米大統領が消毒剤の注射でCOVID-19を治療できる可能性を示唆、医師やメーカーが危険性を警告
米国のドナルド・トランプ大統領が23日、消毒剤を注射すればCOVID-19を治療できる可能性をプレスブリーフィングの中で示唆したことから、医師や家庭向けの消毒用製品メーカーが危険性を警告している(ホワイトハウスの記事、 Reutersの記事、 RBのニュースリリース、 Politicoの記事、 CBS Newsの記事)。
トランプ氏の発言は、唾液などに含まれるCOVID-19ウイルス(SARS-CoV-2)に対する消毒剤の効果を調査した米国土安全保障省(DHS)の発表を受けたものだ。プレスブリーフィングに出席したDHS次官代行で科学技術部門を率いるビル・ブライアン氏は、ウイルスが紫外線に弱いことや、気温と湿度が上昇すれば長時間安定を保つことができなくなることを説明したうえで、COVID-19感染者の唾液や呼吸器官から採取した液体に含まれるウイルスを漂白剤なら5分、イソプロピルアルコールなら30秒で殺菌できると述べた。
トランプ氏は1分間で殺菌できるなら注射でCOVID-19を治療できる可能性があることを示唆し、調べる価値があると指摘。医師の指示に従う必要があるものの、個人的には興味深いとも述べている。ただし、消毒剤を人間に注射するシナリオが想定されていないことを確認する記者の質問にブライアン氏が同意すると、トランプ氏も注射ではなく清掃・消毒に使用するものだと言い直している。
しかし英イーストアングリア大学のポール・ハンター氏がCOVID-19の治療に関して最も危険で愚かな示唆の一つだとし、世界にはこのようなナンセンスを信じて試してしまう人もいるため非常に無責任な発言だと批判するなど、医療関係者からの批判が相次いでいる。また、LysolやDettolといった家庭向けの消毒用製品を製造・販売するRBはトランプ氏を名指しはしなかったものの、消毒剤を注射や内服、その他の方法で人間の体内に入れるべき場面はないと述べ、製品の注意書きに従って使用するよう注意喚起した。
これに対しホワイトハウス報道官は無責任なメディアが大統領の発言をゆがめているなどと反論したが、消毒剤の注射による効果を調べる価値があるとトランプ氏が明確に述べたことを無視するものだとPoliticoは指摘している。