phasonのコメント: Re:原子時計の精度 (スコア 5, 参考になる) 47
>今の1秒の定義は、セシウム原子時計の原理そのもののように思えます。
定義はその通りですが,測定上の問題があります.
例えば,現在の秒の定義は,
133Csの基底状態の超微細準位間の遷移での放射の9192631770周期
となっています.そういう意味で,原子時計が完全に理想的な構造で誤差無しの測定が出来るならば精度の問題はありません.
ところが実際には,Cs原子は完全な虚無の中に浮いているわけではありませんので,周囲からの(微弱な)摂動の影響を受けて準位間隔が微妙にずれますし(実際の遷移のエネルギーと,定義で用いられている孤立原子でのエネルギーとのずれ),その周波数の測定自体にも工学上の誤差が生じます.
このため,いかに定義が完璧で(当たり前ですが)定義そのものに誤差が無くとも,測定される(非理想的な)時間には誤差がつきまといます.
よって,例えば100台の同じ設計の原子時計を同期させ,一定時間たった後に相互に比較するとずれが生じている(確度不足による誤差)わけです.
このため,現在の原子時計などよりもっと精度(というか確度というか)が高い時計(=もっと精度の出る実在の時計が作りやすい方式)が開発できるなら,そちらを用いて新たな定義がなされることとなります.そのような研究が現在盛んになされており,今の原子時計などよりも一桁以上(多分.分野外なので実際どの程度必要なのかは知りません)精度が上がるなら,そちらが新しい時間の定義になると見られています.
実際には,通常の原子時計よりさらに周波数精度の高い1次周波数標準器(原理は同じようなものだが,原子の固定法とか励起法とかが違ったと思う)というものがあり,これで各原子時計を校正(どの程度の確度なのか,どういった系統的なずれがあってどう補正すれば正確になるのか)していますので,この1次標準を超える必要があります.