TarZの日記: 「○○の悪い例→つまり、○○そのものを廃止する必要がある」メソッド 6
日記 by
TarZ
悪い例を挙げるだけで、メリットデメリットの検討不要・論拠不要ならいくらでも応用できそうだ。
- ○○でシステム障害、混乱が起きる
→「プログラムのバグをなくすことは不可能なことに由来しているわけで…ITが何ら人類の進歩にも福祉にも貢献しなくなってるのではないかと思えてならない」 - 教師や学生の起こした事件
→「現行の学校教育制度を廃止しないと是正は不可能なところまできてしまっている」 - 警察官の不祥事
→「警察を廃止する必要があると思います。小手先の改善でどうにかなるような甘い状況ではない」
便利。…なのはいいけど、ちょっと強力すぎる。なるべく私は使わないように心がけたい。
量を考えないメソッド (スコア:3, 興味深い)
「系統的バイアス」というものが非専門家な人達には存在します。それも実にさまざまなジャンルに渡って。
で、その中で非常によく観察されるのが、この手の「量を考えない」考え方です。
- 殺虫剤を始めとする科学的毒物は、どれだけの量を浴びるかではなく、そもそも浴びるか浴びないかが問題だ
- 放射線は…
- 電磁波は…
他にも
- 税金は常に高すぎる / 公務員は常に税金を無駄遣いしすぎる
- マイノリティに対する/女性に対する 社会的便宜が図られすぎている
- 輸入は常に多すぎる/輸出は常に少なすぎる
- 子供は常に勉強をしなさすぎる / 仕事は常にハードすぎる
- 自分の旦那は回りに比べて常に出世が遅すぎる
- 自分が太っている気がしてならない(特に女性)
等もこれに類するものです。
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なんで多くの人がそうなるのかというと、
1) 合理的な定量的分析を理解するためのコスト
2) 非合理的な定性的分析を理解するためのコストと、その結果が間違っているための払うペナルティ
3) そもそも定量的にも定性的にも理解しないために払うペナルティ
の3つを比較した場合に、2番が最も小さい… かのように見える のが問題なようです。
もちろん、比較の際に使われる分析や根拠もやはり同じ原理が働くので、間違い方はどんどん累積していく…。
これを 合理的な非合理性 と言うのだそうです。
fjの教祖様
Re:量を考えないメソッド (スコア:2)
# okkyさんのコメントのほうが、日記そのものよりいっぱいはてブ [hatena.ne.jp]されている!
# くっ、くやしい…メラメラ。(嫉妬の炎炎炎)
興味深いコメントありがとうございます。「合理的な非合理性」という言葉が少々見慣れなかったので検索してみたのですが、以前の日記 [srad.jp]で紹介されていた書籍「選挙の経済学」に載っている話題でしょうか。
内容はどうでしたでしょう? 面白そうなら読んでみたいのですが。
Re:量を考えないメソッド (スコア:2, 参考になる)
私自身にはかなり面白かったです。合理的な非合理性もこの本からです。というかこの本の主張点の一つ。
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この本はかなり古典的な仮説である『集計の奇跡』に対する疑問から始まります。
ある問題に対する施策 A について賛成・反対を投票する、とします。投票者は1000万人のこの問題に関して無知な人と、1000人の専門家からなる、とします。この施策Aの有効性については専門家は全員同じ意見だ、とします。さらに、無知な人たちは正解が判らないので、賛成・反対をランダムに投票する とします。
すると、無知な人たちは賛成・反対それぞれについておおよそ 500万票づつ投票します。専門家は一方に偏って投票します(仮に反対票だとしましょう)。
すると賛成票 500万票。反対票 500万1000票になり、結果として 正しい結論 が採択されます。
A の内容によって、民衆の中の誰が専門家で誰が無知なのかは変わりますが、どのようなテーマであっても無知な人の票はランダムだとするならば、集計結果は専門家の意見をストレートに反映し、結果として投票選択結果は常に優れたものになる…というのが 集計の奇跡。
この集計の奇跡は、合理的無知という状態を正当化します。つまり、あるテーマについて投票しろ、と言われた場合に そのテーマについて調査し、理解するのにかかるコスト が高いとします。専門家ではないので、投票しろと言われてから勉強するしかない。この場合に、非専門家は そのようなコストをかける必要はない というのが合理的無知です。なぜなら投票は集計の奇跡を起こすからです。どんなテーマであっても、あなたが得意な(すでに知識を得るためのコストを払った)物については専門家として投票し、そうでなければサイコロのように投票すれば、投票結果は正しくなる。故に、民主主義における参加コストは非常に低い、と。
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でも、おかしいだろう、と話は続きます。非専門家がサイコロのように振舞うのは、非専門家の投票が 完全に中立である 場合に限られます。じゃぁ、中立じゃない場合は? しかも専門家の結論と逆方向に偏っている場合は???! もちろん集計の奇跡は、非専門家の偏見によって打ち消されます。
非専門家が中立じゃない場合…つまりバイアスがかかっている場合ってあるんだろうか? というのが次に続きます。作者は経済学者なので、「景気政策」に関する意識調査とかそういうのをメインに証拠を積み上げていきます。ここで説明される偏向バイアスに関しては、ポール・クルーグマンの本 [geocities.jp] をある程度事前に読んでいたので私には普通に感じられました。いかに、普通の人が信じている 景気対策 が根も葉もない、役に立たないどころか景気を悪化させるようなものにすぎないか… という事を提示しながら、いかにこの偏向バイアスがたくさん見つかるか、示していきます。
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で、当然そうなると必要になるのが 「なぜ、偏向バイアスを持つのか」「どうしてそんな状態でいられるのか」についての合理的説明です。合理的な非合理性 はここで著者がメインに推している考え方です。偏向バイアスの原因に関する説は他にもいくつかあるのですが、それらと比べてもこの説明は結構良いよ、と言うのが続きます…。
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というわけで、非常に面白かった。 8/30 の投票日の前までに是非、読んでおきたい一冊 の今のところの一押です。
fjの教祖様
Re:量を考えないメソッド (スコア:1)
>無知な人たちは正解が判らないので、賛成・反対をランダムに投票する とします。
うん、知っている人だと完全完璧だという馬鹿げた前提なんですよね。
>投票しろと言われてから勉強するしかない
投票権は日本だと普通選挙からあるわけです。
それ以前に勉強していないという前提が馬鹿ですね。
ということは、、この理論を無限拡張すると、、 (スコア:1)
なんて発想すらでてくるのでしょうか?
。。ハルマゲドン思想のカルト宗教はもうもってるな。。。。。。 (-.-)...
Re:ということは、、この理論を無限拡張すると、、 (スコア:2)
いやあ、ちょっと分野は別ですが、エコエコアザラクな人の中でとくにぶっ飛んじゃっている人(目的と手段を見失っている人)は、真顔でそういうこと言う人がいますからね。
この人はどうやってそれを実現するつもりなんだろう、などと考え出すと、もうガクガクブルブルなのです。