これメディアミックスものを見ても、大体がスピンオフ的なものを想定して登場するキャラクターを絞るわけですが、ファンサービスも考慮してできるだけたくさんのキャラを出したかったんだろうなぁ、と……。
モデルさえそろえればいくらでもキャラが増やせる艦これMMD作品でも、そこまでたくさんキャラ出してる作品はまれだし、出してても複数陣営(もしくは鎮守府)に分かれてて一緒には出てこない。提督の指揮する鎮守府の艦娘と深海棲艦だけで一種のセカイ系を形成しているアニメ版ではそういう裏技も使えない。たくさんのキャラを出したければ、艦これワールドのメインストーリーを語るのはあきらめて数ある鎮守府が交流するとかの形にするくらいしか手段がないはず。
とまあいろいろ無理がたたった結果、TV版劇場版双方ともアニメでは艦娘と深海棲艦しか登場しない不自然極まりない描写になっていたのではないかという気がする。
さらに、艦娘が轟沈すると深海棲艦になる設定が作中で肯定されてしまっているので、終わってみれば正真正銘のセカイ系になっちゃってます。
セカイ系が必ずしもいかんとは思わないけど、セカイ系のバトルって陰鬱とした雰囲気になりやすいんであんまり好みじゃない。劇場版での最終決戦も結局精神世界にとんじゃってるし、バトルシーンの大半も画面暗くてよく見えないしでお世辞に爽快とは言いがたかった。シリアス展開でピンチになるにしても、決着は処刑用BGM流して正面決戦で豪快に吹っ飛ばす展開が見たかった。
ぶっちゃけ、臥龍の瞳シリーズに原作声優が声当てて音楽と効果音を権利処理したものに差し替えたほうが面白いんじゃないかと思わなくも(げふんげふん
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