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法廷

関係のない住所に訴状が送られた民事訴訟で敗訴し、いつのまにか銀行預金を差し押さえられた件 104

ストーリー by nagazou
ナニガナンダカ 部門より
大分市でいつのまにか民事訴訟で訴えられ、訴訟を知らないままに敗訴した結果、銀行預金を差し押さえられたというトラブルがあったという。このトラブルに巻き込まれた飲食店を営む女性が、執行力の排除を求めて裁判を起こしている(西日本新聞ニュース)。

この女性が銀行や裁判所などに問い合わせた結果、債権差し押さえ命令が出ていたことが分かったそうだ。弁護士による調査では、訴状には被害に遭った女性が住んだこともない住所が記載されていたという。さらに訴訟記録などを調査したところ、元従業員の男性が予告なしに解雇されたとして、訴訟を起こしていたことが判明した。

熊本簡裁はこの男性が記載していた住所に一度訴状を送ったが戻ってきたという。しかし、男性側に確認したところ、電気や水道のメーターが動いているなどの書類が提出され、裁判所側は発送時点で届いたとみなす訴状を同じ住所に発送した。これによりいつのまにか裁判が始まっていたらしい。
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  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 11時03分 (#3968248)

    一々コメント付けようとしたけど、投稿制限で個別に付ける余裕がないので単独で書くけど

    ・まず、裁判所の役割として、被告の所在を探し出して住所等を確定させるべきというのは筋違い。それは原告の役割。裁判所は原告が指定した被告の住所等に訴状を送付すれば足りるので、それ以上に実際その住所等に被告が現住するかなど調査するべき義務はない。そうなると、今回みたいに被告と無関係の住所に送付されて裁判が開始されて被告敗訴で確定した場合の後処理が問題となるけれど、そもそも被告に裁判に関与する機会が与えられていなかったのだから、控訴の追完(通常と違って期間経過後も可能な控訴)や再審の訴えで判決を取り消すことになる。このケースでは請求異議訴訟(「判決の執行力を排除する訴え」)を起こしたようだ。

    ・住所等含めて申立内容を確認しないという指摘も筋違い。申立内容に齟齬がないかは訴状審査の段階で行うべき話ではなくて、本案審査の段階での話。訴状審査では被告の情報がきちんと埋まっているか、申立の趣旨や理由がそれなりにもっともらしく書かれているか程度しか審査しない。たとえば、申立理由に「不満なので裁判起こしました」としか書いてなかったら訴状は受理されない。その程度。ましてやURLの違いなんて一々チェックするわけがない。

    ・基本的に民事事件というのは原告と被告の言い分を両方聞いて調整するのが役割なので、刑事事件みたいに真実の究明なんてことに目標を置いていない。たとえそれが原告の作り出した虚実であっても被告がそれで納得するのだったらそれとして認定するのが裁判所の役割。なので、原告が主張した事実に被告が有効な反論をしないのだったら、たとえそれが真実と異なっていたとしてもその通りに確定する。それ以上に裁判所が首を突っ込んで「いや、真実は違うところにあるのではないか」という疑問を差し挟むことはしない。これが当事者主義という民事事件の大原則。原則というからには当然例外もある。境界確定訴訟とかその辺は調べてください。

    ・したがって、裁判所がよく調べもせずに差押えまでした責任が云々という話もおかしくて、そもそもそのような責任は裁判所にはないので、この簡裁の「現時点で手続き上の問題は確認されていない」というのはその通り。責任がないのだから、被告側の弁護士が追及しないのも当たり前のこと。

    ・原告に詐欺罪や公文書偽造罪が成立するかだけど、詐欺罪はいわゆる訴訟詐欺の典型例なので成立する可能性が高い。公文書偽造罪は、訴状自体が公文書(公務所または公務員が作成すべき文書)ではないから成立しない。では私文書偽造罪かと言うと、作成名義人はあくまで原告となっていて、名義を偽るわけでもないので、これも成立しない。なんかおかしいんじゃないかと思うかも知れないけど、訴状をでっち上げた行為は詐欺罪で評価し尽くされているので、それで構わないという発想がされている。それで、こちらは被告側が起こす刑事事件なので、賠償は別に民事事件として起こさないといけない。それが被告側がすでに起こしている「精神的な苦痛を受けたとして男性に慰謝料などを求め、大分地裁に提訴」というもので、これはおそらく不法行為による損害賠償責任を追及しているのだろう。

    ・それから、送達に関して、本件の「付郵便送達」のことを簡易書留や一般書留の間違いじゃないかと訝る意見があるけど、通常の送達は特別送達という郵便(分類上は一般書留の特殊形態)を使って行われていて、対面でないと受け渡しができない。そうなると、訴状さえ受け取らなければ裁判は始まらないだろうと高を括って居留守使う被告が出てくるので、そうした場合に対応する手段がこの付郵便送達。これが日本独自の特殊な制度なのかについては知らないけれど、たしかに米国 [itlaw.jp]では類似の制度はないようだ。

    総じて裁判所の役割に対する期待が高すぎる印象を受けたけど、裁判所ってそんなに高所からあれこれと調べてくれるわけじゃない。
    以前、相手方が特定できそうになくて非常に苦労した経験があるが、スラド住民だとたとえば請負先の働いている苗字くらいしか知らない派遣社員にとてもひどい目に遭わされて、訴訟起こしたいんだけど派遣期間が切れたら職場への送達もできないし、派遣元企業に送達しようにも苗字だけでは裁判所が受け付けてくれないなんて事態は容易に想定できる。じゃあというので、請負先に名前まで開示するように求めてもトラブルには巻き込まれたくないとか個人情報は開示できないと拒まれたりして取得できなかったりする。もうそうなるとけっこうお手上げなんだよな。
    よく、「裁判起こせばいい」って軽く言うけれど、街中で遭遇したトラブルはもとより、職場においてだってある程度恒常的な人間関係でなければ裁判なんて起こすのすら困難であるというのは日頃から認識しておいたほうがいいと思う。

    • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 13時29分 (#3968353)

      > 基本的に民事事件というのは原告と被告の言い分を両方聞いて調整するのが役割なので、刑事事件みたいに真実の究明なんてことに目標を置いていない。たとえそれが原告の作り出した虚実であっても被告がそれで納得するのだったらそれとして認定するのが裁判所の役割。

      でも今回の件って、そもそも被告は裁判が起きている事自体知らないし、裁判所は被告の言い分を聞いていないし、被告はまったく納得していないじゃない。

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    • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 15時16分 (#3968436)

      一言で書くと「裁判所はそこまで悪意のある訴訟には対応しておらず、詐欺罪として警察の領分になる」と理解した。

      親コメント
  • お役所仕事 (スコア:4, 興味深い)

    by Anonymous Coward on 2021年01月29日 6時43分 (#3968092)

    熊本簡裁はこの男性が記載していた住所に一度訴状を送ったが戻ってきたという。しかし、男性側に確認したところ、電気や水道のメーターが動いているなどの書類が提出され、裁判所側は発送時点で届いたとみなす訴状を同じ住所に発送した。

    この部分、たれこみにある西日本新聞ニュースの記事だと

    熊本簡裁は男性側が記載した住所に訴状を送ったが、いったんは届かずに戻ってきた。その後、男性側は「電気や水道のメーターが動いている」「飲食店は営業していない」などとする書類を提出。熊本簡裁はこれを受け、発送時点で届いたとみなせる「書留郵便に付する送達」で訴状を同じ住所に発送し、裁判は始まったという。

    となってるの。裁判所は電力会社等に問い合わせるとか、飲食店に確認するとか
    してなかったという事か。差し押さえという公権力を認める割には杜撰やな。
    これで手続き上問題がないとか裁判所が開き直ったら悪用し放題やん。

    • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 11時07分 (#3968253)

      じゃあ、この場合の正しい手続きはなんだったのかというと、「公示送達」です。
      掲示板に掲示して届いたことにするというアレです。
      結局、勝手に裁判が始まって、敗訴して、差押られますから、結果は一緒です。

      # 原告が「メーターが動いてるし、居留守使ってるみたいですぜ」と報告したから、民事訴訟法107条3項で届いたとみなしたわけです。
      # しかし、原告が「どこかに引っ越してて不明」と報告したら、同法110条3項の公示送達手続きに移ります。

      親コメント
      • Re:お役所仕事 (スコア:2, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2021年01月29日 11時34分 (#3968273)

        補足しとくと、郵便が届いたとみなして欠席裁判する場合は、自動的に原告敗訴になります。
        一方、公示送達の場合は、自動的には敗訴になりません。しかし、反論できないわけですから、よほど滅茶苦茶な訴えでない限り、ほぼ確実に負けます。

        こういったみなし送達や公示送達などの制度は、居留守や雲隠れによる被告の逃げ得を許さないためのものです。
        また、原告の嘘で敗訴しても、被告は再審が可能、被告から原告への損害賠償請求も可能、原告は詐欺罪が適用される可能性有ということで、今のところ大きな見直しもなく続いているわけです。

        親コメント
        • Re:お役所仕事 (スコア:2, 参考になる)

          by Anonymous Coward on 2021年01月29日 12時59分 (#3968335)

          ×自動的に原告敗訴になります
          ◯自動的に被告敗訴になります
          訂正します。
          #短時間での推敲は難しいなあ。

          親コメント
      • Re:お役所仕事 (スコア:2, 参考になる)

        by Anonymous Coward on 2021年01月29日 12時06分 (#3968293)

        ×民事訴訟法107条3項で
        ◯ 民事訴訟法107条3号で
        訂正します。

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    • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 8時01分 (#3968117)

      地裁まではトンデモが多いというのはさておき、相手の所在確認は訴えを起こす側の弁護士の仕事じゃないん?
      特別送達って受け取り拒否できない事になってるから、本来は最初に戻ってきた時点で所在確認しないといけなかったのは簡裁のミスだけど。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      いまは削除された「大夜逃げ学」というサイトを見ると
      サラ金から借りて多重債務者となった人の財産を特定して
      「連絡つかないんですよ」と裁判所にアピールして
      仮差押えするのはよくあるルーチンみたい

    • by Anonymous Coward

      ナニ金でもあったけど、裁判所は騙されると言うことに全く備えが無いんだよ

      • by Anonymous Coward
        誰の言うことでも何でも鵜呑みにするのに被告人の主張だけは嘘と決めつけるタイプ
  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 6時52分 (#3968093)

    2ちゃんの削除板を出入りしてた者としては、仮処分で書き込みを削除するスレが弁護士によって立てられた時、
    あきらかに令状に乗ってるURLが間違っていたり、他の掲示板のURLだとしても、仮処分が通っていたので、
    URL先の内容を見るだけの簡単な作業や、見なくてもURL文字列がその債務者の管理下のサイトかどうかの確認すらやらないのだから、
    裁判所は申し立て内容の確認せずに、担保金さえ積めば言いたいことが通る杜撰な場所なんだなってずっと思ってる。

    同じことは偽装DMCA通知でむりやり削除・凍結させてるのも言えるけど、
    こうやってたくさんの人のモノが不正に法的な権力で消されたり奪われたりしているんだろうね。

    • by Anonymous Coward

      そして裁判で満足に戦うには金と時間がかかりすぎて満足に対応できる人間は限られる。
      加えて当事者にならなければ分からないので理解されない。

    • by Anonymous Coward

      そうですよ。簡易裁判所や地方裁判所は、裁判官を納得させる事ができれば多少の間違いがあっても問題なく進められます
      間違っていた事が後でバレ…わかっても、書記官が「ここが間違ってたので訂正します」という文書を書留で送りつけて終わりです

      裁判所は別に正義を執行する施設でも組織でもなく、文書に書いてある事を淡々とこなすだけのお役所でしかありません
      裁判官や書記官もただの人でしか無いですし、有能な人もいればクズもいます

    • by Anonymous Coward

      その辺りはそもそも正確な情報を得るのに裁判が必要だから仕方ないって所も。

  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 11時03分 (#3968250)

    裁判系の手続きって、住所(住所がなければ居所、等)と氏名で人を特定するはずだから、関係ない住所+氏名で執行かけても、銀行側は該当する人の口座は存在しない、と回答するんじゃないのかな…。

  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 6時19分 (#3968091)

    この女性を訴えた理由があるのは事実っぽいけど、良く確かめずに差し押さえた簡裁に対する責をはっきり追及しない弁護士も何だか?

    • by Anonymous Coward

      その訴えた男性が、詐欺とか公文書偽造とかで逆に訴えられて、
      賠償金はらって終わりじゃないのかな……教えて偉い人

      そういう仕組みになってれば、こういう虚偽事項で裁判所を
      欺すような真似は普通はしないだろう。それをいちいち内容を
      全部確認して裏付け取ってたら、職員がいくらいても足りんわ。

      • by Ryo.F (3896) on 2021年01月29日 7時51分 (#3968111) 日記

        その訴えた男性が、詐欺とか公文書偽造とかで逆に訴えられて

        わざと偽情報を訴状に記載した、ということなら、そうなる可能性もあるんかな?
        あるとしても、それを証明することはできるんだろうか?
        わざとではないとして、詐欺でも偽造でもない、と言い張ることもできそうな…

        親コメント
        • by Anonymous Coward

          むしろ勘違いしたのは仕方がないと思える証拠を出してもらわないと嘘をついたと判断されるのでは。

        • by Anonymous Coward
          単に住所を間違えたのであれば意図的ではないと言えるかもしれませんが

          >男性側に確認したところ、電気や水道のメーターが動いているなどの書類が提出され

          と現地で確認したと主張しているので言い逃れは難しいでしょう
    • by Anonymous Coward

      これいくらでも応用ができそうで怖いですね。

  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 8時27分 (#3968130)

    裁判所から送った訴状が戻って来た時点で、
    「何々裁判所で~す。おたく訴えられてるんで訴状送ったんだけど戻ってきたよ。住所ココで合ってる?」
    って電話1本すれば防げるような事態だと思うんだけど、それもやらないんですかね。
    面倒でやらないの? 法律的に手順が決まってるから出来ないの?
    それとも起訴された人の電話番号が判らないとか?

    • Re:教えて偉い人 (スコア:5, 参考になる)

      by Anonymous Coward on 2021年01月29日 19時36分 (#3968731)

      去年、民事裁判で散々裁判所に走らされた経験から書きますよ。

      訴状には、被告の氏名と住所を記載するけど、一般的にはその住所が最新の情報である事を証明するように、裁判所が原告側に要求してきます。具体的には、被告の最新の住民票を提出するように求められる。

      最近は役所も個人情報保護を理由に、住民票の第三者請求を拒否してくるけど、裁判所からの「被告人〇〇の住民票を提出しろ」という指示書を提示すれば、すぐに発行してくれます。裁判所もそれがわかっているので、わざわざ書面で提出を要求してくる。

      最新の住民票を元に裁判所が特別送達しても、受取人不明で返ってきた場合は、原告に現地調査を要求してきます。裁判所は自分では動かず、原告が現地に行ってあれこれ調査するように要求するだけ。住民が実際に住んでいるか、周辺住民に聞き取りしたり、電気メーターや水道を使った形跡があるか調べたりして、これ以上追跡調査は不可能だと調査報告書を出すと、公示送達の手続きに入り、実際には被告に連絡が付かなくても送達完了した事になって裁判が始まります。

      その経験からすると、訴えられた女性も住民票を異動していないなど、不備があったのではないかと予想します。

      親コメント
    • by Anonymous Coward

      「起訴」はさておいて・・・

      一般に、借金の取り立て等で逃げ回ってたり、あるいは電話に出ないとかで取り立て逃れをしようする人は一定程度いるので、
      電話ぐらいでは確認にならない。
      仮に電話しても「人違いでーす」ってウソをつかれたらどうするのか。

      • by Anonymous Coward

        それはそういう嘘をつかれた時に次の行動をどうするかというものであって、
        最初から電話をしない理由にはならない。

    • by Anonymous Coward

      訴えるのに被告の電話番号いらないし、「電気や水道のメーターが動いている」いるなら、裁判所も騙されたということで、それなりの対応をするしかない。

      • by Anonymous Coward

        「電気や水道のメーターが動いている」や「飲食店は営業していない」が、なんで被告がそこに住んでる理由になるんだろうか。
        住所が合ってることは頭から疑ってなくて、居留守使ってる前提で話進めてる感じがして、根本的な所の確認になってないだろ!と思ってしまう。
        アホな記者が変に端折って書いたという可能性もあるけど。

  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 10時00分 (#3968199)

    ってなんだっけ

  • by Anonymous Coward on 2021年01月29日 10時42分 (#3968230)

    付郵便は男性側が裁判所に出した証拠を精査して出すものだから
    男性側が提出した「電気や水道のメーターが動いている」「飲食店は営業していない」「など」とする書類に
    電気や水道のメーターが動いているがちゃんと訴えられた女性が関与している証明があったとか
    女性が飲食店は営業していないことを確実に証明できるものが含まれていたなら裁判所の判断は問題ないと思うけど
    そうじゃなかった場合は裁判所の落ち度。
    んでもって女性の言い分が正しい、かつ裁判所が受け取った書類が判断に問題ない内容に仕上がってたのであれば男性側の偽造だよね・・・
    てか最初ちらっと読んだときは
    男性とは全く関係のない女性がいつの間にか起訴されて差し押さえ喰らった話かと思った、長文になって失礼

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