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地球

TarZの日記: 「それからキセノンがどこに行ったかというと…実はまだ地球にいるのです」 6

日記 by TarZ

 地球上のキセノン(Xe)が何故か少ない。同じ貴ガスのクリプトン(Kr)と比較して、キセノンの地球での存在量は、隕石などから推定される太陽系でのXe/Kr存在比より1桁ほど少ない。

 この「キセノンパラドックス」については、先日の phasonさんの日記「 地球のXeはなぜ少ない?」で一つの説が紹介されている。

Nature The origin of the terrestrial noble-gas signature
(原始地球が形成されたとき、他の貴ガスに比べて岩石に溶け込みにくかったキセノンが優先的に宇宙に逃げたのではないか)

 上記の説では、地球でのキセノンは太陽系での存在比よりずっと稀少(大気中はもちろん地球内部にも少ない)ということになる。これに対して、「いや、実は地球内部にあるかもしれない」というのが以下の説。

SBU Geosciences Professor Predicts Stable Compounds of Oxygen and “Inert” Gas Xenon
Nature Stability of xenon oxides at high pressures

 ここでは、83~114GPaといった高圧下において、常圧では不安定なキセノン化合物(キセノンの酸化物やケイ酸塩)が安定になりそうという計算結果から、キセノンはマントル内に取り込まれているだろう、としている。(キセノンがマントルに取り込まれたままなので、地表付近では少ないように見えている。phasonさんの日記で挙げられているところの「地球のコアにXeが多量に溶けているのでは無いか?」というモデル)

※ キセノンのケイ酸塩ってのもすごいな、だって貴ガスの塩ですよ! …と思って xenon silicates で検索してみたらこんなのが。これは10年くらい前の報告か。J-GLOBAL 高圧高温でのキセノン珪酸塩に関する証拠 / Evidence for xenon silicates at high pressure and temperature. ←これは実験。今回の報告は計算による。

 この説の通りだとすれば、将来の宇宙船のイオン推進エンジンの推進剤については資源枯渇を心配しなくてよい。なにしろ、下部マントルあたりの深さまで掘りさえすれば、レアアースならぬレアガス資源であるキセノン鉱石(?)がザクザク出てくることになるのだから!
 え、技術的に難しい? この説通りだとしても、岩石内のXeは大気に含まれるよりはるかに低濃度? でもでも、シェールガス採掘だって経済的に成立するようになったじゃーん。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by manmos (29892) on 2012年11月14日 10時30分 (#2271849) 日記

    変なねーちゃんある日狂ってセックス乱交かぁ。若かったなぁ。

  • 希ガスの化学はここ3-40年で一気に進展しましたからね.
    XeF2とかAldrichで売ってるという.

    他にもキセノン酸だの,有機キセノン化合物だの続々報告されてますよね.
    ……まあ正直なところ,大部分には使い道がこれっぽっちも思い浮かばないのですが.

    30年ぐらい前の教科書とか見ると「希ガスは電子構造出来には配位子になれる(非共有電子対が有るので,金属の空の軌道に供与して配位結合を作れる)ように見えるが,安定性を考えれば実在するかは疑わしい」とか書かれていたのが,今では様々な錯体が実際に作られて分光で調べられていたりもします.凄いもんです.
    #単離は出来ず,低温の希ガスマトリクス中に埋め込まれていたり,
    #真空中での気相分光による研究だったりに限られてますが.

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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall

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