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日記

akiraaniの日記: 3Dテレビがダメなわけ 10

日記 by akiraani

結論から先に言うと、家庭用のテレビを3Dテレビにしても、3Dコンテンツは普及しないと思う。
理由は簡単で、リビングルームのテレビに3D機能があっても使えないからだ。

3Dテレビが立体映像を出す仕組みは、基本的に視差を利用するタイプのものだ。右目と左目に少しずつ角度をずらした映像を見せることによって立体感を出す。右目と左目に赤と青のセロファンを張って、絵が飛び出して見えるという付録が子供向け雑誌などについているが、それと原理は同じだ。
3Dテレビにはいくつかタイプがあるが、それらの違いは、どうやって右目と左目に違う映像を見せるかという仕組みの違いでしかない。

実はこの時点で、3Dテレビはリビングのテレビには向かない。

3Dテレビの映像データは視差を折り込んだ二つの映像を合わせて表示するだけで、角度や距離での見え方の違いは再現してくれない。あくまでカメラ視点から見た場合限定の立体視だ。
このため、テレビから離れすぎ、近すぎ、斜めからといった「カメラの想定する位置」からずれた場所で見ると、立体の見え方と実際の角度に不整合が起こり、違和感を感じることになる。つまり、3D映像は、テレビの前の決まった位置に陣取ってまっすぐ見ないと正しく楽しめないのだ。
また、視差のずれを意識しているのはテレビ画面の中だけなので、それ以外の景色が視界に入るのもできるだけ避ける必要がある。

たとえば、家族みんなでバラエティー見る場合、家庭用テレビサイズのディスプレイでは3D映像が正しく見える位置に座れるのは一人だけ、残りの人間は微妙にブレが出る見にくい映像を見ることになる。また、どうしても画面の中に集中してみなければいけないので、いわゆる「ながら見」が難しくなる。
つまり、3D映像は一人で集中して番組を見る場合でないとまともに楽しめない、ということだ。これが、リビングのテレビに3Dテレビが向かない根本的な理由だ。

現在、家庭用テレビの3D表示方法は専用のメガネを装着するタイプと、映像に指向性を持たせる裸眼タイプの二種類がある。
まず、専用のメガネを使う場合、リビングルームで団欒しながら見る、などということが不可能なのは言うまでもないだろう。眼鏡を付けないで3D映像を見ると、激しいちらつきやぶれの入った映像になり、普通に見ることすら難しくなる。このため、眼鏡タイプは完全に一人で楽しみたいとき専用のアイテムになる。
では、裸眼タイプはどうかというと、これも結果として似たようなことになる。レンチキュラーレンズなどの特殊な表面加工を行って2方向に映像を出す仕組みなのだが、この方法だと特定の場所、つまり3D映像が正しく見れる位置以外から見たときにやはり二つの映像が変に重なったり、そもそも見えなかったりする。眼鏡が必要ない分、表示される位置そのものが狭くなってしまうのだ。これも、みんなで見たりするには致命的。

では、一人暮らし向けの家電という方向ならどうだろうか。
一人でじっくり3Dコンテンツを見るというのであれば、もっともターゲットになりやすいのは金も時間も比較的余っている独身社会人。3D対応のブルーレイやゲームなどを休日の自宅で楽しむ、などのスタイルはそれなりに訴求力がありそうに思える。
しかし、これは別の理由で無理だ。その主な理由は、対応製品の価格とサイズ。
3Dテレビは安いものでも10万円以上する高額商品で、基本的に40型などの超大型テレビにしか搭載されていない。一人暮らしだとそもそも25インチ以上のサイズのテレビなんて買わないわけで、見ようかという気になっても環境がそわないので話にならない。
まあ、個人的な感想を言わせてもらえば、HMD買った方がましだろう。ちょうどSonyのHMZ-T1がもうすぐ発売になるが、これなら6万円台で手に入るし、場所もとらないからテレビの横に置いておける。

けっして3D映像コンテンツに魅力がないというわけではない。迫力、臨場感、どれをとっても今までの映像装置にはない表現力を持っており、それを活かすコンテンツも徐々に増えていくだろう。
ただ、今の製品形態では誰にも響かない無駄機能でしかないというのもまた揺るぎのない事実。AppleがiPodやiPhoneでやったように、ライフスタイルを変えるような革新性を持った製品を開発する必要があるのではないだろうか。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 裸眼3Dについてはフェイストラッキング+複数視差生成という手がありますよ。
    http://www.toshiba.co.jp/regza/lineup/x3/quality_3d.html#facetracking [toshiba.co.jp]
    ぶっちゃけ、3Dより4k2kの方が気になる製品ですが。

    #結局左右視差なので、ごろ寝しながらは無理でしょうけどね。

    • by Anonymous Coward

      現状、動的に生成される視差にろくなものはないよ。
      本気でリソース突っ込めば数年内に劇的改善しないとも限らないけど。

      原理的に一番素直なのはNHKが御執心のマイクロレンズアレイ・インテグラルね。
      複数人はもちろん、ごろ寝視聴も対応。
      ただし解像度があまりにも荒過ぎな上、それですらデータ転送量が非常識にでかい力技。

  • by hishakuan (32621) on 2011年11月08日 14時37分 (#2046936) 日記

    最近は基本32インチじゃないのん?
    ゲームする独り身の友人がそれぐらい買ってましたね。

    • ゲームなら24インチでもいいかな、という気はしますが、TVや映画をそれなりに見るなら32インチは欲しいんじゃないですかね。今液晶テレビで20~24インチと32インチの値段差があまりないというのもありますし。

      一人でじっくり3Dコンテンツを見るというのであれば、もっともターゲットになりやすいのは金も時間も比較的余っている独身社会人。3D対応のブルーレイやゲームなどを休日の自宅で楽しむ、などのスタイルはそれなりに訴求力がありそうに思える。
      しかし、これは別の理由で無理だ。その主な理由は、対応製品の価格とサイズ。
      3Dテレビは安いものでも10万円以上する高額商品で、基本的に40型などの超大型テレビにしか搭載されていない。一人暮らしだとそもそも25インチ以上のサイズのテレビなんて買わないわけで、見ようかという気になっても環境がそわないので話にならない。

      で、SCEが出した定価44,980円の3Dディスプレイとか、東芝のREGZA ZP2シリーズ(26インチで最安5万円台、32インチで最安6万円台)が見事にそこら辺の問題をクリアしていて(私を含む)周りの独身社会人が皆興味を示している状況だったりします。

      親コメント
  • 偏光方式のディスプレイなら(但し24インチ)メガネ込みで3万円ほどです。(国産メーカーでも5万円ほどから)
    テレビは受像出来ませんが、それ以外特殊な設備不要のHDMI接続(ただしHDMIケーブルは3D対応のもの)で、ゲーム機やブルーレイプレーヤーの3D出力を表示出来ます。
    現状コンシューマーユースにはこれで十分だと思います。

    個人的には(現状では)ヘッドマウントディスプレイよりお薦めです。(お金を出せるならもっと別のものをお薦めしますが)
    • 連投失礼します。
      なぜヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)が(相対的に)お薦めでないかと言う理由を書かずに書いてもアレなので私の考えを補足しておきます。

      一言で言うと、HMDは没入度が高すぎるということです。
      もっと簡潔に言えば、手元が見えない(笑)
      従って、例えば映画鑑賞中にちょっと一時停止しようと思ったら、ずっとコントローラーを手に持っておくか(当然ボタン配置は記憶)、映画を流したまま一旦HMDを外すしかありません。
      ゲームではさほど問題にはならないでしょうけど、ゲームのためだけに買える程度の値段にならないと廃ゲーマー専用デバイスかなと。
      あと、UIをもうちょっと頑張れば…というところでしょう。(技術的に可能な事でも、その辺のインターフェースが標準化されないとアプリケーション側には普及しないでしょうし)

      あと、3Dテレビが普及しない理由ですが、個人的には、詳しく無いと買えない、という要素があるように思えます。
      つまり、高い3Dテレビを選択するか、安い3Dディスプレイを選択するかがあって、後者はほとんど知られていない、と。
      で、しかも後者は方式が色々あって、どうやって全体を構築したら3Dコンテンツを楽しめるようになるのか詳しく無いと分かりづらいので、なかなか手が出せない(買い間違うと数万単位で余計な出費とかロスが生じる)、と。(しかも前者でも後者より少ないにしても同様のリスクが…)
      親コメント
      • by akiraani (24305) on 2011年11月08日 15時41分 (#2046969) 日記

        なるほど。たしかに、手元が見えないというのは問題ですな。
        再生機能自体をHMDに持たせて、HMDについたボタンで操作する、くらいの割り切りが必要でしょうね。

        もしくは、HMDにカメラを内蔵して、本体のスイッチを押せば映像表示部がサムネイルウィンドウになってHMDのカメラ映像にオーバーラップされる形になるとか。

        ……ん?これができれば電脳コイルのメガネ作れるんじゃないか?

        あ、インタフェースをKinectにするという手もあるな(笑)

        まあ、個人ユースなら3DSをちょっと大型化しました、みたいなデバイスが一番便利なのではないかという気がしますがね。たしか3Dタブレットも各社発表していた記憶があります。
        案外来年早々にブレイクスルーがあったりするかもしれませんなー。

        --
        しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
        親コメント
  • とりあえずこの辺でもいいんじゃないかなぁ、と思ったり。
    http://www.jp.playstation.com/ps3/peripheral/cechzed1j.html [playstation.com]
    例によってテレビ機能はありませんが。

    # 話題をHMZ-T1にごっそり持ってかれた不憫な子

  • by Anonymous Coward on 2011年11月08日 16時12分 (#2046984)

    視力矯正用の眼鏡だけでも面倒で邪魔なものと感じているのに、
    更に3D用の眼鏡をかけるなんて想像もしたくない。

    ある眼鏡利用者の声

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目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない -- Eric Raymond

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