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日記

akiraaniの日記: 日本の食に関する異常さの話 23

日記 by akiraani

このコメントにちらっと書いたのだけど、日本の食に関するなんでもありさ加減って世界有数なんだという話を聞いたことがある。

いろんな料理に関する出自を調べていくと、なかなかとんでもない感じの改造がされていることが多い。

肉じゃが

1870年(明治3年)から1878年(明治11年)までイギリスのポーツマス市に留学していた東郷平八郎が留学先で食べたビーフシチューの味を非常に気に入り、日本へ帰国後に艦上食として作らせようとした。しかし、日本にはワインもドミグラスソースも無く、そもそも命じられた料理長はビーフシチューなど知らず、東郷の話からイメージして醤油と砂糖を使って作ったのが始まりという話がある。しかし、当時の日本では既にビーフシチューやその変形であるハヤシライスが洋食屋での一般的メニューであったこと、また、牛肉を醤油と砂糖で煮るのは牛鍋や牛肉の大和煮と同様の手法であることなどから、代用したという説は、単なる都市伝説に過ぎないとする意見もある。

 ビーフシチュー説には異論があるらしいけど、洋風煮込み料理をベースにしているのは食材のチョイスから見ても間違いないと思う。なんか違うけど美味いからいいや、と言う感覚なのではないかと。

ラーメン

ラーメンは江戸時代末に開港した横浜・神戸・長崎・函館などに明治時代になると誕生した中華街(当時は南京町と呼ばれた)で食べられていた麺料理をルーツとするものである。
(中略)
約100年の歴史の中で、さまざまなアレンジが加えられていき、中国やベトナムなどのアジアの麺料理とは異質な日本独特の麺料理に発展・変化している

 どうも中華街発祥というだけで、元になる中国料理が明確にあるわけではない模様……。その後、カンブリア爆発並みの勢いでの異形進化を遂げてご当地ラーメンなるものが各地に点在するまでになり、チキンラーメンを発祥とする即席めんが世界中に輸出されるにいたるわけだが、その頃にはすっかり日本発祥の食べ物であるという状態になっていた模様。

カレーライス
 ラーメンとともに独自すぎる進化を遂げたガラパゴス日本料理の双璧をなすのがカレーだろう。流れから言えばインド料理のスパイスミックスであるカレー粉がイギリスで発明され、食材制限の多い海軍料理でシチューの代用品としてカレー粉が味付けに使われたものが日本にカレーとして伝わっている。この時点ですでに原形をとどめていないのだけど、その後の変貌はまさに日本ナイズとしか言い様がない。そもそも船員向けの料理が大衆食として広まると言うのが世界的に見て特殊なのではないだろうか。その後の変貌は大正15年に「インスタント・カレールウ」が発明されたことが最大の転機だったと思われるが、蕎麦屋を経由して大衆に広まったのがいろいろいけなかったのではないだろうか。「日本のカレーライス」を熱愛する米国人記者が語る『ゴーゴーカレーNY店』には「インドのカレーとは似ても似つかない食べ物だった。」とある。この記者が始めてカレーを食べた場所が金沢カレーでおなじみの金沢だったというのもある意味不幸だったのかもしれないが、そりゃあびっくりするわけである。

餃子

皮が薄い日本風の餃子を、近年は「日式餃子」と称して出す店もある(主に日本人が多い地域の日本料理店で、日本料理として)。しかし中国でも受け入れられつつある日式拉麺などとは違い、中国で餃子と言うとあくまで水餃子であり、皮が薄い日式餃子や、餃子と一緒にチャーハンや唐揚げを食べる日本風の食べ方は全く受け入れられていない。

 ラーメンから派生して調べてみたら、餃子もたいがいな変貌を遂げた料理であるらしい。少なくとも中国人的には、これは餃子ではない、という感覚の模様。そういえば、大学時代に同じ学年だった中国人留学生は、餃子の王将を中華料理の店だとは認識しておらず、安くて美味い日本の大衆料理店だと思っていたそうな。

クリームシチュー

第二次世界大戦後の困窮した国情の中、1947年(昭和22年)に学童の栄養補給用として学校給食のシチューに脱脂粉乳が加わるようになり、政府はこれを「白シチュー」と呼んで広めた。1966年(昭和41年)、ハウス食品から発売された粉末ルウ「クリームシチューミクス」がヒット商品となったことで、この料理の名は「クリームシチュー」として定着するに至った。

 日本ではシチューといえばむしろこっちをさすことが多いクリームシチューであるが、実は肉じゃが同様に日式魔改造された料理であるらしい。そもそもの話をすると、ホワイトソースに牛乳を使うと言う発想自体がどうも日本以外ではあまりないらしい。

カツ丼
 以前の日記を書いたときに軽く調べて知ったのだけど、カツ丼ってルーツをたどっていくと実はフランス料理なのだそうな。フランス料理のコートレットが多少アレンジされたものがカツレツという名前で好評を博し、それが日本独自の丼飯に取り入れられたのがカツ丼なのである。すなわちカツ丼はフランス料理なのであるが、まあフランス人にそう言っても絶対に信じないであろう。

コロッケ

洋食の例に漏れず日本独自の進化を遂げたコロッケ(Korokke)は、日本国外でも日本の料理の一つとして紹介されるようになった。特に西洋のパン粉と異なる日本スタイルのパン粉(Japanese style breadcrumbs、もしくはそのまま'PANKO'と呼ばれる)を使う日本式揚げ物の衣は、西洋のフライとは違った食感を持つということで区別される傾向がある。

 元になったとされるフランス料理のクロケット自体も日本で言うところのクリームコロッケに近いものらしい。パン粉をつけて揚げるフライ調理自体がそもそも日本で独自進化を経て発明されたものなのだが、マッシュポテトをベースにするという発想もそもそもかなり特異な物だったようだ。文明開化の頃に輸入されて大衆料理として普及した料理、という時点でお察し、というのが最終的な結論になると思われる。

魚肉ソーセージ

洋食の普及への対応や魚肉の保存性向上を狙い、大正時代から日本各地の水産試験場で魚肉を使用したハム・ソーセージ風食品の開発が進められた。

 洋食の普及、までは理解できるが、なぜその観点でが魚肉でハムやソーセージを作ろうという方向性になるのか、冷静に考えると謎。魚肉を使った時点で、もはやそれは魚肉の練り物の一種でしかないわけで、かまぼこやちくわのお仲間でしかないと思うのだけど……。

フグ

天然のフグの場合、種によって毒化する部位が異なり、同じ種でも季節により毒の量が変わる。

 まずもって不思議この上ないのだが、どうしてこんな魚を食用にしようとしたのかが意味不明である。だって毒ですよ。食ったら高確率で死ぬんですよ。。河豚の卵巣の糠漬けに至っては「ふぐ毒がいかなる要因によって減毒されるのかについては、未だ不明な点が多い。」となっていて、完全に経験則だけで製法が編み出されたことが明らかなんだけど、安全に食べられる料理法が確立されるまでいったいどれだけの数の人間を人身御供にささげてきたのだろうか。そんな魚が高級魚としてありがたがられているというのは、日本人である自分でもクレイジーだと思わざるを得ない。

納豆
 大豆の加工食品である納豆、起源は平安時代にまでさかのぼるようだが、豆腐と違って類似する豆料理が他の国にはないというのがいろいろ興味深い。なんせあの色合い、匂い、ねばねばとした食感、普通は腐ってると思ってしまうのもしょうがない。シュールストレミングのように、食材の保存を目的として発酵させたというのであればまだわからないでもないが、ただ乾燥させれば日持ちするはずの大豆をわざわざ発酵させて食べるというのはやはり国民性というか、食に対する気質に独自のものがあったのではないかという気がする。

正直、「ここが変だよ、日本料理」というタイトルで半年くらい番組で作れてしまうのではと思う充実度合いである。
多分、知らないだけで他にいっぱいカルフォルニアロール級の変貌を遂げてしまった料理があるのではないかと思う。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by yasuchiyo (11756) on 2017年11月01日 19時10分 (#3305535) 日記

    カツ丼に進化する前に、カツレツというかトンカツになった時点でかなり似て非なるモノになってたらしいですが、そこからさらにアレンジが進むとか。

  • 毒性の強いこんにゃく芋を灰で煮込んでエグミを抜くなんて言う発想、
    どうやったら生まれるのか全くわからないです。

    --
    一人以外は全員敗者
    それでもあきらめるより熱くなれ
  • by Anonymous Coward on 2017年11月01日 15時03分 (#3305369)

    菓子パンとか総菜パンとか、だいぶ日本独自の改造がされている気がします

  • by Anonymous Coward on 2017年11月01日 15時07分 (#3305373)

    有名なのはアメリカでの中華料理全般とか。
    何故かカロリーが倍になると言う恐ろしさ。

    アメリカのピザもイタリアのとは全く別物でやっぱりカロリーマシマシだし。

    • ピザも日本に入ってきた時点でさらにバリエーション増えたんじゃね。
      イタリア風もアメリカ風も関係なくごっちゃにしたうえに和風フレーバーぶち込むし。

      # 確かにアメリカのピザは、「これくらい食えるだろう」と思って注文したら死ぬ思いで食うことになったおぼえがある。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      まあ中華料理の手法は、どんな素材でも中華料理にしちまうからな。
      中国人は鍋(Wok)と現地素材で何でも作っちまうというか。

      • by Anonymous Coward

        中華料理で思い出したが、一時期近所に有った店が出していたカレー。
        山椒マシマシでどう考えてもカレーとして出すよりも、豆腐を入れてちょっと変わったマーボー豆腐として出した方が良いってシロモノだった。

        そこで思ったのは、カレーとマーボー豆腐って実は同源なのかな?とか。
        それぞれに進化した結果、別メニューって事になったのかも。

        • by Anonymous Coward

           香辛料をソースとして使うという意味では、同根だね。
          使う香辛料もほぼ共通だし。

      • by Anonymous Coward

        中華料理は意外と場所柄が有りますよ。
        マーボー豆腐一つでも、「唐辛子辛い」「塩辛い」「山椒辛い」「酸っぱい」に、挙句に「甘い」って辺りは確認済。
        自分には判らないけど、判る人ならだいたいどの地方の味付けなのか判るのかも知れない。

        元の例だと、香港のレストランが米国に店を出した時なんかに言われた話で、
        メニューはほぼ一緒なんだけども、味付けを米国向けにしたらカロリーがって話ですね。

        • by Anonymous Coward

           なお、「外国旅行中に美味しい料理を食べたくなったら中華街のど真ん中に行け。ただしオーストラリアを除く」と言った人がいます。
          個人的には、米国旅行の経験からすると、日本料理に似た何かを食べるぐらいなら、米国流中華料理の方が口にあった。
          ただ、米国流中華料理より米国流独逸料理の方が口にあったけど。

          • by Anonymous Coward

            米国をぐるぐると旅してるときに中華料理屋は重宝しました。
            ど田舎の町でもちょっと大きいところになれば間違いなく中華料理店はあるし、
            そういうところのほかの料理屋よりは概ねおいしい。(かつ安価)

            あと田舎町では日本人は結構な確率で差別に遭うんだが、
            中華料理店ではそういう目を見ずに済む、ってのも精神的に助かったな。

            • by Anonymous Coward

              オフトピになってますが、
              ベトナム料理も結構どこにでもあって日本人の口にも合うのではないかと。
              中華だと油多そうですが、ベトナム料理はさっぱりした物も多いし。
              パクチー嫌いな人には厳しいか(笑)

    • by Anonymous Coward

      メキシコではあまり普通ではない「タコス」とかねぇ。
      アメリカ風メキシコ料理 (メキシコ風アメリカ料理か?)を表す Tex-Mex という用語まであるし。

      とりあえず「日本はスゲー」って記事のほとんどすべては、レイシスト的オカルトと思ってよい。

      • >とりあえず「日本はスゲー」って記事のほとんどすべては、レイシスト的オカルトと思ってよい。
        異常だと言う話がどうしてそういう受け取り方になるのかがわからないのだけど、参考までに、どのあたりがそのように感じたのか聞かせて欲しい。

        --
        しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2017年11月01日 18時00分 (#3305496)

    NHKのクール・ジャパンでイタリア人が有り得ない連発していたのを思い出したよ。
    パスタ犯罪とかまで言っていたので家族で笑った覚えが。

  • by Anonymous Coward on 2017年11月01日 21時16分 (#3305626)

     前史としては鶏ガラベースの湯麺から始まってる。
    そして、その名物ラーメンが生まれたのは、戦後の闇市がまだ残っているような時代、高価な鶏ガラの代わりに産廃だった豚骨を使ってメインの出汁を取り、食べやすくするために海鮮出汁を合わせることで、ダブルスープを生み出しヒット商品となり、入手性の関係で一部の原料が変わった以外は今も変わらない
    (なお、この定義ともいう原型を踏み台にして生まれたバリエーションは出ている)。
    http://www.hokkaido-jin.jp/issue/sp/200505/sp_14.html [hokkaido-jin.jp]

     あと、戦後の闇市の時代、満州からの引揚者が食べるために湯麺や餃子等を売って生計を立てたというのが、のちの名物への始まりという地域は多い。
    そして、水餃子が廃れて焼き餃子が主流になったのは、ご飯のおかずにあうのが焼き餃子だったからだね。

     そうそう、インドカレーは英国料理です(この料理の海軍バージョンを基に日本のカレーは生まれた)。
    インドのカレーはインド料理です、醤油を使った日本料理を日本醤油と言わないのと同じで(インドのある地方の言葉でカレーはソースという意味)。

  • by Anonymous Coward on 2017年11月02日 6時46分 (#3305760)

    日本の納豆そのものではないですが、アジア圏には納豆に似た食べ物はあるそうですよ。
    以前にNHKの視点・論点という番組で解説されてました。
    ググってみたらその記事が引っかかったので挙げておきます。

    視点・論点 「納豆の起源を探る」 [nhk.or.jp]

    起源については中国南部の雲南省付近であるという説、個々の地域で独自に進化した説が紹介されています。
    ご参考まで。

    • by Anonymous Coward

      特に発酵食品なんかは馴染のない人から見れば奇異に見えるのは仕方がない事。
      納豆が特に奇異とは思えないけどね。
      チーズなんかカビを生やしたりアオカビを植え付けたり、「何で思いついたんだ?」「何で食ってみようと思ったんだ?」と思うよ。

      • by Anonymous Coward

        そうそう、ミモレットなんてダニですからねダニ。
        何も考えずに食えばただうまいチーズなんだけど、考えるとキモい。

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吾輩はリファレンスである。名前はまだ無い -- perlの中の人

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