田中耕一氏がノーベル化学賞受賞 91
ストーリー by yourCat
続け続け 部門より
続け続け 部門より
yanagi曰く、"ノーベル物理学賞に続いて島津製作所の田中耕一さんが受賞した模様です。"
ribbon曰く、"「生体高分子の同定および構造解析のための手法の解析」ということでだそうです。
連続して日本人にノーベル賞が送られることになりました。いや、めでたい。また号外が出るんでしょうね。"
島津製作所のサイトにはまだニュース・リリースがない。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の各記事によると、タンパク質にレーザーを当てイオン化して飛ばし、その飛行状況から質量分析する手法を開発したことが評価された。おめでとう。
MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:3, 参考になる)
ヒトゲノムプロジェクトで遺伝子レベルでの解析が進んだ後、次はそこから実際に出来上がってくる蛋白質を直接解析しようとする「プロテオミクス」研究が進行していますが、それを支えている重要な分析装置の一つにMALDI-TOF/MS(*)があります。その基盤となったのが田中氏の受賞研究であるようです。
質量分析(MS)は大雑把にいうと、目的分子をイオン化させて電場に送り込み、その移動速度からそのイオンの質量を求めるものですが、従来の方式ではそのイオン化の条件が強く、分子自体が分解された小さなフラグメント(MW数百程度まで)として検出されてました(これを利用して低分子の分子構造を決定していた)
しかし、ソフトなイオン化の方法が開発されたことで、かなり大きなフラグメント(MWが数千〜数万)でも解析できるようになり、それを用いて現在では高分子である蛋白質の同定が可能となり、生化学の分野で非常に強力なツールになっています。
この分野でのMALDI-TOF/MSの利用(ペプチドマスフィンガープリンティングによる蛋白同定)はいずれはLC-MS/MSにとって代わられるものだと思いますが、その基礎を築いたことは非常に大きなことだったと言えます。
* Matrix assisted laser desorption/ionization - time of flight - mass spectrometry、マトリクス支援レーザー脱離イオン式飛行時間型質量分析計、マルディ-トフ-マス
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:1, 参考になる)
これでノーベル賞の一つもとれなきゃその方が嘘だ!
MALDIでなくても各種の電顕等でも一昔前には生物観察しようとすると良くて干物まかり間違うと黒焦げになったものですが、最近はみなさんの努力で生きている状態に近い細胞の様子を捉えることが出来るようになりました。
「夜中の方が像が安定するんだ!」とかいって昼夜逆転の生活を送っているみなさんにも愛の手を!
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:2, 参考になる)
> 「夜中の方が像が安定するんだ!」とかいって昼夜逆転の生活を送っているみなさんにも愛の手を!
確か電顕を設置する場所の近くに道路が有るとダメなんですよね. と, 金属結晶の研究室の同期が言っていました. 私は切削・研削加工なので走査電顕レベル止まり.
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:2, 参考になる)
あ、失礼。分子量(Molecular weight)です。水素原子=1の。
それから、MALDI-TOF/MSを用いたタンパク質同定はペプチドマスフィンガープリンティング [a-m-i.co.jp]と呼ばれてます。
まず、目的のタンパク質を蛋白分解酵素(トリプシンなど)で処理します。するとタンパクがその酵素で決まった特定のアミノ酸の部分で切られてペプチド断片が得られます。それをMALDI-TOF/MSにかけてやるとそれらのペプチド断片が検出されますが、実はそのすべてが検出されるわけではないです。しかもペプチド断片=連続したアミノ酸、ですから例えば途中のアミノ酸が入れ替わっただけのものは同一の大きさのものとして検知されます。
それで何故、タンパク質の同定が可能か、というとそこにはタンパク質データベースが充実してきた、という背景があります。
そのサンプルが得られた生物からこれまでに見つかった、既知の(データベース内の)タンパク質を同様に分解したときに飛ぶ断片の質量を計算して、実測で得られたピークから同じパターンになるものを推定しスコアリングするわけです。今の機器精度なら実測値と予測値の誤差は50ppm以下におさまりますし、全部のペプチドが飛ばなくても、あるいはいくらかノイズが混じっても、有効なペプチド断片が十分多く検出されれば同定が可能、ってわけです。
またタンパク質の解明が進んでなくてもゲノムが判っていれば、そこからコードされる蛋白の予想ができますから、そこから推定も出来ます。実際問題としてはいちばん使えるのはヒト、次いでマウス、他の生物でもゲノム全体が判ってれば同定できる可能性は高いです。
従来の蛋白同定の方法と比べるとデータベースさえあれば、感度も高く、また精製が完璧でなくても(余分なピークが数本増えるだけなので)使えるというのが魅力で、大体5〜10個のペプチド断片由来のピークが飛べば同定できますね。
#これがLC-MS/MSならそれぞれのペプチド断片のアミノ酸配列まで判るので2〜3本のピークで十分といいます。
#感覚的にはヒトの蛋白ならCBB染色で見える量のタンパクがあればまず100%、銀染色で見える微量だとものによって確率は落ちますが、はっきり見える小さいものならまあ何とか、って感じ。
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:2, 参考になる)
#つっても、がんがん同定するラボでは外部で検索する時間が惜しまれるので、質量分析システムにオフラインで出来るのが組み込まれてることも多いです。
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:2, 参考になる)
厳密に言うと、ペプチドマスフィンガープリンティングが行うのは、アミノ酸配列の決定というよりもタンパクの同定です。まぁタンパクが決まればアミノ酸配列もおのずと決まるのですが、アプローチの方向が異なるので。
日本語のいい解説が見当たらなかったのですが、ここにある図 [spectroscopynow.com]あたりが参考になるかと。
>で、田中氏の功績は、これまでよりも長いアミノ酸配列のタンパク質の質量分析ができるような方法を考案した、ということですね。
その礎を築いた、といった方がいいかもしれません。生化学の分野で現在使われているMALDI自体は田中氏というよりもFranz Hellinkamp [nih.gov]が考案したものと言う方がよさそうですが、その基本原理となる(マトリクスを用いない)soft laser desorptionを考案したのが田中氏、というわけで。
>同時に、質量分析の精度も上げないといけないような気もしますが、こっち方は問題ないんでしょうか?ひょっとして、これが「50ppm 以下の誤差」といっていることなんでしょうか?
まさにその通りです。ここらへんこそ田中氏がいろいろと試行錯誤したところでしょうし、こういう地味な部分の方が大変だったのでしょうけど、それこそ世界を変えるほどの「画期的な躍進」と呼べる部分ではないわけで、それだけではノーベル賞なんてありえなかった、あくまでlaser desorptionの考案こそが評価されたのだと。
MW (スコア:1)
より正確には、分子の壊れたものだから、分子量といってしまうのはまずいでしょうが、だからといって、用語を量産するのも考えものですから。
Re:MALDIの恩恵を受けてるものとして (スコア:1, 余計なもの)
肩書きは学士のみ (スコア:2, 参考になる)
日本の物理化学関係では初めてかと思っていたら
ノーベル化学賞全体で見てもそうだったのには驚いた。
--------------------
/* SHADOWFIRE */
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
探しているんですが、これというのが見つかりません。
だれか、ご存知の方は教えてください。
(多分、ムツゴロウさんみたいな経歴だと思うんですが)
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
読んだおぼえはあるんですが、記憶が希薄…
> 生理・医学賞のコンラート・ローレンツさんの経歴をさっきから
> 探しているんですが、これというのが見つかりません。
> だれか、ご存知の方は教えてください。
さくっと google で見つかりました [nisiq.net]が…
以下抜粋
「それがどうした、おれたちには関係ない」
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
ノーベル賞受賞の電話が来たとき自分とは思わなかった
(お父さんだとおもった)
とか、どこかで読んだ気がするんですが。
ますます、田中さんとノーベル賞の調査員えらい!
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
「15分後に重要な電話があるから」と電話してきた「ある先生」の正体が気になる。
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
地道なサラリーマンが得る栄誉、っていうテーゼが正しいか正しくないかはともかくとして、魅力的に映ります。真面目で勤勉が素晴らしい、って言葉にするとなんか社会主義的プロパガンダっぽくなってしまうけど、作業着で会見にでてきた田中氏は素直にカッコいいと思う。
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
田中さん、そんじょそこらの本職よりよっぽど「学者バカ」(ほめ言葉です)なんじゃないだろうか。
Re:肩書きは学士のみ (スコア:1)
「身だしなみにも興味がなく」と言うのはどんなもんなんでしょうね。 あの手のメーカーというのは、会社に来賓があったときなどでもあの ような「作業服」で応対するのは別に珍しいことではない(今の作業 服というのは「油でドロドロでダサダサの・・・」というようなもの ではないので)し、あの下に着ていたシャツにジーンズ、というのは 研究者だったらごくごく当たり前の格好ですよ(今僕もそういう格好 してますが)。
有り難みが (スコア:1)
勿論素晴らしい事に変わりはないんですが、それほどの連発ですよね。
Re:有り難みが (スコア:1)
日本のロビー活動にスウェーデン怒る 英紙報道 [mainichi.co.jp]
Re:有り難みが (スコア:1)
#宝くじの当選者より多いじゃん。
Re:有り難みが (スコア:2)
1等:1本
2等:3本
3等:10本
4等:100本
と出ているわけで宝くじ当選者の方が数倍出ていることかと思われますが。
見たような聞いたような・・・
itinoe
Re:有り難みが (スコア:1)
# まあでも単純に業績が評価されただけ と、 うがった見方をせずに 喜びたいものである。
-- 哀れな日本人専用(sorry Japanese only) --
Re:連発? (スコア:1)
言葉足らずでした。
Re:ノーベル賞を取った技術の対価は1万1000円 (スコア:1)
#分取りを主張する株主も居なかろうな。常識を疑われるから。
島津製作所に出ました (スコア:1, 参考になる)
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
記者会見の最中に携帯鳴らして、受けて、公衆監視のもとでもそもそ喋って
最後に「妻からでした」ってカッコよすぎ(笑
アレゲな着メロだったらさらに評価があがったのに(^^;;;
「それがどうした、おれたちには関係ない」
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
サーバが落ちてたのではなく、アクセスが殺到してるのかも知れないですね。
落ちるといえば、田中耕一氏は大学では留年、就職時には第一希望のソニーを落ちてた [nikkansports.com]んですね。
「優等生」≠「能力のある人」が改めて証明されたということでしょうか。
それと、当時、田中耕一氏に不合格の評価を付けた人たちは、今どういう心境でしょうねえ。
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
と思って調べてみたら、受賞したときは IBM(米)の社員だったのね。
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
というのがカワイイですね。
それをいうならドッキリだと思うんだけど。;)
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
ここの本文ではビックリになってますが、
http://www.nikkansports.com/news/society/p-so-tp0-021010-09.html
こっちの見出しではドッキリになってますね(本文中では "びっくり" と書かれてますが…)。
しかし「ビックリカメラ」だと、駄菓子屋とかで売ってそうなオモチャのカメラを連想してしまいま。
Re:島津製作所に出ました (スコア:1)
OIOI! (スコア:1, 興味深い)
他の方も書かれてますけど、すでに確立した有力な研究手法の開発者がノーベル賞とるのがそんなに不思議なことですか?
差障があるので具体例は挙げられませんがもっと怪しげな業績でとっている方もいらっしゃいますよね。
変わり者の本人や周りの親族が意外だとおっしゃるのは、微笑ましいけど、文部省はシャレにならないでしょ!
以前、文部省の役人が福井博士に、「燃料化学なんて時代遅れでしょ」て言ったって噂を聞いたんですがアレは本当なんでしょうか?
もし本当なら、小一時間と言わず、生徒指導室に軟禁して一昼夜問い詰めたいです。
島津屋敷の周辺にいる浪人者なら「ば、幕府の犬め!」と叫ぶでしょうね。
本人が一番驚いている (スコア:1)
本人だって、まったくの予想外だったからスーツを
着てこなかったんだし。
それにしても、ノーベル賞選定の調査員の人は本当にえらいなぁ。
学歴とか、学会の評判とかではなく、真に業績を評価しているんだから
Re:本人が一番驚いている (スコア:1)
秘密の調査員 [nhk.or.jp]のこと。
ノーベル賞の選定の調査には、ノーベル賞の賞金ぐらいの
金をかけているらしい。
Re:本人が一番驚いている (スコア:1)
頭の放送日の方が「'00/10/14」なんでしょうな。
で、褒賞が一万円 (スコア:1)
研究のために昇進もしないでいるような人だから
文句は言わないのだろうけど、1万はあんまりな気もする。
それなりに売れているようでもあるし。
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/* SHADOWFIRE */
Re:で、褒賞が一万円 (スコア:1)
ないといけないと思うのだけどね。
単に理科好き、科学好きを増やすだけでは、続かないのだな。
さて、これで田中氏の処遇がどうなるか、ちょっと楽しみだったりする。
山ほど、他の研究所や大学からのスカウトがくるだろうし。
希望を言って島津を牽制 (スコア:1)
この発明を使っているかもしれない1台4,000万円の機材が年間50~60台ほど売れているらしいですね。特許に基づくものかどうかはわかりませんけど。
あと、ノーベル賞の発表により島津の株価が約40円も上がっています。これにより株式の時価総額が100億円以上上がっています。もちろんこのまま推移する訳ではないですけどね。
そんなこんなで、臨時ボーナス\d+億円くらいは払ってあげましょうよ。かつ職級だけあげて年収もあげてあげないと。
外資の会社に引き抜かれちゃいますよ・・・外資だったら、契約金1億、年収5割増、自宅の賃貸肩代わり、研究費の拡充くらいで引き抜きにかかりますかね。
Re:希望を言って島津を牽制 (スコア:2, 参考になる)
ただまぁ実際のところ、今回の受賞が絡んでいるMALDI-TOF/MSについては島津のシェアは低い方ではないかと。国内でも現在アプライドバイオシステムズ [appliedbiosystems.co.jp]が取り扱ってる(以前は別の海外メーカーが作ってたのが吸収合併された)Voyagerシリーズが一ばんよく使われてるんじゃないかなあ。 このあたり [jaima.or.jp]を見ても。
僕もそうだったのですが、実際にMALDIを使っている日本の研究者でもその開発につながったのが日本人の研究だってことを知らなかった、というのはこのへんにも理由があると思いますね。
MALDIに関してはHillenkampが実質上の開発者と呼べる(田中氏のはさらにその元の原理にあたる)ものだってこともあって、会社がその恩恵を受けてるという感じではないのではないかと思います。一連のニュースを見るとSLDで特許は取ってるみたいですが、MALDIの方にそれがおよぶかどうか疑問です(もしそうならもっと島津のシェアが高くなりそうなものだから)
ただ、このことから「当時の島津の上層部に先見の明がなかった」などという批判をするには当たらないとは思います。むしろ「SLDにまで行っておきながらMALDIに行き着かなかったのは(田中氏も島津も)運が悪かったなぁ」というのが個人的な感想です。
Re:希望を言って島津を牽制 (スコア:1)
引き抜き交渉を持ちかけてくるとは思えませんね。(笑)
会社や、職場もどう処遇すれば良いのか、頭が痛いでしょうなぁ。
こういうときに、会社の知恵と度量が試されるわけだ。
そして、こういうシーンでもきちんと対応できることが、これからの技
術立国の条件なんだと思います。
Re:希望を言って島津を牽制 (スコア:1)
あと、例の中村氏も、1,500万から2,300万へ約5割増だったので、そんなもんかなぁとね。
Re:希望を言って島津を牽制 (スコア:1)
#私はエンジニアだと言いなおすって、ちょとかっこいいと思った.
さらに下品かもしれませんが (スコア:1)
個人的に気になるのは、大学生やその親対象の「入社したい(させたい)会社ランキング」の変動です
うろ覚えですが、島津製作所はこの手のランキングではあまり順位が高くなかったと思います
それがこれでどれくらいランクが上がるのか
社員がノーベル賞を受賞した、というのは会社にとって「最高の宣伝文句」でしょうし
"After all there are so many things that we don't understand."
Re:さらに下品かもしれませんが (スコア:1)
どんな島なんだかさっぱりわからなかったですけど。
小学校の理科の実験器具がほとんど島津製だったという記憶はあるんですが。
京都組と言えば京セラも気になる。
Re:さらに下品かもしれませんが (スコア:1)
確か小柴さんはブルーバックスで一冊自分の研究半生をまとめたよう なのを書かれていたはずなんですが、これが結構面白くて、光電子 倍増管の話も出てきます。あれはいまだに手作りらしいですよ・・・
Re:いささか下品な質問ですが…… (スコア:1)
あれは報道陣への対応をどうするか、ということを奥さんに聞かれて いたのではないでしょうかねぇ。
# かわいそうに、あの奥さん最後には半泣きだったもんな。
Re:爆破には笑った (スコア:1)