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日記

ChaldeaGeckoの日記: 「奴隷道徳」の持ち主の学者には、シェイクスピアは理解できないのです 2

日記 by ChaldeaGecko

量が増えて成型しきれなくなったので、リンクだけ張ります。
https://note.com/heelindog/n/n444c3c1a1e27A

コメントが制限されているのでこっちに書きます。
https://twitter.com/jenaiassez/status/1400315806622261248

私の見解では、耳朶と書いてあればそれは耳朶であり、違う違う下半身の方にある何かのことだと勘繰るのは読者の自由だが(そしてまあ、ポルノ性を求める人にははぁはぁしちゃうくらい楽しいのだろう)、書き手がそう読み取らせようとした、という異論の余地のない証拠となる記述を

「私の見解では」ではじめていますが、この人の見解についてはどうこう言えるものではありません。わたしの見解もおなじだけ尊重してほしいものですが、べつに要求はしません。
「書き手がそう読み取らせようとした」は見過ごせません。「書き手はエッチなダジャレを意図していなかった」という、カウンターの証拠が必要だからです。しかし一般にそれは不可能なことなので、これも要求はしません。
しかし事実は「偶然エッチなダジャレに読める」と「作者の仕込んだダジャレである」の二つに一つなので、エッチに読める箇所をたくさん挙げれば、後者の蓋然性が高まるでしょう。
で、いままでわたしはいろんな作家についてたくさん書いてきたし、時間が許せばあと100倍でも1000倍でも書けます(だれがダジャレ作家なのかのめぼしがついているということです)。この人の目に入っていないかもしれませんが、もう十分な証拠だと言えるのではないでしょうか。

あと、とても重要なことですが、技法としてのダジャレ・多義性と、エッチはわけて考えるべきです。実際のところは、なぜか「エッチなダジャレ」のほうがずっと多いのですが、笑いすぎてあんまりはぁはぁしちゃえないのが残念なところです。一緒くたにして煽っておいてなんですが、この区別ができないのはどうかと思います。「エッチ」が大きくバイアスして認知をゆがめているのでしょうが、すくなくとも論理的思考ではないですね。

分量的にさみしくなったので、チラ見せします。

いわゆるハムレットの第一独白ですが

HAMLET.
O that this too too solid flesh would melt,
Thaw, and resolve itself into a dew!
Or that the Everlasting had not fix’d
His canon ’gainst self-slaughter. O God! O God!

ハムレット ああ、このあまりにも硬い肉体が
崩れ溶けて露と消えてはくれぬものか!
せめて自殺を罪として禁じたもう
神の掟がなければ。ああ、どうすればいい!
(小田島雄志訳)

canon教会法cannon大砲のダジャレをやるアホは初めて見ました。

念のために解説すると、the Everlasting(=God)がhis canonをagainst self-slaughterにfixしたのではく、his(=Hamlet's) cannon against self-slaughterをeverlastingにfix(=make firm)したままだということです。アホは自殺なぞ考えないのです。このorも「あるいは」「すなわち」で多義的なのです。

"The fool doth think he is wise, but the wise man knows himself to be a fool."

こちらは『お気に召すまま(As You Like It)』からですが、foolはダジャレ野郎のことです。『ハムレット』に

Or if thou wilt needs marry, marry a fool; for wise men know well enough what monsters you make of them.

どうしても結婚せねばならぬというなら、阿呆と結婚するがいい。利口な男なら、女房をもてば知らぬは亭主ばかりなりとなることを心得ているはずだ。(小田島雄志訳)

foolはハムレットのことですが、ダジャレ野郎は美女のオフィーリアと結婚できるのです!はぁはぁ!
what monsters you make of themは

  • ハムレットが罪人なので、子供を作るとmonsterになる
  • fool=wise manのポケットモンスター

の二通りの意味があります。オフィーリアは浮気するような女ではないのです。

こういったことを「偶然そう解釈できる」か「作者が意図したものである」か、どちらにとらえるかの問題です。この戯曲ではハムレット像が正反対になるので、意図したものであることはあきらかに思えます。「ポルノ」も楽しいですが、「だまし」はもっと楽しいのです。

noteの記事に書きましたが、シェイクスピアの「it」はラカンの「ce」とおなじで、特殊な意味があります。直観の「ひらめき」あるいは「イク」です。As You Like Itもそういう意味です。

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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike

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