yasuokaの日記: 第1種電気通信事業者のインターネット接続サービス 3
私(安岡孝一)の7月14日の日記に関して、「第1種電気通信事業者のインターネット接続サービスなのだから、パケットレベルでの同一性があるべき」との御意見をいただいた。気持ちはわからなくもないが、「第1種電気通信事業者」に関する法規定は2004年3月いっぱいで廃止されている(cf.『電気通信』No.685, pp.5-15)ので、現時点で「第1種電気通信事業者」を法的に議論するのは無理がある。また、インターネット接続サービスと「インターネットへの接続点までの間の通信を媒介する」役務とを、ゴチャゴチャに議論するのも、やはり無理がある。現時点での電気通信事業法施行規則第22条の2の2第1項の各号に規定された電気通信役務を見てみよう。
一 電話(アナログ電話用設備を用いて提供する音声伝送役務に限る。)及び総合デジタル通信サービスの役務
二 携帯電話及び携帯電話端末からのインターネット接続サービス(利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される端末系伝送路設備(その一端がブラウザを搭載した携帯電話端末と接続されるものに限る。)及び当該ブラウザを用いてインターネットへの接続を可能とする電気通信役務をいう。)の役務
三 PHS及びPHS端末からのインターネット接続サービス(利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される端末系伝送路設備(その一端がブラウザを搭載したPHS端末と接続されるものに限る。)及び当該ブラウザを用いてインターネットへの接続を可能とする電気通信役務をいう。)の役務
四 インターネットへの接続を可能とする役務(前二号に掲げるものを除く。)
五 アナログ信号伝送用の端末系伝送路設備にデジタル加入者回線アクセス多重化装置を接続してインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務
六 そのすべての区間に光信号伝送用の端末系伝送路設備を用いてインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務(共同住宅等内にVDSL設備その他の電気通信設備を用いるものを含む。)
七 有線テレビジョン放送施設(放送法第二条第三号に規定する一般放送のうち、同条第十八号に規定するテレビジョン放送を行うための有線電気通信設備(再放送を行うための受信空中線その他放送の受信に必要な設備を含む。)及びこれに接続される受信設備をいう。以下同じ。)の線路と同一の線路を使用する電気通信設備を用いてインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務(前号に掲げる役務であるものを除く。)
八 利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される端末系伝送路設備(その一端が移動端末設備と接続されるものに限る。)を用いてインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務であつて、無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第四十九条の二十八又は第四十九条の二十九で定める条件に適合する無線設備を用いて提供されるもの
九 利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される端末系伝送路設備(その一端が移動端末設備と接続されるものに限る。)又は電気通信事業の用に供する端末設備(移動端末設備との通信を行うものに限る。)を用いてインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務(第二号、第三号及び前号に掲げるものを除く。)
十 その全部又は一部が無線設備(固定して使用される無線局に係るものに限る。以下この号において同じ。)により構成される端末系伝送路設備(その一部が無線設備により構成される場合は利用者の電気通信設備(電気通信事業者が設置する電気通信設備であつて、共同住宅等内に設置されるものを含む。)と接続される一端が無線であるものに限る。)を用いてインターネットへの接続点までの間の通信を媒介する役務
十一 端末系伝送路設備においてインターネットプロトコルを用いて音声伝送を行うことにより提供する電話の役務
これらの役務のうち、「インターネットへの接続点までの間の通信を媒介する」役務については、パケットレベルでの同一性を期待していいし、そうあるべきだろうと私自身も思う。一方、それ以外の役務に関しては、「符号、音響又は影像」が電気通信できるべきということは期待できるが、それ以上は期待薄だと思われる。「インターネットへの接続点までの間の通信を媒介する」役務と「インターネットへの接続を可能とする」役務とが、それぞれ異なるものだからこそ、総務省令としてわざわざ異なる書きぶりにしてあるのだ。つまり、インターネット接続サービスだからと言って、パケットレベルでの同一性が期待できないのは、それが「インターネットへの接続を可能とする」役務に過ぎないからであって、「インターネットへの接続点までの間の通信を媒介する」役務ではないからだ。
もちろん、この書きぶりが「いい」とは私自身も考えていないし、機会あらば改正したいのが本音だ。実際、電気通信事業法の改正が5月15日に国会を通ったので、今後は電気通信事業法施行規則の改正も議論しなきゃいけない。施行規則の改正に、「通信の最適化」問題を解消する仕掛けを、さて、もぐりこませられるのかしら?
質問です (スコア:1)
>これらの役務のうち、「インターネットへの接続点までの間の通信を媒介する」役務については、パケットレベルでの同一性を期待していいし、そうあるべきだろうと私自身も思う。
ここがよくわからなかったのですが、接続点がIXの事ならば改ざんが端末からIXまでの間で行われている場合は、やはりダメということにならないのでしょうか。それとも、端末から事業者の入り口が接続点という意味なのでしょうか。
インターネットへの接続点 (スコア:2)
この第22条の2の2が施行された2004年4月時点であれば、「インターネットへの接続点」ってのは、JPIXとの「接続点」を意味していただろうと思うのです。ですが、現在、その解釈でOKなのかどうかは、正直ちょっとわからないのです。まあ、ネットワークの現実的な態様に合わせて、省令もちゃんと改正していけばよかったんでしょうけど…。
Re:インターネットへの接続点 (スコア:1)
*1: *A 及び *B を言う
*A: 「利用者の電気通信設備と接続される一端が無線により構成される」端末系伝送路設備 *2
*B: 当該ブラウザを用いてインターネットへの接続を可能とする電気通信役務
*2: その一端がブラウザを搭載した携帯電話端末と接続されるものに限る。
この、*B の部分は、スマホには該当しないのではという風にも感じます。
ブラウザを用いずに様々な通信アプリがインターネットに接続できるわけですし。
すると、スマホやテザリングは、九 に該当するのではないかという気もします…。
コメント欄を汚して申し訳ございません。