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日記

ChaldeaGeckoの日記: J.G.バラード「太陽の帝国」番外編

日記 by ChaldeaGecko

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意味にアタリをつけてそれを構文で確認する人が詰むように、この手の文章は狙い撃ちしてますの。

と書きましたが、これは先入観を持って小説を読む人、と言い換えられますわ。実際、ほとんどすべての人がこうじゃないかしら。美少女♡だって、いちいちこんな面倒くさい読みかたばかりではありませんわ。先入観を持って小説を読むと、自分の考えや価値観に沿ったものを本に見つけることができて、快感だし、感動したりしますの。娯楽小説の大半はそんな小説ですわ。純文学はというと、やっぱり同じですの。純文学は、せまい価値観のサークルだけで読まれる娯楽小説といえばほぼアタリですわ。せまいだけに先鋭化したところはあるかもしれませんの。ノーベル賞級作品もこれ、つまり娯楽作品として「読まれて」いますわ。ノーベルとラノベの違いは、だれが読むかだけで、どう読まれているかは同じですわ。どんなに社会派でリベラルなことが書いてあっても、社会派でリベラルなことに共感して楽しむだけの、娯楽。どんなに「芸術的」な本でも、それに気持ちよくなるだけの、娯楽。本から得るとこがあったと思って気持ちよくなる、娯楽ですわ。
それなら娯楽でない小説や読みかたがあるのか?というのはもっともな問いですが、その答えはズバリ、読者を騙す小説ですわ。読者は先入観を持ってしまうと騙されるんだから、先入観を捨てて読むしかないんですの。考えて苦労して読んだ結果、わかったことが、自分の価値観に沿うことはありますわ。でもそれは「なにがあるのか見当もつかなかったけど、あった」であって、「あるだろうと思っていたら、やっぱりあった」とは違いますの。なぜ違うかはわからないけど、とりあえず、考えて読んだほうが圧倒的に喜びが大きい、とは言えますわ。たぶん脳みその別の回路を使うのかしら。あくまでたとえですけど、科学などの通俗書を読んで楽しむのは娯楽だけど、本格的な教科書で学び、マスターしたときの喜びは、それとは比較にもなりませんわよね。小説だって、頭を使っている時間は相当なものになるから、教科書に引けをとりませんわ。それ以外にも、難しいパズルにも似てますわね。
読者をだます小説、トリック小説の場合には、理解した、腑に落ちた、パズルが解けたこと自体の喜びがありますの。トリックが解ければ、隠されていた小説の事実を読者が知ることになりますけど、どういうわけか、それはやたらと強烈なイメージですの。「太陽の帝国」の最初の文なら、ウィキペディアだけどいろいろ調べ物をしたり、外灘や葬送桟橋の写真も見たりして、苦労して読んだのでイメージがかなり頭に入りましたが、この街が戦場になったんだなあという思いが、つづく段落を読んでいても離れず、まさに目に浮かぶといった感じでしたわ。これがアニメだと、女の子が100倍くらいかわいく見えますのよ。

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「毎々お世話になっております。仕様書を頂きたく。」「拝承」 -- ある会社の日常

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