TarZの日記: 本家記事:最近発見された鉄系超伝導体は、磁場耐性がある? 13
「旦那様! 本家で興味深い記事をみつけたのでございます」
「なんだクーパ対よ。そんなことより敵だ、3番アイアンを出せ」
「そのアイアンが問題なのでございます」
「必殺! マグネティズム・ボンバー!!」
# あれはアイアンじゃなくてロッドか…。
本家記事 New Superconductor Found "Immune To Magnetism"
「新発見の超伝導体は、強い磁場の中でもバリバリ平気!」ということらしい。これはすごい。
超伝導体といえば、古くから研究されている金属系、80年代に高温超伝導として大フィーバーを巻き起こした銅酸化物系、室温超伝導が可能になるかもと研究が続いている有機物質系などがあるが、先ごろ、新たに鉄系の超伝導物質が発見されたというニュースがあった。
例えば、このあたりが詳しい。JSTプレスリリース 新系統(鉄イオンを含む層状化合物)の高温超伝導物質を発見
超伝導体は、ロスの少ない送電網や強力なモーター・磁石などに応用が期待されているが、超伝導状態は磁場、電流密度、温度といった条件に左右され、非常に強い磁場の下では大電流が流せない、転移温度が低いという制約があった。
今回の研究で新しい鉄系の超伝導体を測定したところ、強い磁場の下でも超伝導状態が破れにくい性質を持つ、ということが判ったようだ。プレプリント(pdf)によると、10Kで45テスラの磁場をかけても超伝導状態を維持とある。
日本語の記事も見つけた。
鉄系の化合物で超伝導性を確認、強力なMRIやモーターに応用可能か (2008/06/03)
米Florida State UniversityのNational High Magnetic Field Laboratoryは米Oak Ridge National Laboratoryと共同で、世界最強の磁場を用いて試験を行った。今回の新材料は45T(テスラ)という強い磁場でも超伝導性を失わなかった。磁場に対してこれだけ強い超伝導材料はほかになく、Fe系材料は、従来は不可能だった強い磁場生成、例えば強力なMRIやモーターなどに利用できる可能性がある。
磁場に強い超伝導体といえば、素人としては、やはりマグレブのリニアモーターカーへの応用を真っ先に連想してしまう。他にも多数の応用分野があるだろうけど。
渦糸ピン止めとは別? (スコア:3, 興味深い)
今のところ多く使われているNb系やTiSn系等の超伝導材料だと, 結晶粒界なんかで渦糸がピン止めされて磁場の侵入を防ぐというモデルらしいんですが, 今回の物みたいに磁場強度がジャンプUPしちゃうと別のモデルが必要になるんでしょうか?
Re:渦糸ピン止めとは別? (スコア:3, 参考になる)
維持が困難になる為、表面で磁場を喰い止めないといかんと云うのが私の理解です。
自動車で例えると、真っ直ぐ順調に高速道路(超伝導物質内)を走ってるはずが
強い横風(Hall effect)で隣の車線に吸い寄せられる状態でしょうか。こんなんでは
快適(抵抗0)に走れないので風防が欲しいところです。
そういう訳で、表面付近で喰い止めないといかんのは変わりないはずです。
# ですよね?
Re:渦糸ピン止めとは別? (スコア:1)
磁場中で超伝導体を貫く量子磁束が無くなると超伝導が壊れる、ってのは変わってないよね
最近の動向は知らないから詳しい人、教えて
Re:渦糸ピン止めとは別? (スコア:2)
磁束が入り込んだ状態を作るからです。
このとき入り込んだ磁束の周りには磁場の侵入を食い止める電流が流れていて、電荷を運ぶ電
流は磁場の侵入なんて知らないふりして流れていきます。
だから、一つ上の「横風うんぬん」というコメントは的外れ。
問題はこの磁束が超伝導体内で動くときに熱を生じるということです。
この発熱が超伝導を壊したりするので、強い磁場でも大丈夫な超伝導を実現したければ、できる
だけ磁束が動かないようにわざと磁束の通り道みたいなものを作ったりします。
これが「ピン止め」。
しかし一方で他の人のコメントにあるように、上部臨界磁場そのものは物質固有の様々なパラメ
ータで決まるものです。
ピン止めも確かに重要ですが、それは例えれば山の頂に鉄塔を建てるようなもの。
まずは富士山やチョモランマを発見することが肝心です。
マイナス(余計なもの-1)効果 (スコア:1)
> 電荷を運ぶ電流は磁場の侵入なんて知らないふりして流れていきます。
磁場の影響を受けない必要があるのはホール効果による影響を受けないようにする為で、
超伝導状態にあるところはマイスナー効果 [wikipedia.org]で説明される磁場0となります。
ピン止めは部分的に磁場0にしている状態に過ぎません。
> だから、一つ上の「横風うんぬん」というコメントは的外れ
ピン止め(マイスナー効果発揮)した結果、車(電子)の通り道は横風(ホール効果)を
気にせずに快適に走れるんですから、的は外れていないと思います。
# が、専門用語を極力使わずに説明しようとしたマイナス効果で誤解が発生。
ところで大本の質問者への回答は、元論文では
>> either very weak pinning or an imperfectly connected superconducting state
と書かれているくらいで、ピン止めかどうかは現在は分かっていませんね。
Re:マイナス(余計なもの-1)効果 (スコア:1)
ものでもありませんが。
>磁場の影響を受けない必要があるのはホール効果による影響を受けないようにする為
というほどに殊更、ホール効果の影響を問題視されるのは何故でしょうか?
御指摘の通り、超伝導体内はマイスナー効果により磁場がゼロになります。
結果的に(超伝導体内の大部分では)ホール効果の影響を受けないことになります。
ただ、これは結果であり、超伝導発現の機構とは何ら関係ありません。
ところでマイスナー状態にあるとき、超伝導体表面には磁場を外部に押し出すため
の超伝導電流が流れていて、この侵入深さと呼ばれる領域では超伝導電流も磁場を
感じていることはご存知でしたか?
つまり、測定した人がいるかどうか知りませんが、ホール効果の影響を受けている
ことになります。
それと磁束混合状態で超伝導体内部に取り込まれている磁束は単にピン止めという
「特別な」状態を作っているわけではありません。
磁束も含めたトータルで超伝導状態を作っているのです。
磁束を取り込んだエネルギーの損を補えるだけ超伝導状態でいることのエネルギー
の得が大きいため超伝導でいられるのです。
#う〜ん、言葉での説明は難しいです。
Re:渦糸ピン止めとは別? (スコア:1)
銅酸化物系での上部臨界磁場にはもっと大きいものがいくつもあるので、
特に問題はないかと。
Re:渦糸ピン止めとは別? (スコア:1)
てのが大分前に読んだことだが、その後どうなってるかな?
the.ACount
高温超伝導=磁場に強い (スコア:2, 参考になる)
高い温度で超伝導になる
↓
それだけ超伝導凝集エネルギーが大きい
↓
ちょっとやそっとの磁場でへこたれない
↓
ウマー
というわけです。
臨界磁場そのものの値で比較するなら、当然、銅酸化物超伝導の方が大きい。
実用化が見込めるかどうかは、ひとえに線材として加工が容易かどうかにかかっている
とも言えるでしょう。
あと、このオキシニクタイド超伝導は砒素を含んでいる、ということで実用化に二の足
を踏むところがあるかもしれません。
Re: (スコア:0, 荒らし)
馬?
これって、どういう意味ですか?
ぐぐれって言われるかもしれないけど、ぐぐってみたけど判らなかったんですよ…
Re:高温超伝導=磁場に強い (スコア:1)
「旨い」の感嘆表現です。「痛い」をイテーと言うような感じです。
この場合は味覚について言っているのではなく、「都合がよい。好ましい。」といった意味でしょう。
Re: (スコア:0)
(中略)
>ちょっとやそっとの磁場でへこたれない
まあ同系統ならそうですが、異なる物質群だとvfの違いだとか聞いてきますし、
特に上部臨界磁場なんかではそれこそいくつかの要素が効いてくるのでさすがにそれは
単純化しすぎではないかと。
MRIも忘れないでください (スコア:1)
クエンチが室内で起きるので窒息事故なんかも起きるから、超伝導状態の維持は
マグレブよりも重要なんじゃないかな?