taggaの日記: 高木貞治の算術教科書の系列
国会図書館のデジタルコレクションで出てくるのだけ:
- 高木 貞治. 1898. 『新撰算術』東京: 博文館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/827449
名数の議論がないので、乗法の順序は問題にならない。 - 高木 貞治. 1904. 『新式算術講義』東京: 博文館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/827403
名数の議論がないので、乗法の順序は問題にならない。 - 高木 貞治. 1909. 『広算術教科書』上下. 東京: 開成館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826655
名数が出てくるので、乗法の順序は問題になる。 - 高木 貞治. 1911. 『新式算術教科書』東京: 開成館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1087461
(3)の改定版。因数での説明が異なる。 - 高木 貞治. 1911. 『師範学校 数学教科書: 算術及び代数』東京: 開成館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826333
名数は軽くあつかわれている。展開上、乗法の順序は問題になる。 なお、(3)(4) とは展開が異なる。
(3)の因数のところ。 p.58:
九九の表を見るに、4の6倍も24、 又6の4倍も24なり。 即ち4を六度加え合わせても、 又6を四度加え合せても、 結果は同じ。さて其の理由は如何。 之を次の如く説明することを得る。
として●を縦に6個、横に4個並べたもので直感的に理解させようとする。p.59:
すべて甲の数に乙の数を掛けても、 又は乙の数に甲の数を掛けても、積は同じことなり。*
ここに注がある。
被乗数が名数なるときは、其単位の名を去りて後、 此の法則を適用すべきことは勿論なり。
(4) の因数のところでは、(3)の直感的な説明ではなく、いわゆるトランプ配りで説明されている。p.28:
例えば、24人に16個ずつの物を与うるには 16×24 だけの物がいるべし。 さて 24人に一個ずつを与うるには 24個の物がいり、16回かようにするときは、24×16 だけ物がいる。
此の例によりて、16に24を掛けても、又24に16を掛けても、積は同じなることを知るべし。
ただし、これらには名数についての注意がある。(3)のp.52, (4)のp.21 にある同じ文章:
乗数は必ず不名数なり。 積は被乗数が名数なるときは、亦必ず同種の名数なり。
これに対して (5) はより形式的に展開はしている。因数のところ (整数の積) のところ (p.23) で 右分配則から証明(手抜き)ずみの (A × m) × n = (A × n) × m に A = 1 を代入して m × n = n × m を示し:
掛け算の意味を離れて、唯其結果のみを考うるときには、 被乗数と乗数とを区別する必要なきなり。 是故に被乗数と乗数とを共に因数という。
(3)で言っているのだと、16個×24 = (16 × 24) 個 = (24 × 16) 個。
(4)で言っているのだと、16個×24 = 24個×16。
(5)は結局 (3) になる。
(4)のトランプ配りは、交換則によると考えるより、双対 共役な問題に移していると考えるべきと個人的には思う。
双対 共役というのは行列 線形代数だと転置だから、かけ算の順序を変えた方が自然になる。
数教協的にすべて単位つきの量にしてしまうと何をしているかが分かりやすいと思う。
1人1回あたり1個という対応関係をつかっている。
16個/人 × 24人 = (16個/人 ÷ 1個/人回) × (24人 × 1個/人回) = 16回 × 24個/回.
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