mujiの日記： 三月大歌舞伎

そりゃまあ確かに昨年末の南座顔見世でよっつねを1度しか観られなかったのは残念なんてもんじゃなかったし今後いつお呼びがかかるか現状の立ち位置なら判ったもんじゃないしましてやお江戸で観られるなんてほぼあり得ないと地団駄踏んでいた訳だけど。
だからとてわずか3か月でしかも歌舞伎座で、って、いや、そこまですぐ見せてもらわなくてもよかったんですよ？←

ということで巷では何で熊谷陣屋ばっかやってるんだという声も聞こえる二部。
だよね、南座リヴェンジったってライトな歌舞伎ファンならそこまでの需要はないよね。
まあその辺は興行側と役者側との利害の一致なんだろうけど。

写真入りになったら買うつもりでとりあえず聞き書きのところだけさくっと目を通した筋書、ああ、やっぱりよっつねも松嶋屋から教わってたんだ。今回は改めて初役のつもりで教わる、とある。
だよねえ、あんなにあちこち反応しまくるよっつねってなかなかいないもんね。御大将は何事にも動ぜず泰然としてこその御大将、であるならば明らかに異質のよっつね。
とはいえ再演の義経、南座ほどの顔色の変え方ではなかったかな。弥陀六見て「！」となるのも「…？」程度だったし、熊谷の僧形見て「！！！」だったのが「……」だったし。いやでも僧形の頭だけ見て悟っちゃうのは早いんじゃないかと。兜で蒸れるから僧形にしていた武将はいなくはなかった訳で、現に相模は墨染の衣を見て狼狽えたんだし。
首実検、軍扇を開くときの仕草が息子と違うのは葵太夫が指摘していたところだが(というか「隼人はこうだったが私はこうやります」と打ち合わせたという話)、持つ手をすとん、と滑らせたところに空二が入るって、うん誰かで観たことあったなあ、と思ってたけど、松嶋屋以外でもいたかな。で、首を見る前に、視線を大きく上から降ろす感じで、軍扇の上から熊谷の様子を見ながら目線を扇骨の隙間にやる。
南座のときに首ばっか見てるのは解釈間違ってると見巧者様()に叩かれてたけど、まあそこまで首「ばっか」見てるって感じでもなかったかな。熊谷の様子は伺ってる風情。
相違ない、で、熊谷が全身の力を抜いてひとりの父親に還り始めるときの、
由縁の人もありつらん、見せて名残を惜しませよ
は、南座のときから勿論印象的だったけど、これがまた甲と呂との行き来が絶妙でね。ここの台詞回しは1か月間是非保ってもらいたいもの。
そしてそういい渡してから遠寄せが聞こえるまでずっと目を伏せたままの義経。
相模に首を手渡して、自分の居所に戻ってから相模のクドキが終わるまで目を伏せたままの熊谷。
そうか、ここでは2人とも景色になってたのか…他の熊谷役者だとここまではしないだろう。松嶋屋の世界だなあ。

で、今日はよっつねが肝心のところでおもいくそやらかしたので観ながら内心熊谷の如く頭抱えてたというね！orz
なので弥陀六は自分から宗清と名乗っていたという。つか述懐のところでいってるしな。
　#もういつまで経っても「そういうところだぞ」なんだよなあああああorz
　#幕閉まってから弥陀六に制札で頭コツンくらいされてたんじゃなかろうか←
でもって「爺よ」なしだしーーーorzうわーんだから南座で1回しかよっつね観られなかったのはホントにもーーーーーorz

花道の熊谷に首を見せるとき、ギリギリまで首桶の蓋したまま、というのも松嶋屋のやり方だろうね。南座で観たとき、あれ確か梅玉は最初から首出して脇に抱えてたよね、なんて思ってて、実際確認したらそうだったし。勿論今回もそうで、蓋を取らせて熊谷を呼び止めて、一瞬だけ熊谷と目線を合わせてから顔を背ける、その目線を合わせたときの表情が泣き出さんばかりでね。ああこれ、劇評家によっては熊谷に同情しすぎといいそうだな…顔の背け方は南座のときよりも更に奥へ向けてたような。
　#この松竹チャンネルの南座二部ダイジェスト、その横顔を5秒近く抜いてくれてて感涙にむせんだというね←
　#呼び止めのコリャ、がこれまたせつない……
幕が閉まるときにそっと首を抱えて控えめに泣き上げるのもそのまま。泣き上げの頃合がこれまた絶妙で、これ舞台写真として残すのはかなり厳しかろうけど(何せシャッター切るタイミングが限られる)残してもらいたいねぇ……

考えてみると、波野・小川一族の人が、遠戚とはいえ義経も熊谷も松嶋屋のやり方を踏襲するというのもなかなか、ねぇ。

直侍、舞台上での飲食はどうなんだと思ってたが、先月のお六の一役で久太が強飯喰ってたところから解禁にした模様なんで、ってアレか久太はいわば毒味役だったのか？w
蕎麦屋の亭主は橘太郎の名前が出ていたがおかみさんは誰かなと思ったらママだった。長ネギ刻んでた。
この芝居も次世代は誰が手がけてくれるんだろうねぇ…ほらそうやって考えてると松江侯回ってくる機会がもうないってことになっちゃうんだよう(誰が

(ひとまず、なのか？