とある仕事の話。ある程度時間がたっているので、自分の記憶違いなどがあるかもしれないが、相手先などは伏せるので、読む人は「こんなことがあったのか」くらいに思ってほしい。
最初は、とあるメーカーから出されていた基板が生産停止になったため、その代替品を作ってほしいという要求だった。
その基板は、あるICをメインとして、外部からの信号に従って特定の動作をするものだ。特に用途は特定していないもので、そのメインとなるICの機能を使っただけの基板と思ってよい。また、使用環境の制限などもないので、常温の室内で使われるものと思われた。
ところが、開発の段になり、外部信号の条件と、その時の動作についての資料が先方から出てこなかった。なんどか仕様を要求したが無いとのことなので、メインICの動作は知っていたので、それから類推し、こちらで仕様を作って先方に提示し、その仕様を基に開発することで同意した。
ところが、先方から「バグがある」と報告が出てきた。こちらから提示した仕様に合わせてテストし、それにのっとっているのを確認したのだが、先方が言うには「こちらのテストとは違う動きをする」とのこと…あの、先方さん、自分の方には仕様が無かったんじゃないんですか?
こちらからは仕様を提出しそれに従っているので「それはバグではない」と反論。「動作が違うのならば仕様変更に当たる」と抗議した。しかし要領を得ない。
最後には、「じゃあ、そちらがテストしているというやり方をこちらに提示してください。それを基に仕様を作り直してプログラムを作り直しますから」ということになった。当然仕様変更である。この費用については営業の方のことなので、自分はどうなったかは知らない。
結局、そのテスト内容に合うように物を作り、無事納品したかと思うと、また「バグが出ました」という。なんでも、特定の状況で電源を立ち上げるとまともに動かないらしい。ならば電源の入れ方を直せばいいのではないか、と聞くと、実は、
「北海道の屋外で使用している」
という、これまたそれまで聞いたことのない話が出てきた。
もうこちらからは「先に言えよっ!!!!!!!」としか言いようがない。当然これも仕様変更だ。そんな条件で使うのならば、その条件に見合ったやり方で設計するしかない。
で、変更して納品してことは終わるのだが、この間の交渉の間に、先方から「じゃあ、うちがすべて悪いんですか」と憮然とした表情で発言があったそうだ。その通りである。こちらは示されていない条件や動作仕様を見通す超能力など持っていないのだから。