■ 要点
インストール後、grub2 のカーネルオプションに nomodeset を加えて起動。
nomodeset の指定を恒久的なオプションとして grub2 に設定する。
aptline に nonfree を追加した上で firmware-linux-free, firmware-misc-nonfree, firmware-realtek, firmware-intel-sound をインストールし、再起動する。
これで画面表示、wifi、サスペンド、サウンドは動作する。
一方、本体内蔵キーボードのキーマップの一部、液晶の輝度調節は働かない。
以下の節は冗長な説明である。
■ 冗長な前置き
今回は sandisk ultrafit という usb フラッシュメモリに導入した。
本来なら本体ストレージに入れないと速度や取り回しの面で問題が生じるが、portabook の場合、本体ストレージも豪烈に遅いのであまりデメリットに感じない。
windows10 環境を温存する必要がなければ本体に入れてもよいだろう。
本当はコンパクトに構成できる Debian を本体に入れ、大容量を要求する Windows を USB に入れられれば良いのだが…
なお完全に確認したわけでないが SD カードからは起動できないようだ。
本体 MMC に grub2 と /boot だけ入れて SD カードを / としてマウントするのは可能だと思われるが、Debian のインストーラでそれをやる方法がよくわからない…
というか grub とか uefi の説明のあたり、何いってるのかよくわかんなくない?なくなくなくない?
■ インストールの準備
インストール前に以下のデバイスを用意しておく
- USB フラッシュメモリ …本体に入れるなら不要
- USB ハブ …5ポート以上でACアダプタつきのもの
- USB キーボード …本体に合わせて日本語のほうが良いかも
- USB マウス
- USB NIC …有線で手堅く入れる
- インストール用 USB フラッシュメモリまたは USB 接続の DVD ドライブ
portabook では本体キーボード・マウスはインストール中は正常に動かないものと思ったほうが良い。
windows の再インストールのときにさえ必要になるレベルだ。
同様に wifi も諸々の事情により使えないので USB NIC もいる。
今回はそのへんに転がってた StarTech.com の USB31000S を使った。
さして祈るだけで問題なく認識した。
USB ハブは電源付きのものでないと USB 機器が電力不足で不安定になることがある。
抜き差しした瞬間に電力の変動で認識が外れたりすることもあるので、不要な抜き差しは極力控えるべきだ。キーボード等をさした瞬間に Debian を入れたフラッシュメモリのマウントが外れて詰んだことが数回ある。
Debian のインストールディスクやインストール先のフラッシュメモリは GPT で初期化する。
portabook には CSM (過去互換BIOSモード)がないので MBR からは起動できない。
また、余談だが自作のカーネルからは secure boot を無効にしないと起動できなかった。
インストール用ディスクは今回 portabook の windows 上で rufus というアプリを使って行った。
わらしべ長者的にできるだけゼロから行いたかったからだが、ちょっとびっくりするくらい時間がかかったので、他に速いマシンがあるならお勧めしない。
■ インストール
インストールそのものはいつも通り普通に行う。
デスクトップ環境は MATE を選択した。
■ grub2 に nomodeset を設定
初回の起動で grub2 に割り込む。カーソルキーでも押せば良い。
割り込まないとカーネルが読み込まれた瞬間に画面表示が詰む。
デフォルトの選択項目上で e を押し、編集モードに入る。
linux /boot/vmlinuz-5.10.なんちゃらかんちゃら… ro quiet
となっている行の quiet を消しそこに nomodeset と書く。
[CTRL] + [x] を入力して起動する。
ちなみに nomodeset はカーネルにビデオモードの設定を委ねないという指定だ。
その結果具体的に何が起きてるのかは理解していないが、portabook に限らず
カーネルを読んだ瞬間画面表示が詰むハードウェアではよく行われる定番のおまじないだそうだ。
先程の grub2 メニューの編集はその起動1回のみ有効で、恒久的な設定変更ではない。
なので起動したらまず /etc/default/grub を編集する。
GRUB_CMDLINE_LINUX= という行があるので
GRUB_CMDLINE_LINUX="nomodeset"
に書き換え、sudo update-grub2 を実行して反映させる。
再起動して nomodeset 状態で起動するか確認しよう。
■ firmware のインストール
firmware とは portabook に内蔵されているチップの内部で動くソフトウェアのことで、これらがインストールされていないとまともに動作しないと思ってよい。
まず apt の /etc/apt/souces.list を編集し、インストール用 usb フラッシュメモリのラインを削除、nonfree を追加する。
sudo apt update, sudo apt upgarade を行った後、firmware のパッケージを入れる。
- firmware-linux-free
- firmware-misc-nonfree
- firmware-realtek
- firmware-intel-sound
順番は関係ないと思うが、念のため実際に私が導入した順に書いておく。
ものがファームウェアなので再起動の必要があると思われる。
これにより本体内蔵 wifi である Realtek RTL8723bs が使用可能になる。
デスクトップ環境 MATE 組み込みのアプレットから普通に設定し、通信可能になった。
これで USB NIC を外せる。
また音も出るようになるはずである。vlc を入れてテキトーな動画を流して確認した。
この段階まで行けば本体内蔵のポインティングデバイスも機能しているはず。
まああれを常用したいと思う人は少数派だろうが。
■ サスペンド
2つ前の Ubuntu LTS, Ubuntu 18.04 で使っている人々が、サスペンドが正常に機能しないという報告をあげているが、とりあえずこの環境では機能しているように見える。
長期間使ったわけではないので、やっぱりダメだったというオチもありえるが。
■ キーボードの不具合
サスペンドと同様、Ubuntu の人々が報告しているように、本体内蔵キーボードが一部おかしい状態になる。
¥, \, 無変換, 変換, ひらがな キーが機能しない。
エスケープのコードが混ざる問題は発生していないので、日本語の文章を入力する作業は行えるものの、パイプ | が打てないのでコマンドライン上の作業をするには厳しい。
これらはデバイスドライバのレベルで機能していないので、
xev 等でコードを調べようとしても、押してもイベントが発生しないという状況になる。
正しい機能を割り当てなおすということも不可能である。
※カーネルを作り直したりすることなく最小の手間で暫定的に回避する方法を考えたのだが、説明がややこしいので後日元気があったら書くことにします。
■ 液晶の輝度が調節できない不具合
液晶の輝度が調節できない。
MATE の「明るさの調節」アプレットちゃん曰く「液晶画面の明るさを取得できません」だそうだ。
本体キーボードの Fn + F3/F4 も機能しない。
音量調整の Fn + F6/F7 は機能することから、Fn 機構自体は動作しているようだ。
とはいえ調節せずとも穏当な輝度で表示されてるので、問題と思わない人のほうが多いかもしれない。
■ 個人的な失敗
さらに。
これは portabook や debian の問題ではないが、インストール先の sandisk ultra fit というフラッシュメモリが触れないほど熱くなるという問題がある。
触れないというのは比喩ではなく、ほんとに指で触り続けることができないほど熱くなる。
壊れてしまうのではないかと心配になるレベルだ。
取り回しを考えてこれを選んだが、どうせマウスをつけるためにハブが必要だと思うと加熱しないものにかえるべきかもしれない。
■ atom 固有の問題
さらなる余談で恐縮だが、BlueTooth マウスを使用すると、使用中 wifi の通信速度が実用不可能なほど遅くなる。
これは Windows10 上でも同様で、Portabook, というかこの atom アーキテクチャそのものの欠陥だと思われる。
なので BT マウスを使って本体 USB ポートに Debian フラッシュメモリのみを装着するという運用は現実的ではない。
Sandisk ultra fit いみねーなー!
以上です。
portabook で定番の Ubuntu18.04LTS よりはパッケージのバージョンも新しいし、サポート寿命も長いので Debian11 は十分 portabook の延命環境として選択肢に入るのではないでしょうか。
(portabook の売りであるキーボードの不具合から目をそらしながら