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アメリカ合衆国

yasuokaの日記: ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタントの考えるタイプライターの歴史 2

日記 by yasuoka

『キーボード配列 QWERTYの謎』の読者から、神田敏晶の「Apple『Touch Bar』にキーボードの歴史的進化を期待」(Yahoo!ニュース, 2016年12月31日)を読んでほしい、との連絡をいただいた。読んでみたのだが、タイプライターの歴史を全く理解していないらしく、ガセネタのオンパレードだった。正月早々ではあるのだが、気のついたところを、ざっと吊るし上げることにする。

1874年、最初のレミントン製タイプライターがQWERTY配列キーで発売された。クリストファー・レイサム・ショールズが発明したQWERTYをレミントンアームズが買い取り商品化した。

Remington Armsの設立は1888年なので、そもそも話が合わない。1874年当時だとE. Remington & Sonsのはずだが、QWERTYを買い取ったなどという話は、私(安岡孝一)自身は聞いたことがない。

QWERTY以前には印刷電信機として、テレタイプ端末があり、その頃にはピアノのメタファーのキーボードが採用されていたのだ。アルファベットは、モールス記号に変換され打鍵される。

『オフィス機器としてのQWERTYキーボード』にも書いたが、「Teletype」の登場は1919年なので話が合わない。というか、その画像に写っているのは、どう見ても「Hughes-Phelps Printing Telegraph」なので、独自の電気信号を用いた印刷電信機であり、そもそも「モールス記号」など使用しない。

1866年には電信海底ケーブルが敷設され、インターネットも電信同様の方法で接続されている。

私の記憶が確かなら、1850年代にはドーバー海峡に、モールス電信用の海底ケーブルが敷設されているはずだ。というか「インターネットも電信同様の方法」って、どういう意味?

QWERTY配列キーを搭載したレミントン製タイプライター

いや、その画像に写っているのは「Underwood No.3」だ。Remingtonじゃない。

1851年ニューヨークタイムズ(NYtimes)創刊、1889年ウォールストリートジャーナル(WSJ)創刊、日刊新聞ジャーナリズムによってビジネスは加速度を上げる。

えっと、QWERTY配列と、これらの新聞の創刊との間に、いったい何の関係があるのか、よくわからないんだけど?

IBM Model 41 電動タイプライター 1960年

その画像に写ってるのは、「IBM Executive Electric Typewriter Model C」。一方で

IBMのタイプライター広告 ミシンのソーイングの隠喩

この広告に載ってるのは「Model B」で別のモデル。よく見ればわかるとおり、フロントパネルの形状が全く違う。っていうか、「The Saving Touch!」のどこが「ソーイングの隠喩」なの?

それと同時に革新的だったのが、タイプライターの印字システムを印字アームから、ゴルフボール型の交換できるSelectricのフォントシステムへと進化させたことだ。

「IBM Selectric」は、さらにまた別のモデルなんだけど。それに「進化させた」も何も、初期の「Remington」や「Teletype」の印字システムは、そもそも「アーム」じゃなかったでしょ? 何の話してるの?

大ヒットしたオリベッティlettera 32は家庭にも普及。

いや、その画像に写ってるのは「Smith-Corona Coronet Super 12」。「Olivetti Lettera 32」は電動タイプライターじゃないのだから、「▶ POWER RETURN」なんてキーがあるわけがなく、これらを混同するのは正直どうかしてる。

つまるところ神田敏晶のこの記事は、全てのタイプライター画像に関して、ことごとく別のタイプライターのキャプションや説明が付いていて、全く話にならない。記事にタイプライターの話を書きたいのなら、ちゃんとタイプライターを見分けられるようになってから書くべきだろう。

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