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2178 story

遺伝子拡張:6種の塩基でタンパク質合成に成功 26

ストーリー by Oliver
RNA->DNA->xNA 部門より

shadowfire 曰く、 "この記事によると、従来の生物とは全く異なる系統の遺伝情報を持つ生物を作れる可能性のある実験に理研の平尾一郎さんという方が成功したそうだ。そんな生命体が自然に解き放たれたら一体?と思いつつも、いろいろと夢見てしまうのは、マッドサイエンティスト的でしょうか。"

普通に遺伝子を操作するのではなく、遺伝子の仕組みそのものを拡張してしまうとは。2bitコンピュータを3bitに拡張した様なもんだ(違)。A,C,T,G,S,Yとつぶやきなら歩く生物学生に街で出会う日は近い。

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  • この研究は (スコア:3, 参考になる)

    by memex (4261) on 2002年02月01日 9時45分 (#59218) ホームページ
    いままでSFや先端分野の研究者では可能性が論じられてきていましたが、
    まさか本当に実現できるとは思ってもいなかったので大変にすばらしい
    研究といえるでしょう(ノーベル賞級?)。
    現実の生物は通常4塩基の組合せで20種類のアミノ酸と1つの開始信号、
    3つの停止信号をコードしていますが、6種類の組合せだと最大でおよそ
    1000通りのアミノ酸をコードできることになります。

    生体のなかにはタンパクには通常使われないアミノ酸も多いことから、
    暗号を縮合して適切なtRNAのセットを新しく作れば、アミノ酸生合成系を
    大きくいじらなくてもタンパクさせることは十分に可能だと思われます。

    また、すべてのコドンをアミノ酸にするのではなく、遺伝子発現の制御シグナルとして活用することも可能と思われます。

    ただ、現実の生物でもまだまだ「特定の機能と、それに必要かつ十分な構造」
    との因果関係がはっきりしていないので、当分は試行錯誤が続くことでしょうし、自律的な生物として創造するためには細胞とその構成物をすべて
    再設計する必要があるわけで、当分は試験管内の反応で検証することが
    主たるテーマとなるんでしょうね。

    それでもやはり生物系の研究者としては、これまで机上の空論でしかなかった
    理論を実際の実験系で確かめる手段が出来たわけで、このような研究から
    どのような成果がでてくるのか、本当にワクワクさせられます。

    追記:このようなものが漏れ出したら、と心配される向きも多いでしょうが、実際には塩基レベルで現存生物とのコンパチビリティがないし、第一に自立的に生存できるものとは程遠いので、なにか問題が起きるとは考えにくいです。
    --
    Eureka !
    • by nekopon (1483) on 2002年02月01日 10時53分 (#59227) 日記
      親コメント
    • by Anonymous Coward
      素朴な疑問だけど、SやY塩基を足したDNAを
      既存の生物に組み込めばそれなりにやばい感じが....。

      コンパチビリティがない、っていうのはSやYを理解する
      tRNAがそもそもないから平気、って理解でいいのかな。
      • by memex (4261) on 2002年02月01日 11時11分 (#59232) ホームページ
        >コンパチビリティがない、っていうのはSやYを理解する
        >tRNAがそもそもないから平気、って理解でいいのかな。

        SやYがどういう塩基なのか、Nature Biotechnogolyのホームページ記事
        から辿れなかったのであくまで推測ですが、要約から判断するとisoG と
        isoC の組合せでは塩基同士がうまく対合しなかったが、Sを導入したヒト
        Ras遺伝子にT7ファージ由来のRNAポリメラーゼを作用させると、対応す
        る塩基にYが導入されたmRNAが合成され、さらにこれにSを導入したtRNA
        と組み合わせることで、3-クロロチロシンが組み込まれたタンパクが効率
        よく合成された、とあります。

        #一般的には S=G or C、Y=C or T なんですが、ちょっと違うみたい。

        とりあえず、今回の研究では既存の反応のうちの一部について塩基を置換
        してもタンパクが合成されることを確認したという段階なので、出来上
        がったものがどういう機能性をもつのか、という点はそれとは別にこれから
        具体的に検証する必要があります。

        SやYの塩基を含むDNAが既存の生物の細胞に導入されたとしても、塩基の
        対合がうまく行かずにさっさと淘汰されるでしょうし、無理やりゲノムに
        組み込んだところでtRNAがなければ翻訳されないし、そのような部位は高頻度で
        誤対合を起こして既存のゲノム情報を撹乱し、生存を脅かすことになるでしょう。

        要は、組み込まれること自体考えにくいし、よしんば成功しても遺伝子が
        機能する仕組みが細胞側になければ発現しない、ということです。
        --
        Eureka !
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      • コンピュータで例えると、何かが書き込まれているメディアがあっても
        それを読みとれるファイルシステムが無いみたいなもの。

        ただ、どこでどういう偶然でか、読みとられる場合があり得るというのが
        生物の怖いところ。

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      • by Anonymous Coward
        DNAの増殖や配列決定は、研究に必須だと思うけど、それらに使う既存のDNAポリメラーゼってSとかYには対応してないよね。たぶん。 S、Y対応の耐熱DNAポリメラーゼ作ったりするのも大変だと思うんだけど・・・。もうできてるのかなあ。 別に酵素反応じゃなくてもいいけどさ。
    • by Anonymous Coward
      6種類の組合せだと最大でおよそ1000通りのアミノ酸をコードできる
      1000通りですか?
      • by memex (4261) on 2002年02月01日 11時15分 (#59236) ホームページ
        >1000通りですか?

        間違ってましたね(^^)。

        正しくは216種類-α。

        #αは非翻訳暗号の分です。
        --
        Eureka !
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        • まー、今の段階(ATGC)で、トリプレットには
          4^3=64パターンあるわけですが、それに対応する
          アミノ酸は20種類。

          それに開始コドン、終了コドンがありますから、単純に
          数字だけ比較すれば、70種類程度ってことになりますね。

          って…。
          今まで20種類だったREGOブロックがもし70種類に
          なったなら、どれだけ作れるものが増えるか考えると
          面白いですねぇ。
          親コメント
          • by redbrick (4865) on 2002年02月01日 14時39分 (#59283) 日記
            逆の考え方もあるかも。

            >今まで20種類だったREGOブロックがもし70種類になったなら、

            今まで20種類だけ摂ればよかった必須アミノ酸を、6種塩基の生物は
            生存のために、最大で70種も摂らなきゃならないわけですね?
            ・・・・自分で作り出せないアミノ酸があると、すごく生き延びるのが辛そう(汗)。
            #自然界では、基本的には4種塩基の生物しかいないのだから、一部のアミノ酸は
            #自然の食物には存在しない、と仮定してます。
            #・・・仮定、間違ってますかね(汗)?

            --
            ---- redbrick
            親コメント
            • by kiyotan (3912) on 2002年02月01日 15時49分 (#59299) 日記
              つまりテトラセルホワイト無しでは生きられない生物を生み出せると。
              --
              Kiyotan
              親コメント
            • 仮定自体はだいたい合っていると思います (^^;
              6塩基生物が自然環境下で生育するのは当面無理でしょうね。

              この研究はエイリアン(ジェムハダー?)を作ることじゃなくて、
              自然界(またはそれを基礎とした系)では作り出すことができない
              タンパク質を、Cell free系で作り出すために有効な技術になると
              思います。

              なお人間の場合、アミノ酸20種類のうち必須アミノ酸は9種類です。
              バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、
              メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン
              参考までに。
              親コメント
            • by grinsleeves (4734) on 2002年02月01日 23時20分 (#59373)
              あー、目を見開かされたコメント。

              ところで、体内で合成できるかどうかもポイントだと
              思うのですが、そういう仕組みを高度に有する生物は
              考えられないでしょうか(汗)?
              親コメント
              • by memex (4261) on 2002年02月02日 2時01分 (#59402) ホームページ
                ある程度自立的に自己複製しつつ増殖できるという生物の特性を考
                えれば、食糧として取り込むことができないアミノ酸は自分で合成
                する必要があります。

                当然のことですが、たとえば70種類のアミノ酸全てを合成するとして、
                それを70種類のアミノ酸を組み合わせて作られる酵素タンパクでどの
                ように実現するか?

                20種類のアミノ酸を組み合わせたものの立体構造を推測することも
                まだまだ完全ではないのに、道のりはかなり遠そうです。

                さらに、増えた分のアミノ酸を合成することには余計にコストを取
                られるわけで、それだけの投資からどんな見かえりをその生物が
                受け取れるのか、はなはだ疑問です。

                理屈の上では現在のコドンでも60種類程度のアミノ酸をコード出来る
                のにも関わらず、現実の生物では20種類であるという事実は、進化
                の過程でそれ以上アミノ酸の種類を増やしたとしても、その合成に
                必要なエネルギーとそこから得られる利点(生存上の優位性)を秤に
                かけた結果選択されてきた結果だと思うのですが、これは「生体の
                アミノ酸はなぜL体ばかりなのか?」という問いと同様に、なかなか
                検証して答を出すことが難しい問題だと思います。

                その意味で今回の研究結果は、もしかするとそのヒントが得られる
                かも知れないという点で興味深々なのです。
                --
                Eureka !
                親コメント
              • 6塩基生物の話はSFになるので、僭越ながらパス。

                (たとえば)Cell Free系でタンパク質を作るときなんか、
                アプローチにはおおまかに二通りあって

                理学的手法:
                まずは立体構造から構造と活性の相関を調べ、反応の本質を
                結論付ける。
                (構造活性相関を演繹的に求める)

                工学的手法:
                片っ端からいろんな物質の誘導体を作って(オリジナルを微妙に
                モディファイしたものを何通りも作成して)片っ端から試験して
                活性の高い物質を得る。
                (構造活性相関が帰納的に求められる)

                で、この場合、たとえば工学的手法において、
                「ああ、この酵素の、この部分の電子密度をあとちょっと
                高められれば活性上がるかもなぁ…
                でも、そんな高い電子密度を持つアミノ酸ないし…」

                なんてときに、新たな手法になる(かもしれん)わけです。

                あ。当然ながら、70個のアミノ酸をコードできたとして、
                70個すべてのアミノ酸を使う「必要」なんてありませんからね。

                4^3=64パターンあるコドンが、なんで20個しかアミノ酸を
                コードしてないかなんてのは、それこそrRNAに聞いてみないと
                わかりませんが(^^;
                アミノ酸とRNAのinteractionがあまりにもstrictになると
                エラーが頻発してしまうからかもしれませんね。
                親コメント
            • by G7 (3009) on 2002年02月02日 0時34分 (#59389)
              >・・・・自分で作り出せないアミノ酸があると、すごく生き延びるのが辛そう(汗)。

              それを補うために地球生命が発明した偉大な(ないしは絶望的な)発明が、
              「捕食」だったような気が。

              自分で作れないなら他所から奪おう、ってことですね。
              残念ながらコピーフリーとかとは違う概念ですが。

              ところで、塩基コンパチじゃないってことは、
              食べても全然おいしくない、のでしたよね?(^^;
              消化すらできなかったりするかな。ビニールかじってるようなもんだろうな。
              親コメント
          • by Anonymous Coward
            タンパク質の構成成分になるアミノ酸は20種だけど、自然に存在するアミノ酸ってもっとあるよね。でも70個もあるのかなあ?
  • by oddmake (1445) on 2002年02月01日 8時33分 (#59207) 日記
    クロロチロシンって動脈硬化に関係あるらしいので、この生物がもし外に漏れてもすぐ病気になって死ぬので問題ないでしょう(違)
    --
    /.configure;oddmake;oddmake install
  • ならば (スコア:1, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2002年02月01日 16時16分 (#59305)
    2bitコンピュータを3bitに拡張した様な もんだ(違)。
     どうせならば、それをパリティに利用して、癌の発生を抑制するメカニズムの組み込みきぼー。
    • by tada (5086) on 2002年02月01日 20時37分 (#59344)
      それはすばらしい!と思ったのですが、
      進化、適応能力も超低下してしまうのは困りますね。
      親コメント
      • by Anonymous Coward
         生殖細胞内ではノンパリティ。
         受精したらパリティチェックONって方向で。
  • これから研究が進めば、S,Y以外の人工塩基が登場して、
    例えばテロメアの塩基を入れ替えたりしてヒトの寿命を今より格段に延ばせたりとか、
    BMのように人工の生物がつくられる日が来るのでしょうか。とても今後が気になります。

    ネット端末遺伝子みたいなものも出てくるのかなぁ。
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日々是ハック也 -- あるハードコアバイナリアン

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