成育医療センターのプレスリリースには,「医師向けの教科書などに掲載されている月経や妊娠に関する基礎的情報は、1950年代の米国でのデータを参照しています。また、米国の調査は研究対象者数が650人(3万月経周期)と少なく正確性に疑問があり(…中略…)経験的な医学知識として、10代の女性では月経周期が不安定であること、閉経年齢が近づくと月経周期が長くなることが知られていましたが、20代、30代における月経周期が一定なのか変化するのかはよく分かっていませんでした」と書かれています。
しかし,生物人口学や生殖内分泌学分野では基本文献と言って良い,Wood (1994) Dynamics of Human Reproduction, Aldyne de Gruyterというテキストの第4章,p.133-134には,ヒトの月経周期についての研究では常に,年齢が周期の長さと関連する主な要因であることはわかっていたし,米国女性2702人を平均9.6年間フォローアップした研究(オリジナルはTreloar et al., 1967)で,実年齢よりも婦人科的年齢(20歳未満では初経からの経過年,40代では閉経までの年数)との関連が明らかなこと,20代から40代に掛けて緩やかに短縮していくこと,閉経前の3~4年は再び延長することがわかると書かれています。図4.30を見ても,20歳から40歳の間は短縮していき,その後延長していく傾向は明らかです。そういう意味では,今回の知見は,現代の日本人の大標本データではありますが,従来からわかっていたことが確認されただけだとも考えられます。