半導体より小さく消費電力も少ない「原子スイッチ」 64
ストーリー by Oliver
出ては引っ込んで 部門より
出ては引っ込んで 部門より
akiraani 曰く、 " asahi.comの記事によると、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)などが銀原子の突起の伸び縮みでオンとオフを切り替えられる極微の原子スイッチを開発したとのこと。(プレスリリース) 原理は、白金と硫化銀の電極に対し電圧をかけることで、金属クラスターの形成を制御し、物理的にスイッチをオンオフするというもの。電気抵抗の変化を利用するわけではなく、本当に物理的にスイッチをオンオフしている、という点が実に興味深い。主な特徴は以下のとおり。
- デバイスのサイズが小さい(一辺10ナノメートル以下)
- 動作電圧が小さく、消費電力が少ない(最小動作電圧:約10mV)
- 高速動作が可能(少なくとも約1GHz)
- オン状態の電気抵抗が小く(1kΩ以下)、配線遅延が発生しない
- 簡単な構造なため、低製造コストで超高集積化が可能
デバイスの密度、動作電圧などが優れているため、小型デバイスやニューロコンピュータへの応用が期待されているようだ。ちなみに、asahi.comの記事には「5年以内に試作品を作って、10年以内に製品化」とあるが、プレリリースには製品化時期についての記述は見当たらなかった。"
現時点では600mVの電圧で1MHz動作する論理回路の作成に成功しているようだ。オンとオフ、0と1だけでなく、複数の量子化された状態も取ることができ、電気がなくとも状態を保持できるので、将来は高密度のデータ保存用の媒体としても期待できそうだ。この特性を反映し、ネイチャー1月6日号掲載論文のタイトルはQuantized conductance atomic switch (量子伝導原子スイッチ)となっている。
関連 (スコア:2, 参考になる)
とか.
寿命 (スコア:2, すばらしい洞察)
> 銀原子の突起の伸び縮みでオンとオフを切り替えられる
金属というと
・暑くなると伸びたままになっちゃうとか
・長い期間使ってると金属疲労で突起が取れちゃうとか
この分野に全く無知なのでこんなイメージをしてしまう・・・・
Re:寿命 (スコア:3, 参考になる)
「伸びてつなぐ」というよりも,電極間に「金属微粒子が生えてきて」
繋ぎ,Offの時は逆に「金属微粒子が基盤に溶け込んでいって」切れます.
ですので暑いと伸びたまま,ということはありません.同様に,溶けて
ますんで金属疲労,とかもありません.
#そもそもそういうバルクな現象がおきないほど小さいサイズです.
ただ,耐久性等はやはりまだ未知です.硫化メタルのウェハー上での
経時変化とか,いろいろ問題になりそうな部分ももちろんあります.
Re:寿命 (スコア:2, 参考になる)
言うのは金属そのものの老化ではなく内部の細かい亀裂の増加
によるものを指します。
ですのでこのサイズだとそもそも亀裂が入れませんので
「金属疲労」はないでしょうね。
しかし原子を動かしていけば実際には老化は発生するので、
永久に持続できるというわけではないと思われます。
ちなみにきちんと作ればウェハ上での安定性はあまり問題に
ならないと思われます。
Re:寿命 (スコア:1)
Re:寿命 (スコア:1)
座るとオフ
#私の名前は原子(げんこ)。
物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:1)
火花が飛ばないのかな?
磨耗しないのかな?
音はしないのかな?
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:3, 参考になる)
>チャタリング起こさないのかな?
起こすのかもしれません。
ですが、今一般でイメージしているようなチャタリングは
ないでしょうね。言ってみれば極細の針をぷすっと刺すような
スイッチの仕方ですから、チャタリングの影響はそもそも
少ないでしょうし、小さすぎますね。
極限まで小さい時間で見ればチャタリングのようなことが
起きている可能性はあります。
>火花が飛ばないのかな?
さあどうでしょうね?(笑)
アークが出るほど電圧がかかるとは思えませんし、そもそも
この架橋によるスイッチ自体小さすぎますからそれほど
電位がたまっているとも考えにくく、アークが走るとは
考えにくいです。
電子が一個二個ジャンプしてもアークにはなりませんし。
>磨耗しないのかな?
物理的に金属の一部が延びたり縮んだりしてスイッチしますので
摩擦する部分はありませんね。ですので磨耗はしないかと。
厳密に言えば疲労が0ではないのでいつまでも同じ状態ではない
と考えられますから、永久に使えるかは分かりません。
>音はしないのかな?
音というのは通常摩擦なり接触なりのときに発生します。
このモデルだとどちらかというとアメーバ(笑)を投げて
橋を繋いでいるような感じなので、サイズ的にも音は出ない
でしょうね。
これも厳密に言えば音は0ではないかもしれませんが、
そもそも素子が外気に触れているとは思えませんし、
音が素子の外にまで出てくることは不可能でしょう。
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:3, 参考になる)
>この架橋によるスイッチ自体小さすぎますからそれほど
この部分だけ気になったので、CMOSアナログ回路入門 [cqpub.co.jp]によれば、
2.1.4 最先端MOSFETの特性
チャネル長L=0.1umの素子にドレイン電圧VDS=1.0Vを印加すると、
チャネル内の平均電界は10^5V/cmにも達します。この電界は1cmの
距離に10万Vもの電圧を印加することに相当します・・(略)・・
電界が低ければ電子の速度は電界に比例するというオームの法則が
成り立ちしますが、高電界中では電界によらず一定(速度飽和)と
なります。
コラムD 高電界中では電子の速度は飽和する
・・(略)・・電子の速度は電界に比例して無限に速くならない。
これは飛行機の速度が、エンジンの馬力に比例して速くなるものの、
音速に近づくと飛行機の先端に発生する衝撃波によって音速を超え
にくくなるのに似て今う。エンジンへ供給したエネルギーの大半が
衝撃波という巨大な音を発生することに費やされるからです。
これと同様に電子もエネルギーの大半を格子振動に費やすため、
電子の速度は飽和速度(~10^7cm/s)で頭打ちになるのです。つまり、
「電圧は抵抗と電流の積で表される」というオームの法則は、高電界
中の電子に対しては成り立たないのです。
・・・ということらしいです。原子数個レベルだとさらにいろいろな効果が起きそうです。
ちなみにこの本 [cqpub.co.jp]、ひずみシリコンとか、LLDMOSFET、
タングステンのプラグ技術やCMP工程など、LSI最新技術が
ふんだんに載っていて面白いです(かつ難しくてまだ5章までしか読めないorz)
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:1)
>音というのは通常摩擦なり接触なりのときに発生します。
私が思っていたのはちょっと違います。
今回のスイッチは物理的に形状が変化するのでオンの時とオフの時ではスイッチ全体のその重心位置が変化します。そしてこのスイッチは非常に多数の素子をワンチップに集積して使うことになるでしょうから、その多数のスイッチを全部同時にオンオフしてやれば素子全体が振動して音が発生するような気がします。
#ちょっと違いますが、セラミックコンデンサなんかも音がでますし。
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:1)
ああ、そういう全体的な音ならば出る可能性はありますね。
1個が小さいので作りこみの個数にも寄るとは思いますが、
多量のスイッチを高速で同時に動かすことになるでしょうから、
振動(→音)は発生するかもしれません。
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:2, おもしろおかしい)
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:1)
「出たり引っ込んだり」ではなく、析出と溶解が繰り返される仕組みですから、
>チャタリング起こさないのかな?
>磨耗しないのかな?
これらに関しては、起きないのではないでしょうか。
>音はしないのかな?
これに関しても、周波数的にも大きさ的にも、少なくとも人間の耳には聞こえないでしょう。
Re:物理的なスイッチと聞いて気になること (スコア:1)
> チャタリング起こさないのかな?
> 火花が飛ばないのかな?
このスケールになると該当するのは量子トンネル効果ですかね. 残り1原子ぐらいの隙間があるはずなのにトンネル電流が流れちゃったりして.
> 磨耗しないのかな?
元に戻る際に, 相手側の原子を1層分ぐらい余計に引っ張って凹みを作ったりして. で, 次に接続しにいったら凹んだ分だけ距離が足りなくて接触不良とか.
学習機能 (スコア:1)
Re:学習機能 (スコア:2, 参考になる)
条件を整えてやれば,一回目はRの抵抗で,二回目はR/2,って感じで
4回目ぐらいまで記憶できる(以降R/4のまま)とか.
#値はいい加減
学習機能って宣伝できるほど凄いわけではないですが,まあ特徴といえば
特徴かと.
#半導体素子でも,いくつか組み合わせれば似た回路は組めます.
#今回の場合は,素子自体にその機能もあるよ,というだけで.
Re:学習機能 (スコア:1)
Re:学習機能 (スコア:2, すばらしい洞察)
# 注意: リリースの下のほうの図を見てのあてずっぽ
電圧をかけるとONで、逆電圧をかけるとOFFになるようなので、要するに双安定性をもつってことでは。
Re:学習機能 (スコア:2, 参考になる)
ONにすればONのまま、OFFにすればOFFのままが維持される
ハード的なスイッチと同じような動作をします、ということの
ようですね。
電子そろばん?(笑)
メモリみたいに電気を流して保持しなくてもいいよ、ってことでしょう。
Re:学習機能 (スコア:2, 参考になる)
プレスリリースより.
>原子スイッチは、信号パルスを入力するたびにその電気抵抗が徐々に小さくなる、
>あるいは大きくなる状態で動作させることが可能である。これを用いて、情報の履歴
>を原子スイッチに記憶させることができる。
ということです.一応多値の記憶ができますんで,多段階の学習は
可能です.
#でもこれを学習効果というのもどうかなあと.
Re:学習機能 (スコア:1)
Re:学習機能 (スコア:1)
正しくは,「そういう条件に設定して使うこともできる」ですが.
毎回きれいにリセットされるような条件で使うこともできます.
Re:学習機能 (スコア:1)
それは読んでましたが、これを学習機能と呼ぶのはどうかというのと
(発表者はそう思っているのかもしれませんが)
原理的な話であって実装上は意味があるのか不明な気がします。
動作チェックをどうするんだとか。
プレスリリースにもぼかした書き方をしているのであえてこちらは
指摘しませんでした。
Re:学習機能 (スコア:1)
ニューラルネットワークも作成できるのではないでしょうか?
学習法もとりあえずはBP法あたりでやってみると、とりあえずは
論文が書けそうな気がします。
電気抵抗値=ニューロン間の結合係数として学習を進める、と。
おもしろそうかも:-)
飲めば飲むほど弱くなる〜
なので最近禁酒中〜 :P
Re:純粋な疑問 (スコア:1, 参考になる)
磁場,重力の二つは,大きな物体で無いとなかなか効いてきません.
磁場なんかだと,普通の原子一つに対して室温の熱エネルギーに比べて
十分大きなエネルギーを与えようと思ったら,通常の超伝導磁石の数十倍以上
の磁場をかけてやらんと全然話になりませんから.
Re:学習機能 (スコア:1)
Re:学習機能 (スコア:1)
間違いないでしょう。
「固体電解質で」というと電池のメモリ効果を思い出してしまうの
ですが、しばらくつかっているうちに「忘れられなくなっちゃう」
みたいな現象がでそうな感じもしますね。
たまに「ディープサイクル」と称して、「全部忘れる」というメン
テナンス動作が必要になったりして:-)
白金と硫化銀の電極 (スコア:1, 興味深い)
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:1)
小さいから心配いらないのでは?
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:1)
「素材が高価」なのは間違いないですね。
ただ、出来上がるチップ(?)が小さければあまり高い気が
しないというだけの話で。
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:1)
1を聞いて0を知れ!
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:1)
金とかが使えれば…
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:2, 参考になる)
数円くらい?
素人目には、このデバイスのPt側は「反応性の低い導電物質」
で置き換えられそうな感じもするのですが、どうなのでしょう。
Re:白金と硫化銀の電極 (スコア:1)
集積回路にまわせる量なんて・・・
こりゃあ、月を掘るしかないかな。
消費電力 (スコア:1)
抵抗が小さい? (スコア:1)
屍体メモ [windy.cx]
Re:抵抗が小さい? (スコア:3, 参考になる)
これは何かというと,もはやサイズが小さいのでスイッチを作る
金属内では散乱が無く(バリスティックな領域),実質抵抗ゼロで
電気は流れるのですが,スイッチ自体が小さいため「スイッチ内
に電子が入りにくくなる」ということに由来する抵抗です.
#例えば,どんなに速度が出せる橋でも,片側一車線しかなければ
#交通量が多いときに橋の入り口で渋滞しますよね.そんな感じです.
で,量子抵抗の大きさは決まっていて,Rc=h/(2e)^2=6.45kΩです.
#hはプランク定数,eは電荷素量.
チャンネル数が多くなる(上の例えで言うと橋の本数が多くなる)
と抵抗はRc/Nに変化します.
#Rcの抵抗を持つ橋がN本並列になったもの.
ですので,抵抗はこの値以下にはできません.
今回のケースでは,絶縁(1/R=0),Nが1,2...6までを順次作っていて
(というか同一デバイスに電圧をかけて接続本数を増やしていって),
抵抗が∞,6.45k...約1kまで実験しています.
チャンネル数があんまり増えると微細化の意味が無いんで,まあ抵抗は
この辺でやめておこうと.
#Natureの論文も参照してください.細かく書いてます.
#繰り返しますが,スイッチ内はバリスティックなので抵抗ゼロです.
#でも超伝導ではありません.
めちゃ参考になりました (スコア:1)
これでも大学生の時は超流動関係の実験がメインテーマだったんだよね。理論の方はおろそかで、現実にはほとんど粘性測定のためのバイブレーティングワイヤー作り職人だったけど。まだ大学にアカウントあるんで論文とかちゃんと読んでみるかな…って、そんな暇あるんかい>俺
屍体メモ [windy.cx]
Re:抵抗が小さい? (スコア:1, 参考になる)
極小ポッチを出したり、引っ込めたりできる! (スコア:1)
ナノブリッジとの違いは・・・ (スコア:1)
使うか、FPGAライクなプログラマブルなロジックの配線結線スイッチとして
使うか、って事ですかね。
#ナノブリッジの金属架橋はCuで、こっちはAgですか。
#しかし、スイッチング時間が書いてないんだが、どのくらいの
#時間のオーダーで変わるんだろう?
---- redbrick
Re:ナノブリッジとの違いは・・・ (スコア:1)
よく読みましょう.ちゃんと書いてあります.
元論文のほうだと測れたのは1MHz(これ以上は測定上の問題で測れて
いない),でも冪で乗ってくるんでたぶん1GHzは出てると著者は
信じてる,と明記されてます.
#具体的にはNatureの論文を参照のこと.
#でもこれがプレスリリースになると「少なくとも1GHz」に化ける(苦笑).
Re:ナノブリッジとの違いは・・・ (スコア:1)
1MHzのスイッチング時間まで測ったってのはありますね。
わたしが知りたいのは、on,offにかかるそれぞれの所要時間なんですが、
そこまではまだデータが出てきてないのかな?
・・・論文の方からも特に時間のデータは読み取れないですね。
#データの裏づけのない、研究者の希望的観測なんてものは、
#わたしはまったく信用するつもりはないので、1GHzって数字は
#考慮に入れるつもりはありません。
#研究者なら、他者が追試可能なデータ出してからモノを語ってほしい。
まあ、面白そうなモノであることは確かです。
---- redbrick
配線幅は (スコア:1)
原子スイッチにより構成した基本論理演算回路 [jst.go.jp]を見たら、普通の配線みたい。
配線幅を狭くする技術は、まだ余裕があるんですか?
「携帯、充電せずに1ヵ月?」 (スコア:1)
「充電せずに1-2ヶ月使える携帯電話機なのどにつながる可能性がある」
と記事にあったが、本当?
マクロの基本は検索置換(by y.mikome)
アトミック・スイッチ (スコア:0)
ポチっとな (スコア:0)
Re:ポチっとな (スコア:1)
Re:タレコミ分の箇条書き (スコア:1)
>動作電圧が小さく(最小動作電圧:約10 ミリボルト)、そのため消費電力が小さい。
おそらく「消費電力が小さい(~)」に修正しようとして消し忘れがあったんじゃないかと思います。
#ちなみに、この部分はプレリリース詳細からのコピペです。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
Re:タレコミ分の箇条書き (スコア:1)
いや、それよりもなによりも、電圧だけ書いて電流が書いてないんじゃ、
電力は計算できないんじゃないかと思いますが。
原文のpdf [nims.go.jp](2頁26行目)には、
> 動作電圧が小さく(最小動作電圧:約10ミリボルト)、そのため消費電力が小さい。
とありますね。