未知の粒子が存在か? 標準理論で説明できない現象発見の可能性 57
ストーリー by yoosee
物理学の明日へ 部門より
物理学の明日へ 部門より
endor のタレこみに加筆して曰く "asahi.comの記事によると、物理学の世界で 30 年間定説となっている「標準理論」を覆すかもしれない発表が、米シカゴ近郊で開かれている Lepton & Photon 2003 にてあったようです。
つくば市にある日本最大の高エネルギー加速器研究機構 KEK の研究施設の一つ、世界一のルミノシティを持つ「Bファクトリー加速器」及び「BELLE検出器」では、現在の量子力学・素粒子理論の基礎となる「標準理論」の検証実験が行われています。これは「宇宙誕生時には粒子と反粒子は同量存在したはずなのに、なぜ我々の世界は粒子だけで出来ているのだろう」と言う疑問に答えるべく
CP 対称性の破れと呼ばれる現象の測定を行っており、それを証明する結果も出てきています。
KEK のプレスリリース によれば、今回の発見はこの実験の中で「標準理論」に当てはまらない現象が B → Ksφ と言う非常に稀な崩壊パターンから見つかったもので、想定された理論よりも更に重い粒子である超対称性粒子や全く未知の粒子の存在を示唆する、物理学の新しい理論に向けて非常に興味深い結果となっています。
東大の小柴教授らのニュートリノについての研究成果がノーベル賞を受賞したことも記憶に新しく、日本での基礎物理学の大きな成果が続いているようで、この意義は大きいのではないかと思います。"
1つ心配なのは (スコア:2, すばらしい洞察)
このニュースがいったい一般の人にどれだけ認知されるんだろう?
昨日の朝刊には出てましたが、あの説明で普通の人が理解できるとは到底思えませんし。
テレビなどでどんな風に報道され(てい)るのかな?
ともあれ、今後の日本での物理学の発展に期待。
#それにしても、yoosee氏が元関係者 [srad.jp]だったとは知らなかった。
オフトピ (スコア:2, 参考になる)
どちらかというと、一般な人です(^^;;
正直「よく分からない」というのが本音なのですが、
SF好きな自分としては、こういうネタは好きだったりします。
最近、こういうサイト↓を発見しまして
http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/
http://member.nifty.ne.jp/scitech/
自分が今までイメージしていた物理学のイメージが
実はかなり古典的なものだった事が分かりました(^_^;
特に「 場の量子論 」とかは読んでいて新鮮でした。
とにかく、物理学にもいろいろと「世界」があるのだな、と
勉強になりました。
用いている検定方法は? (スコア:1)
ふつうに、測定された 68個の崩壊例だけから統計量を作って、過去の研究の sin カーブと今回のが違っている確率みたいなのをモンテカルロかなにかで算出するのですか?
でも非常に少ない現象に対してそういう検定をやらない気もするし...細かい話ですみませんが誰が知っている識者の方いましたら教えてください。
それにしても快挙ですね。同じつくばでも大学の方のタンデム加速器で金箔にビームぶつけていた頃を思い出しつつ、拍手を贈りたいと思います。
Re:用いている検定方法は? (スコア:4, 参考になる)
一つ一つの崩壊例に対して、パラメータv.s.その値を取る確率(likelihoodという)、のmappingを作っていく。実際には、単一パラメータではなく、複数パラメータ空間でのlikelihoodの分布を取る。それぞれの崩壊例に関して確率の分布を作り、全て重ね合わせてやれば、全崩壊例を使ったパラメータ空間でのlikelihood分布が作れる。それを使って、もっともらしい値(likelihoodのmaximumになっている部分)を選んでやることで、中心値が求まる。maximumの高さよりも低い所に等高線を引いてやって(その高さの差は、統計論から決まる)その等高線とlikelihood関数の交わるところを誤差と定める。
0.1%以下というのも、今回の結果のlikelihood関数と、比較された方のlikelihood関数を用いて計算するのが正しいが、今回言われている0.1%というのは、3.4σを一般の人にわかりやすく言っているだけかもしれない。(どちらでもだいたい同じになる。)
解析手法の中でモンテカルロは必須。例えば、上に書いた単一の崩壊例に対するlikelihood分布とか、モンテカルロなしでは求まりません。それとは別に、妥当性検定のためにモンテカルロを使うこともしばしばありますが、今回のは論文読んでないから分かりません。例えば以前話題になったWMAPとかは、ひたすらモンテカルロ使って確率計算しております。
細かいことは省略。(十分細かい?)「誰だ嘘書いているやつはー!」と思った方は修正してください。
実線のモデルに合っているのでしょうか? (スコア:2, すばらしい洞察)
> と示しているだけで、実際にあれでfittingしたわけではない。
この説明で納得すべきなのですかねえ。
標準理論の予想(点線のsine curve)からデータが有意にずれている、ということをそのグラフが示しているのはわかるのですが、もっとも左のデータ点(delta t =-7.5--5 の点)がモデル(実線のsine curve )から甚だしく離れているので、そもそも sine curve をモデルとする妥当性がまったく感じられないのです。
このグラフを普通に解釈してカイ2乗検定をしたら、強い主張は出来なさそうに思えます。(そこから高い有意性を引き出すのがunbinned maximum likelihoodの魔法?)
もうちょっと、(実験科学を知る非専門家にも)説得力のあるプレス説明がほしいと思いました。
Re:実線のモデルに合っているのでしょうか? (スコア:2, 興味深い)
> 許容範囲内かとも思いますが、いかに。)
それを言うと、標準理論モデル(点線)からも、みんな1.5σ以内にあるので許容範囲? 結局、直感的にグラフから納得できるような統計では検定できないということなのでしょうね。その統計処理は、信じるしかないと思います。
むしろ、sineカーブの妥当性について私が疑問を呈したのは、理論的要請からはsineカーブにならなくてはならないのに、そう見えない。ということは、説明のつかない系統誤差が実は含まれているのではないでしょうか、ということです。誤差評価が甘ければ、それに基づく統計的検定で99.95%の有意性が導かれても意味がありませんから。
ただ、解析の妥当性を部外者が云々することは不可能ですので、専門家がそれなりの自信をもって発表したものは受け入れるしかないと承知しています。私の個人的な心証として納得するには、もっと精度が高い結果と別の独立な実験結果が必要であるに過ぎません。
Re:用いている検定方法は? (スコア:1)
普段、大量のデータを処理、検定していて、むしろ「データを減らしたい!」という悩みのある分野で仕事してるのですが、逆にこういう「非常に稀な現象の検定」ってどうやってるんだろう、と興味をもった次第です。
そうか、実際にあの sin カーブで fitting したわけじゃないんだ。分野が違うと検定も違うのだと実感。
論文が出たら、是非細かいところまで読んでみます。
Re:用いている検定方法は? (スコア:2, 興味深い)
データ量は極めて膨大です :-)
高エネルギー物理は大量の生データを、いかに取りこぼしなく
収集・解析するかもキモの一つでして、
LHCがグリッドコンピューティングを推進しているという記事も
記憶に新しいことかと思います。
Re:用いている検定方法は? (スコア:2)
Re:用いている検定方法は? (スコア:1, 参考になる)
論文はすでにonlineで出ています。
BELLE HOME PAGE [belle.kek.jp] の先頭。
ただし、letterなのでunbinned maximum likelihoodに関する記述は無いんじゃないかな。
以前の論文(ここ [belle.kek.jp]の22番)に詳しい記述があります。
Re:用いている検定方法は? (スコア:1)
驚くのは著者の数!
50行にわたって著者が並んでいて、詳しく数えていませんが1行に 7名だとしても、350名!
さすがは実験物理。
M1のみなさ~ん (スコア:1)
一番真摯に質問に答えてると思います。
そんなわけで、もっとモデレートしてあげてください。
おしむらくは、likelihood と MC の関係が
の一言で片付けられてる点でしょうか。
ともかく、イベント数が少ない事象の解析で実際現場では
どのような取り扱いがなされているかという雰囲気が
伝わるよい回答だと思います。
#こーゆー細かいとこって新聞や科学雑誌みても
#書いてないもんね。
Kiyotan
Re:用いている検定方法は? (スコア:0)
笑うところですか?
Re:用いている検定方法は? (スコア:1)
モンテカルロ法 [wikipedia.org]
Re:用いている検定方法は? (スコア:0)
Re:用いている検定方法は? (スコア:0)
おふとぴ (スコア:1, おもしろおかしい)
とりあえず (スコア:1, おもしろおかしい)
#だから、笑うところじゃないんだってば。
Re:とりあえず (スコア:1)
# hep.osaka-cu.ac.jp は FNAL な人が多いんで
# 此度のとはあんまり縁がなさげな気がしますが。
Re:とりあえず (スコア:1, 参考になる)
思い切り深くBELLE関係者ですよ。
--
オフトピ?
Re:とりあえず (スコア:1)
もう一つの母校関連で言うと hep.okayama-u.ac.jp には BELLE の detector 作ってた先輩がいたような気がしますが... (すごく朧げ)
と書いてるところから見ると !hep なんでしょうか?# あの大学で宇宙線研か高エネか超高以外にも
# KEK やってる人いたっけかなあ...
あまり触れられてませんが... (スコア:1)
実は今回のこの結果って、アメリカのBaBarという実験も同じものを観測した結果を出してるんですよね
ところがところが、アメリカのほうは、何と標準模型の予言値に歩みよってしまってるんです!
今回のBelleとBabarの結果って2.1σくらいずれてしまっていたような...
去年の結果だったらどちらも標準模型からずれた結果を出していて、お互いのデータもそれなりに合ってたのに...
なんか余計混沌としてきたなーという印象があったりします。
こうなりゃSuper BelleとSuper Babarを両方作ってがんばってもらいますか
ついにやったか。 (スコア:0)
Re:ついにやったか。 (スコア:1)
ニュートン物理学も相対性理論で否定されたのではありませんよね。
今回の話がガセでなければ標準モデルが拡張されることになるのでしょう。
それが拡張に留まるのか、新しい理論を生み出すのかは、今後の動向に注目ですね。
物理屋さんの地道な努力に期待してます。
# よくわかってないけどID
Re:ついにやったか。 (スコア:0)
Re:ついにやったか。 (スコア:2, 参考になる)
英語では standard model って言います。訳すと標準模型。
standard theory って言ってるのは聞いたことないです。
#や、僕が聞いたことないからってどーってことないんですが。
悲しいのはこの実験だけでは、
「未知の粒子が介在してる」以上のことがわからんってことですね。
バーチャルで飛んでるんで質量もわからし。
#まぁ、スパーンと一致する理論でも出てくると別ですが。
#多分それはもっと先のお話。
未知の粒子があるとわかっただけでもすごいことなんですが。
もしかしたらもう少しで、新粒子続々直接検出!の
楽しい時代がやってくるのかもしれません。
Kiyotan
Re:ついにやったか。 (スコア:0)
トップのクォーク時は、標準理論は予想しているが、まだ見つかっていないもの(思ったより重いところがちがったんだっけ?)が見つかっただけという冷た
巨大さ (スコア:1)
加速器は、もう、昔懐かしのTRISTANではないんですよ。KEKBで加速器も新規に作り直していますから。
蛇足ですが13カ国による国際協力な研究ですから、場所は日本とはいえ、人類の発見であって欲しいですね。
でも、時代は、ぐるぐる回すより直線勝負に移行しつつあります。
Re: 巨大さ (スコア:1)
JR中央線の真下の地下が空いているのでそこに作ろうとかいうヨタ話がありましたが、考えてみれば電車が通るたんびにその振動で凄いことになりますね。
※ちっ、だめか。
Re:中央線 (スコア:1)
#オレンジの加速器は赤く染まる。
Re: 巨大さ (スコア:0)
Re: 巨大さ (スコア:0)
# 核研のあった田無分室跡を久々に覗きに行ったら何もかもなくなっていて、
# 感慨に耽ったのを思い出してAC
Re: 巨大さ (スコア:0)
なるが。
Re: 巨大さ (スコア:0)
まあ、恒常的に振動があるのとでは頻度が桁違いだとは思いますが
Re:ついにやったか。 (スコア:0)
拡張理論の干渉する割合がきわめて大きく、以前より注目されてきたものです。
今や超対称性理論は(Higgsのそれと同じく)存在はほぼ確実視されていますが、
実際にその尻尾を掴んだ今回
Re:ついにやったか。 (スコア:0)
Re:オフトピ覚悟 (スコア:0)
Re:ついにやったか。 (スコア:1)
B中間子と反B中間子とは? (スコア:0)
反bクォークからできてる中間子だったような。
asahi.comの
>Bファクトリーでは、光速近くまで加速した電子と陽電子を
>衝突させてB中間子と反B中間子をつくり、1兆分の1秒という
>瞬時に両中間子が崩壊する過程を調べている。
ってのは正しいんでしょうか。
わかる人教えてください。
Re:B中間子と反B中間子とは? (スコア:4, 参考になる)
Lepton & Photon のサイトから辿れる、
PDF ファイル [fnal.gov]なんかをご覧になってはいかがですか?
多分、これが件の内容を発表するのに使われたもんだと思います。
例の図は P45 あたりにあります。
どーゆー現象を見てるか、はP38に書いてあります。
ちなみに、B0 のクオークコンポーネントは d と b bar です。
Kiyotan
Photon (スコア:1)
その昔、ナムコのアーケードゲームにPhotonというゲームがありましたな。
分子の立体構造の見本が示され、その通りに原子/分子を組み上げていくというもの。
むちゃくちゃ地味なゲームでした・・・・
たしかリブルラブルと同時発表だったような気がする。
#こんなコメントしかできない自分が情けないっす・・・
PHOZON (スコア:1)
ナムコミュージアムVOL.3 [namco.co.jp]に収録されてますのでぜひ。
Re:PHOZON (スコア:1)
アーケード時代に数回やったけど、あまりの地味さに僕にはイマイチ面白さが見えてこなかったっす。
Re:PHOZON (スコア:1)
# 本当に立体にしたらおもしろく.. いや、気が狂いそうになるかな
まぁそう悲観せずに (スコア:1)
Lepton & Photon のプログラムのページを
見てるとどうやら、原稿を入手できるだけではなく
講演の様子を動画で見ることができるようなので、
雰囲気だけでも味わってみてはいかがですか?
アメリカで行われている国際会議の様子を
日本に居ながら見れるってのはいい時代になったと思いません?
一昔前だと原稿だって講演者にお願いしてコピーさせて
もらうしかなかったわけですし。
そーゆー意味では今の時代に生まれたことを感謝せねば。
また、このストーリーに関しては他のストーリーでは
叩かれまくりそうな初歩的な質問でも誰か彼か答えて
くれてるわけですし、素朴な疑問があれば書いてみるのも
いいかもしれませんね。その回答が正しいものかどうかは
ご自身で判断するしかりませんけど。:-P
そーゆー意味でもいい時代になったと思います。
#間違って取り入れた知識をどこで修正するかは
#なかなか難しい問題だとは思いますが。
Kiyotan
Re:B中間子と反B中間子とは? (スコア:4, 興味深い)
B 中間子は b クォーク及び 反 b クォークのどちらかと、他のクォーク u, d, c, s の組み合わせで出来ます。このうち反 b を含むものを B 中間子、b を含むものを 反 B 中間子 と呼びます(この辺は歴史的経緯で逆になっちゃってます)。
以下、便宜上反粒子を b' のように記述します(本当は上にバーを付けるんですが)。
Bファクトリー実験では、電荷のない B0 (b'+d) と 反B0 (b+d') を生成しますが、このためにΥ(4S) (b+b') という共鳴状態(10.58GeV)を電子(8.0GeV)と陽電子(3.5GeV)の衝突で作り出します。そこから B0 B0' (5.28GeV) の 2 粒子が生じ、各々の崩壊モードで崩壊します。この際、崩壊した粒子が運動量を持つようにするため、電子と陽電子ビームのエネルギーを非対称にして崩壊後の粒子がある程度の距離を飛ぶようにしています(飛んでくれないと軌跡が見えないので粒子の同定が難しくなる)
Re:B中間子と反B中間子とは? (スコア:2, 参考になる)
Re:毎日の記事 (スコア:2, 参考になる)
Bと反Bの崩壊の仕方には違いがあり(CP対称性の破れ)、 それは標準模型で予言(小林・益川理論 [www.kek.jp])されてるんだけど、今回はその予言からのずれが観測されたのではないか、ってわけですね。
はい (スコア:0)
ところで
1つ心配なのはタレコミ人です。
って読んじゃったよ。
Re:はい (スコア:1)
#タレコミ人のことも大いに心配です。