パスワードを忘れた? アカウント作成
196746 journal

y_tambeの日記: Yahooニュースのコメントで、狂犬病についての理解が乏しい件 1

日記 by y_tambe
【中国】エイズ発症3割増、死亡者数もトップ—死亡率では狂犬病1位

中国での狂犬病の発生件数について触れたコメントがいくつか見られ、その多くの人が「狂犬病の多さは中国の衛生管理の悪さやワクチン接種の不徹底によるもの」と認識してるようですが…この理解は正しくないし、そんな生易しい話ではありません。狂犬病に関して、世界的に見て日本がいかに恵まれた状況か、ということをまず理解して欲しい。


IDWR:感染症の話 狂犬病

「狂犬病」という名前から誤解されがちですが、狂犬病はイヌだけの病気ではなく、イヌ・ネコ・アライグマ・キツネその他の(いわゆる食肉目の)動物や、コウモリなどの野生動物が主な感染源になるものです(いわゆる「温血動物」には感染しうると言われる)。世界的に見ると、オーストラリア、イギリス、日本、台湾、ハワイなどの島国ではほぼ根絶されたと言われてますが、それ以外の、いわゆる「大陸」部では依然発生が多いです…というのは、野生動物が宿主になりうるからです。

日本では幸い、イヌ以外の野生動物には蔓延していなかったので、飼っているイヌへの予防接種と、いわゆる「野犬」への対処によって根絶にほぼ成功しました。しかし、野生動物に蔓延してる地域では根絶は現実問題として不可能だと考えられてます。
その国の、狂犬病のキャリアになりうるすべての野生動物に狂犬病ワクチンを接種するか、あるいはキャリアになりうるすべての動物を処分するかしかないので。さらに大陸部では一国だけの対処では不完全で(野生動物は国境に縛られませんから)、(仮に国内で根絶が成功したとして)根絶後に、国外からの野生動物の侵入を防止するか、あるいは周辺の国すべてで根絶できないと意味がありません。

このような背景から微生物学の講義では、狂犬病は、しばしば「人類が初めて根絶に成功した」天然痘(痘瘡)と対比して語られます。どちらも有効なワクチンが存在するものですが、天然痘の場合、ヒト以外の宿主が自然界に存在しないことが、根絶の成功につながった理由になりますので。

なおIDWRのリンク先でも触れられてますが、「いくつかの島国では根絶された」と言われてきましたが、イギリスやオーストラリアでは野生のコウモリからの感染事例が報告されており、厳密な意味で「根絶され」ているとは言えないことが判ってきてます。また日本や台湾などでも、感染事例こそないものの、狂犬病の宿主になる可能性があるコウモリが生息していることが明らかになってます。
あと、確かヨーロッパのどこかだったと思いますが、狂犬病の経口ワクチンを開発して、肉などに混ぜて森林にばらまくことで、野生動物にワクチンを投与しようという構想もあったと記憶してます…まだ現実のものにはなってないと思いますが。
この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 北海道の港湾には大小のロシア船が頻繁に行き来するので,船上で飼われていた犬が無断上陸後そのまま置き去りにされることが多いようです。
    税関も完全に把握するのは難しいようなので,港ちかくの野良犬には気をつけなくてはいけない,という話を聞いたことがあります。
    伝染病の多くは今の日本では対岸の火事のようでいて『一衣帯水』なので油断できません。

typodupeerror

日本発のオープンソースソフトウェアは42件 -- ある官僚

読み込み中...