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日本

yasuokaの日記: 「象は鼻が長い」の主語は「象」なのか「鼻」なのか 2

日記 by yasuoka

昨日の日記の読者から、「私は腹が立つた」は「象は鼻が長い」と同じ構造なのか、という趣旨の質問をもらった。昨日と同様に、nsubj:outerで書いてみよう。

象   NOUN ═╗<══╗ nsubj:outer(主語[外側])
は   ADP  <╝   ║ case(格表示)
鼻   NOUN ═╗<╗ ║ nsubj(主語)
が   ADP  <╝ ║ ║ case(格表示)
長い ADJ  ═══╝═╝ root(親)

確かに、「象は鼻が長い」なら「鼻が長い」をPredicate Clauseとみなすのも、アリだと思う。ただ、もし本当にPredicate Cluaseであるならば、Universal Dependenciesの新しいルールによって倒置文「鼻が象は長い」は、以下のように表すことになる。

鼻   NOUN ═╗<╗   nsubj(主語)
が   ADP  <╝ ║   case(格表示)
象   NOUN ═╗ ║<╗ nsubj:outer(主語[外側])
は   ADP  <╝ ║ ║ case(格表示)
長い ADJ  ═══╝═╝ root(親)

うーん、これだと私(安岡孝一)個人としては、nsubj:outerというタグの名前そのものに、かなり不自然な印象を受けるのだが、まあ、タグだから仕方ないのかな。

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
  • ここで母さんも長いと返事された時、長いのは母さん自体か母さんの鼻か判断するためにはこの構造を理解しないとダメでしょうか

  • (日本の)国文法では、大主語・小主語みたいに呼んで区別することもあったかと思います。この考えかたはnsubj:outerという考えかたと共通していますね。ただこのような名称で区別する方法は、「文明国は男性が平均寿命が短い」を処理しにくくなることが問題かと。 句構造文法では、[主述]構造が入れ子になっていると考えることが多いと思います。[腹が立つ]という主述構造全体が[私は]の述部になっているという分析ですね。国文法でも、この構造を特殊な複文と考える向きは、同じ分析を採用していると思います。利点は、主語がいくつあっても、同じ句構造規則の再帰的適用なので、異なる範疇名を与える必要がないということですか…… 昔の生成文法では、「鼻は象が長い」は基底構造となる「象は鼻が長い」から、scramblingという操作によって派生されるという分析が採用されていたかと思います。
typodupeerror

アレゲはアレゲ以上のなにものでもなさげ -- アレゲ研究家

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