yasuokaの日記: 推理小説叢書の発刊
日記 by
yasuoka
探偵小説と推理小説に関して『新青年』をチェックしていたところ、昭和25年4月号に「探偵作家抜打座談会」という記事を見つけた(pp.150-159)。この年の1月8日に神楽坂の喜楽でおこなわれた《抜打》座談会を記録したもののようだが、中でも木々高太郎の以下の発言が気になった。
あの「推理小説」というのは、戦後私が一番初めに言いだしたんですよ。これも歴史的考証をするならば、戦後一番早く雄鶏通信社が私のところにやって来て、探偵小説の叢書を出したい、今がその絶好の機会だと思うから、過去のものを編集してくれないか。よろしい。乱歩さんや大下さん水谷さんとも相談しようということで、一夕会をもってもらった。その時に探偵小説を中心として、科学小説、スリラーでも全部入っている、そういう叢書をつくろうと考えたので小島政二郎さんにも来てもらった。ついてはその名称を、新しい、全部に共通する「推理小説」としたらどうか、ということになってみんな賛成したのです。折からこれを喜んだのは新聞社などで、探偵の「偵」の字が常用漢字に入らない。推理ならば両方入っているから、それではそれを使おうというので「推理小説」という名称が急に広く使われることになった。
雄鶏社が『推理小説叢書』第3巻を発刊したのは昭和21年7月なので、確かに戦後の「推理小説」としては、これが最初のものである可能性は高い。ただ、戦中すでに「推理小説」はあったので、木々高太郎が「私が一番初めに言いだした」と主張するのは、さすがに行き過ぎだと思われる。というか、木々高太郎だって『音と幻想』(紫文閣、昭和17年1月)は読んでるはずなのだが、目次に書いてあった「推理小説」は無視したのかしら?
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