yasuokaの日記: Bitcoinにおける先物取引の危険性 9
『Bitcoinは計算量理論から見て「無限連鎖講」である』(日経ITpro)が、無事掲載された。この記事は、元々の私(安岡孝一)の意図としては、計算資源本位制とかいうかなり胡散くさいネタに対する反論として、一気に書き上げたものである。しかし、日経BP側がビビってしまったせいか、掲載までかなり時間がかかった上、あちこちカットされるハメになってしまった。カットされた中でも、以下の2段落は、私個人はものすごくもったいない気がするので、ここに晒して供養することにする。
BTCを手放すことに魅力を感じる人が、それでもBitcoinにとどまり続ける方法が、ないわけではない。たとえばBTCの先物取引(デリバティブ)である。BTCの価値が下落傾向にある時に、BTCを先売りし続けることができれば、BTCを手放すことに魅力を感じている人でも、Bitcoinからは逃げていかない。期日にはBTCを買い戻さなければいけないし、その期日には、また次の先売りを始めているからだ。しかし、BTCの先物取引は、現時点ではマーケットが小さすぎる上に、ICBITでも期日が月1回しかなく、大口の先売りを続けにくい構造になっている。
すでに計算量を投入してしまった人々は、どうしてもBitcoinを離れがたくなってしまっているために、逆説的に、BTCの先物取引が活発になる時代が、将来やってくる可能性はある。しかし、そのような時代に起こるA<1は、かなり悲惨な様相を呈する。Aβ<1とVi=0という条件により、Voは0に向かってどんどん減衰していく。それはBitcoinに投入される計算量が、最終的には0になりかねないということであり、「計算量の無限連鎖講」であるBitcoinの破綻を意味する。端的には、Bitcoinの参加者の半数以上がBTCを売りたがっているのだが、売り手の数が買い手の数をオーバーしているために、BTCの売りがなかなか成立せず、それでも皆んなBTCを売りたがる状態である。このような形での破綻が起こった際に、BTCの価値がどうなるのかは、まさにカオスであり、筆者には予測できない。
ただ、そもそもこの記事は、「Vo/Vi = A / 1-Aβ」が災いしたのか、かなり難解な記事だと受け止められているようだ。うーむ、まだまだ私も修行が足りない…。
分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
ビットコインを特徴づけるものには2つの要素があると理解しています。
1:「ビットコインの運営=ブロックチェーン:信頼できる管理者のいないネットワーク上で、信頼できるデータベースを運営する仕組み」
2:「ビットコインの発行=マイニング:計算力の競争により発行。発行量は4年に1度半減する」
記事を興味深く拝見させていた出来ましたが、ビットコインの中心的な価値である「ブロックチェーン」について触れておられなかったので、どのように評価されているかを伺いたく思います。
ビットコインの発行の仕組みについては、ボク自身も、「怪しい仕組みではある」と、当初から思っているのですが、「ブロックチェーンという決済データベースの運営」に非常に興味を持ってビットコインの動向を追いかけています。
今は、「ブロックチェーン型の決済システムを広めるには、今のビットコインの発行方式が正しいのかも知れない」とも思い始めております。将来、ビットコインに並ぶ、より公正な発行と分配のスキームを持った暗号通貨が生まれてきて、そちらに重心が移動していくことを個人的に祈っております。
Re:分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
あの、このエントリは、あくまでBitcoinの先物取引ネタなんですけど…。
ま、それでも、私(安岡孝一)が好きなデータ構造は、treeやdirected acyclic graphです。singly-linked listは、どうやっても処理時間がかかっちゃうので、あまり好きじゃありません。逆にmetagraphなんかには、恐怖を覚えます。けど、データ構造の好き嫌いってのは、あくまで個人的趣味に過ぎないような気もします。
Re:分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
お返事ありがとうございます。記事を読んだあと、ここのエントリを教えてくれた人がいたので、つい、ここで質問してしまいました。申し訳ありませんでした。
あと、ボクの言いたかったのは、「データ構造」の話ではないです。
>「信頼できる管理者のいないネットワーク上で、信頼できるデータベースを運営する仕組み」
の部分です。
ビットコインの一番評価されるべき点で、一番の価値だと思っているのが、
「特定の管理者のいないデータベースで、通貨を運営して、二重支払いが出来ない」
という部分で、これを実現したのがビットコインが最初だと理解しています。
Re:分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
はあ、そうなんですか。じゃあ、計算量理論屋の立場から言わせてもらえば、「指数関数で発散するような計算量使っていいなら、何だってできちゃうだろ。そんなのシステム設計とは言わないよ」ってのが正直なところです。その意味で、Bitcoinは糞システムだと、私(安岡孝一)個人は考えます。
Re:分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
計算量の点で、記事で気になったのは、
> 事実、難易度の変化は、最近1年で747倍、平均して38日と3時間で2倍、という途方もない状態になっている。
> この結果、1BTCを得るための計算量も、難易度と同じ指数関数で増大している。
の部分なんですが、この「計算量の増大」と、「計算のコストの増大」は一致していないんです。
2013年の2月頃に最初のASIC:マイニング専用チップを使った専用システムが出てき始めたことで、
計算のコスト(計算量に必要な機器と電力のコスト)が激減し始めたんです。
このASICの開発競争は今も盛んで、数ヶ月で時代遅れになる速度。
計算量の爆発が起きたのは、計算コストの爆縮が起きたのが原因です。最近また、ひと桁計算速度が上がり始めたらしいです。
なので、以下の文章は、事実とはだいぶ違います。
> Bitcoinに投入される計算量は、1年で747倍になった。仮にそれらがBTCの価値であるなら、
> BTCの価値は、1年で747倍になってしまう。1年で価値が747倍になるようなハイパーデフレ通貨など、
> 通貨としての破綻は目に見えている。
Re:分散型データベース・ブロックチェーンについて (スコア:2)
「計算資源本位制」に賛成するわけではありませんが、以下の部分が気になりました:
> Bitcoinを支えているのは、確かに計算量なのだが、それとBTCの価値とは何の関係もない。
> 計算量はBTCに化けたかもしれないが、BTCは計算量に化けないからだ。
「BTCは計算量に化ける」と思うんですが、以下の理屈ではダメですか?
マイニング専用のASIC機材などはBTCで直接支払うことが出来ますし、
BTCを時価で売って電気代などの経費を支払って、余りが出るように運営しているはずです。
そして、余ったBTCを手元に置いておいたら、BTCの経済圏の拡大に伴う価格の上昇するので、
より良い計算資源に置き換えて、新たな投資なしに計算量を増やしていくことも出来ていると思います。
マイニングしたBTCを数年間寝かせる余裕があると、価値は年間10倍のペースで上がっていますから、
設備投資も効率良く出来ているマイナーも少なくないのでは?と予想しているんですが。
計算量はBTCに化けたかもしれないが、BTCは計算量に化けないからだ (スコア:2)
ダメでしょう。
帰還器にたとえること (スコア:1)
帰還ループにたとえること (スコア:2)
あの、このエントリはあくまで、Bitcoinの先物取引ネタなのですけど…。
まあ、たとえ仮にBitcoinの取引量が一定になったとしても、Bitcoinに投入される計算量は絶対に一定にはなりえない、というのが私(安岡孝一)の主張です。元記事 [nikkeibp.co.jp]を良くお読みになった上、必要なら制御工学に関する入門書等も併せてお読み下さい。