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日記

taggaの日記: 緑表紙の解説

日記 by tagga

『小学算術』(緑表紙国定教科書 1935)での変更についての 当時の解説。 国会図書館デジタルコレクションから。

  • 酒井福寿. 1936. 尋二算術実践上の諸問題. In 長崎県女子師範学校附属小学校 編, 『科学的教育建設の企図』長崎県女子師範学校附属小学校, pp.95-124. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1144488

表記は新漢字・新仮名に。

総九九の採用によって九九の数は八十一種を数えなければならぬ。 (p.95. 一. 乗法九九, (一)改正の要点, (1) 九九の数)

1924(大正13)年の黒表紙第3次修正で、 片九九から総九九へ変更されても、現場ではまだ定着していないということ。 片九九というのは 3×2 をみても、2×3をみても「にさんがろく」と言うようなこと。

旧教科書では二の段は二倍する九九であって、乗数が一定していた。 1×2 2×2 3×2 4×2 …であった。 新教科書では二の段は二の累加によって生じる結果を求めて、 所謂被乗数を一定している。 2×2 2×3 2×4 2×5 ………である。 乗法九九の発生から見ても、指導の実際より考えても極めて自然な形である。 (p.96, (2) 九九構成の形式)

教師用書に示された如く、九九指導に際しては、その構成を理解させねばならぬ。 故に構成の三要素たる、被乗数、乗数、積の順に呼ばせることは、 国語と一致して理解上異義なきことである。 (p.96, (3) 被乗数先唱)

立式では黒表紙時代から、被乗数×乗数。 これで計算と立式が一致した。

緑表紙の前年。ペリー運動から算数教育の改革を目指していた人。 つまり、緑表紙と同様の方向性。

然るに此の如き数桁の数ではなく、簡易な乗法を考えるに、

8銭×6=48銭 ........ 1)

に於て、之に用いる九九は八六、四十八が如何にも自然である。 之を強いて六八、四十八と唱えるは、元来外国の直訳に原因する。 外国では一本八銭の鉛筆六本の代は何程かとという場合の式として

6×8銭=48銭.........(2)

と書き、読むことも「六倍の八銭」という。 之に対し六八、四十八という九九は如何にも自然である。 併し日本の風のように(1)の型をとるとき、 之に六八、四十八は何といっても不自然である。(pp.167-168)

直訳ではなく、このばあいは片九九だと思う。 むしろ不思議なのは、藤澤など前の世代の数学・算数教育の中心にいる人たちがが、西洋で順序が混乱しているのに、 一貫して「被乗数×乗数」に初等でも中等でもしていることだと思う。

明治の西洋算術輸入から日本に向いた算数を工夫して、 数学・算数教育の中心の人たちが辿りついたのが、こういう辺り。 それを関係ない民間教育団体のせいにしたり、 教師の不勉強のせいにしたりする人たちは、……。 本人たちが分かってやっていることに 何の新しい観点もなく批判してもしかたないのに。

;; 念のためだが、上のような立場に僕は賛成していない。 僕の立場は、

  • 掛け割り図をかいて、式の中にもっと単位をつけようぜ。 そうすれば被乗数と乗数の区別を順番で示す必要はないよね。
  • けど、掛け割り図で説明する都合から、特に慣習がなければ、 被乗数×乗数で板書するよ
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