Oliverのコメント: あまり悪い話ではないと思う (スコア 4, 興味深い) 145
金銭的に考えると、そこまで悪くない話と思える
よく言われる現行の配分:著者10%、印刷業者30%、出版社30%、取次8%、本屋22%
Kindle:著者10%、出版社35%、Amazon 55%
本の売値が同じなら、出版社の取分は5%増える。印刷費用を抑えている出版社なら同程度か。
ただし、見落としてはいけないのは、上記は「実際に売れた本」の売上配分であるという事。実際には印刷されたうちの数十%の本が返品されてくる。これが誰の負担になるかというと、主に出版社の負担となる。
返品率によって、上記の中での合計60%の出版社と印刷業者の二者間での配分は(出版社の赤字まで視野にいれて劇的に)変わるだろうから、そのリスクがなくなり同程度からやや多い配分を確保できるのなら、パッと見るほどに悪い話ではない。ただし、売値が同じならば。
では、実際の売値がどうなるかだが、これは最終的には紙と電子でほぼ同じになるのではないかと個人的には思う。
米国の状況を見ても、普及期であった当初は電子版が数十%安かったが、電子版が主流になった現在ではほぼ同額(ほとんど形式的な数十セント程度の違い)になっている。
物理的な紙での本と利便性の高い電子版、提供する価値には差があり利用者の好みが分かれるだろうが、本質的な中身が同じである以上は、同じ価格に落ち着くのもそれほど不自然とは思えない。元々、日本では書籍はかなり安いので、当初の電子版の普及期は別にして、値下げして本全体の裾野を広げる効果も薄いだろう。
なので、今回の論争は経済合理性の問題ではなく、絶版する/しないコントロールを奪われる、という想いへの拒否反応という面がよほど大きいのではないだろうか。あとは、普及期に値下げされたまま値段が回復しない事への懸念だが、そこは値段を最大化するのは出版社とAmazonの利害が一致するので、それほどの心配はなかろう。